『※13話 家を作る』
『※13話 家を作る』
◇ムイト国 王都周辺
俺の冒険パーティーにキアラの次、新たにフェンリルを加えて、冒険者ギルドから出た後、王都の一歩外に行き、今後について話し合う。
「タケダ様、フェンリルを加えて、これからどうしましょう」
「考えてない」
「考えてよ!」
実際に特に行きたい所もないし、お金も欲しくはなく、普通の冒険者みたいに毎日ギルドに通う目的はなかった。
農民なのであるから、まったりとスローライフしたいのが目的に近いか。
「宿泊はどうします。フェンリルの家はあったのかな?」
「家?! 家などない。普通にダンジョンや平原で寝て過ごしていた」
「でも今は人型の姿をしている、野宿は変だわね」
「宿屋が王都にあるなら、ご主人様どうですか?」
「宿屋か。宿屋に宿泊するのも悪くはないが、俺が作るのが早い」
「ええっ、作るとは…………」
「家は作れないでしょう」
フェンリルが首を傾けて疑問符を出した。
俺が作ると言う意味がわからないからで、当たり前だが、家を作るのは重労働、しかも何ヶ月もかかる。
魔王直属幹部であるフェンリルにだって理解できる範囲だろう。
キアラの方は何となく理解できているとしても、無理と思ったようだ。
「フェンリルはまだわからないけど、農民の俺にはコメから作るモチがある。アイテムボックス、モチハウス」
アイテムボックスから温かい粘着したモチを取り出し、モチハウスを使用した。
以前に城を修復したようにモチが多量に次々と飛び出して目の前に積み重ねられていき、綺麗に、倒れたり、崩れたりせず、土台が作られ、壁、窓、屋根へと作られて、僅か数分も経たずに家が建造されてしまった。
「もう作った!」
「こ、こ、これは家か。ご主人様は建築技師でしたか」
「俺は建築技師ではない。コメ農家だ。コメを応用しただけのこと」
「フェンリルを閉じ込めたのもコメ作りスキルでコメから作ったモチなのよ」
「ああっ、そうだった。私を閉じ込めた檻は、このモチて言うようなのだった!」
フェンリルは自分が入れられた檻、モチプリズンを思い出したようだ。
農業の技術だったことを知り、俺が農業者なのを教えられた。
コメ農業技術は一般にまだ普及しておらず、魔族も知らないのは当然であった。
「俺は剣術と魔法は使えない。使えるのは農業スキルとなる。中へ入ろう」
「立派な家だわ、中は……あらまぁ! 綺麗な部屋だわ!」
モチハウスによって建造した家は、どう見ても建築技術者が何ヶ月もかけて作った家にしか見えない出来栄えである。
キアラはそっと家の中に入ると、中は外観以上に素晴らしい内装、ホテルのように綺麗で、ベッドもあり、テーブル、椅子、窓、扉、まで細部に渡り丁寧に作っており、さっそく椅子に腰掛けてみる。
「ご主人様は天才だ。どうやったらあの一瞬でこんな家を作れるのだ!」
フェンリルもキアラの後に入る。
キアラは椅子に座っていて、広く、三人寝れるベッドもあり驚く。
「キアラが田舎の俺の家に入っただろ。あれもモチハウスで作った家だ」
「そうだったの!」
俺に言われるまで全く気付かなかったキアラは、椅子から落ちていた。
そしてエム字開脚して驚いている。
「ちなみに王都の城は俺が半分以上作った」
「正確には、タケダ様が半分以上は壊したから、復元したのよ」
「城を?! ご主人様は、天才ですし、とても強い。今後は冒険者になって魔物を討伐をするのでしょ」
「冒険する予定はなかったが、キアラと出会ってムイト国に来た」
元勇者であった時代には世界をまたぐ冒険をしたが、現在は魔法も剣術も使えないのもあり、引退しキアラにあったことで変化が起きているのは俺も感じてはいた。
「ここだけの話、タケダ様は、以前は元勇者アマルフィなの。今は名前を変えてタケダとしている。フェンリルの元ご主人である魔王ハデスを倒した人よ」
「魔王ハデス様を倒したのがご主人様なのか! これはびっくりです。天才的な農業技術の使いを見たら、ハデス様を倒したのは頷ける。勇者アマルフィは旅に出たと聞いていたが、その後の消息不明となっていて謎だった」
「怒ったか?」
魔王ハデスはフェンリルにとっては元のご主人である。
フェンリルが今の話を聞いて、激怒、抑えられない憤り、魔界の怨念、魔王への仕返しなど心配した。
「いいえ、怒っていません。もちろん驚いてますが、あのハデス様を倒せるご主人様に、心底感服してます。私のご主人様にふさわしい方です」
「怒っていなくて良かったですねタケダ様」
「良かった。ここに住むとして家に必要な備品は揃えておこう」
「そうですね、食料品も必要だし、ベッドもこれだとモチで固くて眠れませんわ」
生活に必要な必需品である、ベッドに使う布団類、枕、ある程度の食料品、飲料水、衣類、などを王都にあるお店で、三人で購入するとし、フェンリルを加えた三人で生活していくと決まった。
◇ムイト国 王都
建造した家をアイテムボックスにしまい、アイテムボックスはスキルで、スキルレベルはマックスであったから、家を丸ごと収納も可能だったわけでフェンリルは、
「ご主人様、家もアイテムボックスに入るのですか?」
「コメやモチ、家も入る。他には食料品も入る」
「凄いです!」
何でも入る便利なアイテムボックスに感激したフェンリルは目をうるわせて言った。
家で使用する備品等を買い物中、とあるアイテム店に立ち寄った際のことだった。
「これは珍しいペンダントだわ。ねえタケダ様、どう似合う?」
「ペンダントか。俺が粘着して作ってやろうか」
「あああああ……」
コメからモチを粘着して固めてペンダントを作るという話をしたところ真っ赤になっていた。
「そのペンダントは……まさか……魔王のペンダントでは……」
「魔王のペンダントとは?」
知らない名称のアイテムだな。
色々とアイテムは使用してきたが。
「ハデス様が、死ぬ時に生まれたペンダントのこと」
「どんな物だ、教えてくれ」
フェンリルが言った言葉に、魔王、ハデスの名があった。
激しい戦いの記憶、魔王城の長い戦い、ペンダントが何か知らずにいられなかった。
「はいご主人様、魔王のペンダントはハデス様の魔力で出来ています。よってペンダントを全て集めることでハデス様の魔力が復活、蘇らせる時のためなの」
「なんだと…………ハデスが蘇り。俺は初めて聞いた」
「私も知りません。魔王が復活するなんて、大変です」
フェンリルは魔王ハデスの復活を知っていた。
ペンダントを見た瞬間に魔王のペンダントだとわかる。
俺に教えてるが、その内容は人族にとって恐ろしい、悪夢、悪災とも言えた。
「魔王ハデス様は、完全には死にません。魔力さえ集まれば再び復活します。ペンダントを集めたら儀式をすることでハデス様は復活しますのです。ペンダントは死ぬ時、正確ご主人様に倒された時、ハデス様はペンダントととして魔力を封印し、世界の各地に飛ばしたのです。きっとご主人様は気付かなかったのでしょう。ペンダントを集めたら魔王直属の幹部が復活の儀式をし、ハデス様は復活します」
「そんな……タケダ様、大変な事態になります。世界は恐怖に包まれます」
「俺は完全にハデスを倒したわけではなかった…………フェンリルがいたから知れたが、知らなかったらハデスが知らね間に復活したいたわけだ。そしてハデスの怖さを俺が一番知っている。復活は阻止しないと世界は崩壊する」
「タケダ様、このペンダントを購入して、そしてハデスの復活を阻止しましょう」
キアラがペンダントを手にして言った。
見た目は綺麗なペンダントであるが、実際には恐ろしいペンダントだった。
「店主、こちらのペンダントを購入する。会計を」
「ありがとうございます。そちらのペンダントはダンジョンの最深部で発見された貴重なペンダント。お値段もかなりお高いですが」
「払います」
偶然にお店にあった魔王のペンダントを購入した。
魔王ハデスの復活を阻止したく、ハデスの怖さを一番分かっている人族であるからこそ、二度と復活させてはならないと思ったから。
キアラは購入したことで魔王ハデスとの戦いになる予感がして身震いしていた。
スマホで全て執筆投稿していきます。




