『114話 モチとキャベツ』
『114話 モチとキャベツ』
酒場の奥にある料理場へと行った。
料理場は料理人が何人もいて、何皿も同時に盛っていたところだった。
そこへ挨拶をして俺にも料理場を使わせてもらいたいと伝える。
俺が農民のタケダだと伝えたので、料理人の人は快く使わせてくれた。
ちょうど大きめの鉄板があったので、鉄板を利用したいと思う。
鉄板に火を入れておき、熱しておく。
油を敷き準備した。
アイテムボックスから料理する材料を取り出す。
■■■■ モチの鉄板焼き ■■■■
モチ
キャベツ
小麦粉
卵
を混ぜる
油で鉄板焼きにする
焦げるまで焼いたらソースをかける
上からをノリ、紅しょうがをかける
今回はモチを鉄板焼きにしたい。
料理人達は俺の料理を興味深そうに見ていた。
キャベツはムイト国から持ってきたキャベツ。
キャベツを刻んでおき、小麦粉と卵と混ぜあわせる。
その中にモチも投入。
ねっとりとした液状になる。
それを先ほど熱した鉄板に。
鉄板の上でモチと小麦粉の混ぜ物が焼かれると、いい匂いが料理場に充満した。
表面がやや黒くなると少し焦げたところで、表面をひっくり返す。
焦げた裏目が見えるまま熱していく。
両面を焦げた状態にして皿に移した。
このままでも美味しいと思うが、熱々のところに黒いソースをかける。
ソースと一緒に青のりと紅しょうもふりかけた。
これで完成した。
「完成した。コメから作った、モチの鉄板焼きだ。パーティーに出して欲しい」
「モチの鉄板焼きっ、見たことない料理だ。コメは町で食べられていないが、こんな使い方があるとはな」
料理人は皿に盛られたモチ料理に驚いている様子。
「少し食べてもいいかな?」
「どうぞ」
俺は少し皿から取り、料理人みんなに分けてあげた。
見たこともない料理だから料理人は好奇心が刺激されたみたいだ。
とにかく食べてみたいと思うのは、料理人らしい。
「おおっ、熱いっ、だけど小麦の美味さに後からモチがモチモチと口の中にくる!」
「初めて食べる食感だ、これがコメから作ったモチなのか!」
「プロの料理人から褒められて嬉しいのさ。モチは熱すると柔らかくモチモチして美味くなるのを利用した料理だ」
「よし、店内に出そう」
プロの料理人から認められて店内に運ばれる。
すでにテーブルにはプロの料理があり、食べられている中に俺のモチの鉄板焼きが一皿置かれた。
俺は料理場から、そっと食べられるのを見守る。
「はい、みんなこれはコメ農家のタケダが料理した。モチの鉄板焼きだぜ!」
「へえ〜、なにこの料理は、コメから作った料理!」
「熱いっ、でも美味しいわ。モチが熱々でいい!」
「これは酒にも合うぜ。タケダは戦闘もプロだが、料理もプロ並みだ!」
「美味い。これは農民の出すレベルの料理じゃない。プロの料理だ!」
俺の料理にみんなは絶賛してくれた。
食べてもらえるか不安はあったが、食べてもらえると、喜んで食べていた。
料理人からも笑顔でもてなされる。
「タケダ、もっと作ってくれ!」
なんと追加の注文があった。
「タケダ。頼むぜ」
「忙しくなりそうだ」
俺は追加分のモチの鉄板焼きを焼く。
追加の注文がこんなに早く来るとは、嬉しい限りだ。
モチがカンプー町でも受け入れられた瞬間でもあった。
酒場の店内はモーリス盗賊団に襲われて、被害にあった人もすくなくないが、それでも活気に満ちていた。
料理場を去り店内に戻った。
「ご主人様、みんな大好評でしたモチの鉄板焼き」
「そのようだな」
「とても美味しかった。キャベツとモチが相性が良いのね」
「アルサの父親が分けてくれたキャベツを最大限に活かしたんだ。アルサの力でもある」
「私は何もしてないよ。タケダの力よ。カンプー町はタケダに救われたとみんな言ってる。農民ギルドは農民だけでなく世界を救える」
「タケダ様。カンプー町に来て農民ギルドの活躍は予期していなかったけど、結果は農民ギルドの名を広めた」
「俺は農民ギルドを広めたいと考えている。困っている農民はこの国にも多くいた。農民は立場が弱いし、生活も苦しい。農民が力を合わせられるギルドにしたい。ハクサン国にも作る」
農民がハクサン国でも酷く扱われていたのは知った。
農民狩りとかいう最悪の言葉まであった。
「ハクサン国でも、ぜひとも広めてください。大歓迎します」
「おいおい、勝手に大歓迎するな」
アルサが大歓迎した時に、アルサにケチをつける人物がいた。
多くの人が賛成していたので、その人物の方に注目が集まる。
「シオンはタケダ様に感謝しなさいよ。タケダ様が居なかったらカンプー町はモーリスの被害で破滅していたのを認めなさいよ」
キアラが反論してもシオンは怯まない風だった。
「ハクサン国の姫として言わせてもらうが、勝手にギルドを設立するのは認められない。ギルドは国が管理する組織だ。タケダが自分の判断で作れると思ったら、それはタケダのおごりだ。ハクサン国は農民ギルドを作らせない」
シオンは酒場にいる全員に聞こえる声で宣言した。
宣言した内容は、完全に俺の農民ギルドを否定するものだった。
「あなたが認めたらいいじゃない。ご主人様に助けられた御恩があるのだし」
「そうよ、今頃はモーリスに何をされていたかわからないわよ」
「なにっ、何をされるかだと……それは私の体を使うことか?」
「たぶん色々されて、その後は奴隷商人に売られる。そして奴隷になって一生苦しい人生を送る」
キアラは姉に奴隷になる話をしたところシオンの顔は急に変化した。
奴隷の言葉が怖いのか、震えている風にも。
「ど、ど、奴隷……私が奴隷に売られると。それは嫌だ。私が奴隷になるなんて」
「ご主人様、シオンは反対しているようなので奴隷商人に売り飛ばしましょう。いい金になりますよ」
「そうだな。奴隷商人は喜ぶかもな」
フェンリルが話にのり奴隷話をする。
俺も冗談ではあるが、多少は本気もあり、納得してみるとシオンは真っ青になった。
「タケダ、待て……売るのは待て」
「あら、さっきと違うわね姉さん」
「わかった、農民ギルドを認めないて言ったのは取り消す。設立してもいい。本当はダメだが……。特別に許可する」
シオンは急に態度を変えて設立を許可た。
俺的にはありがたい。
キアラとフェンリルがとフェンリルが奴隷話をしたのが影響したようだ。
すると酒場の店内には喝采が起きる。
「おめでとうタケダ。農民ギルド設立!」
「農民ギルド設立を歓迎するよ!」
「みんなありがとう。俺は農民ギルド、ギルドマスターのタケダ。今ここで宣言する。ハクサン国に農民ギルドハクサン国支部を設立する」
「おおおお!」
話の展開から俺は農民ギルド、ハクサン国支部の設立を宣言。
宣言したら、みんなから拍手喝采された。
嫌がらずに受け入れてくれたらしい。
「みんな、農民ギルドマスターのタケダに乾杯!」
「乾杯!」
「タケダ様、乾杯!」
「ご主人様、乾杯!」
「みんな、ありがとう」
祝賀パーティーは、遅くまで続いた。
農民ギルドの支部を設立するまでいき、俺は満足したし、今後はさらに忙しくなりそうだ。




