『122話 ククナの恨み』
『122話 ククナの恨み』
「交渉は終わりになる」
キッパリと言いきるククナ。
普通に考えて親を拉致されたら、誰でもこうなるだろう。
俺も自分で信用して欲しいと願うも、ククナに同情もした。
「あちゃ〜、完全にレーンとセレスタ国を嫌いな感じだわ。まぁハクサン国はレーンみたいな卑怯な真似はしないけど」
「シオンはキアラを拉致しようとしたのよね」
「いやっ、それは……」
フェンリルに本当のことを言われて言葉に詰まるシオン。
キアラを拉致するのを防いだのは俺である。
「どうしたらいいタケダ。私のせいで台無しになった。私の責任もある」
「レーンに責任はない。俺が何とかする」
ククナを納得させられればいいと思う。
魔王の祝祭なら見逃すわけにはいかないし、ダイズの取り引きも復活させたいから、ククナとセレスタ国の関係を良好にするのがベストだろう。
「何とか?」
「ケルベロスは祝祭だとしたら見逃せない。それにはククナとセレスタ国の関係が良好な関係になったらいい。それでどうだい?」
「セレスタ国と関係が良くなるのは難しい。なぜなら父親と母親はセレスタ国のどこかに捕らわれている。タケダが頑張ったところで話は進展しないでしょう」
「俺がククナの両親を取り戻せたら、協力を拒否しないか?」
「ちょっと、そんな簡単に言って大丈夫か。国家が隠している二人を無関係なタケダが取り戻せるわけないと思える」
「セレスタ国に行って両親を取り戻す。たぶんレーンには無理だろう。なぜなら国王はレーンに隠していたのであるから、レーンには知られたくなかったはずだ。だからレーンではなく俺がやる」
レーンにはあまり関わらせたくないのが一番の理由。
娘には教えたくなかった可能性がある。
「わかった。タケダがセレスタ国から私の両親を取り戻せたら、話にのる」
やっとククナは頷いてくれた。
これで俺のやる事は決まっていて、セレスタ国からククナの両親を取り戻すとなった。
「私も行く。自分の国の事だ。タケダに任せておけないし」
「いや、レーンは来なくていい。残っていてくれ」
「なぜだ?」
「そうね、レーンが行ったら話しがややこしくなるもん。なぜ私に黙っていたのかとなるからね」
「わかったわ。ここに残る」
レーンは納得してくれ、俺はやりやすくなった。
「ケルベロスが来たらどうなる。奴は今どこに居るのか?」
「ケルベロスと魔物は、いつ来るか私も掴んでいない。しかし現在どこに居るかは掴んでいる」
「どこ。トカゲ人の国?」
「我が国内。ここからは距離はあるダンジョンだ」
「そのダンジョンは昔からあったの?」
「いいえ、突然に発見したと兵士からの情報」
今の話しからだとダンジョンが生まれたと思われる。
そうなるとますます祝祭が疑わしい。
再び暴れ出してもおかしくない。
「フェンリル、どう?」
「間違いなく魔王の祝祭っぽい。一度暴れて、ダンジョンに戻り、また暴れる気よ。お祭り気分だ」
「タケダ様、ケルベロスにククナの両親。大忙しです」
「セレスタには俺とキアラが行く。後のみんなは残っていてくれ。フェンリルもだ」
フェンリルがいれば、最悪は逃れるだろうと思って決める。
「残ります、ご主人様」
「ふふ、ケルベロスが来たら、私の炎魔法で丸焼きにしてやります。焼いたらみんなで食いましょう」
「食うか!」
キアラは、さすがに食べたくないと反対。
「しかしセレスタ国王が認めるかな。タケダが会いに行ったとして、いきなりタケダの要求する両親を返せと言った。それに対して、はい、お返ししますと言うか。むしろ逆に、帰れとなることも」
「それも考えている。帰れとなったら、強引に連れ出すしかない」
「お前が強引にしたら、大問題となるぞ」
シオンは俺に反対意見を述べる。
普段はシオンの考えなど気にもないが、これに関しては聞いた。
確かにやり方によっては問題となる。 特に強引にしたら、俺とセレスタ国に亀裂が入るのは確実だ。
「国王は俺を憎むだろうな」
「それだけではない。国王ならお前を指名手配して、刑に科すぞ」
「ご主人様に刑を科せる兵力があればの話しですよシオン」
「ぷっ」
フェンリルが反論をするとキアラはぷっと笑う。
「何がおかしいキアラ。キアラも死刑だな」
「どうぞ勝手に死刑と思ってて。私はタケダ様と行きます」
シオンとキアラはお互いに顔を背ける。
いつもこの調子だ。
「たまには姉妹で仲良くしているのも見たい」
フェンリルは軽く笑っていた。
「ケルベロス以外は国内の兵士で応戦はできる。魔物が出現するか不明だが、タケダが戻るまで城で待つとする」
「わかった。ではキアラは俺と行く」
「はい、タケダ様」
キアラを連れて城から出る。
城の外にはトカゲ人兵士が警備している。
いつでも魔物と戦う姿勢だ。
「タケダ様、あの場ではタケダ様を指示しましたが、本当に出来そうなの?」
「無理だろうな」
「ええっ!」
無理なのというとキアラは驚いていたけど、確信などなかった。
確信よりも、やるしかない感じだった。
農民ギルドを設立したのも大きい。
ギルドマスターになり、何とかしなければと俺の中で責任感がわいてきたのもある。
けども失敗したら、ヤバイかな。
「アイテムボックス、モチジェット」
モチジェットを地面に置くと、多くの兵士は声を出して驚いていた。
目的地はセレスタ国。
隣の国ではあるから、距離は近い。
◇セレスタ国 王都城
モチジェットで飛行しセレスタ国にある王都に。
セレスタ国は国土はかなり広い。
ククナの両親がどこに居るかを自分で探すのは不可能だろう。
大量のコメ粒から虫を一匹見つけるくらいに難しい。
「タケダ様。慌てずに」
「いや、時間がない。城に着地する」
「ええっ、怒られますよ!」
キアラは反対していたが、王都の城に着地を決める。
ゆっくりしている間はないからだ。
城にはレーンが着替え中に行った中庭があったのを思い出す。
そこへ着地した。
降りたら直ぐにレーンの部屋に入った。
「ここは?」
「レーンの部屋だ。着替えていたのを連れ出した時に入った」
「完全に犯罪です!」
「ここから国王に会おう」
何度も会っているから直接に会えるだろう。
「ええっ、これじゃ完全に侵入者ですよ。もうむちゃくちゃです!」
「静かに」
キアラがうるさいから口をふさいだ。
通路を通り、以前にも行った経験がある国王の部屋に向かう。
当然にだが国王の部屋となると、警備は厳重となる。
俺は歩行していたところ、
「待ちなさい。誰ですか?」
兵士が止めに来た。
「フーリッシュ国王に会いたい。タケダだと言えば通じる」
「タケダ……あの農民でしたか……国王に話します」
「よろしく」
兵士達は、農民タケダが来たと慌てて国王へと。
捕まるかと思ったが、逆に兵士が不審者みたいに走って行った。
「大丈夫そうだ」
「こんなやり方、タケダ様しかしません!」
キアラに説教されたが、兵士から国王の部屋に通される。
とりあえず追い返されなかったのは確かだった。




