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『103話 ゴブリンの群れ』

『103話 ゴブリンの群れ』



 ハクサン国入国管理局を抜けた。

 少しばかり手間取ったが、入国さえすれはいいと前向きに行く。

 目的地のカンプー町は俺は知らないので、農民のベレヌスに任せた。

 馬車はゆっくりだが進んだ。

 カンプー町にキャベツを届けるのが目的で、入国を通り抜けられたのでもう少しだろう。

 

「あっ、何か見えた」


 静かだった馬車でキアラが言った。


「右側ですご主人様。ちょっと前から馬車をつけてます」

「フェンリルは気づいていたの。なんで言わなかった」

「キアラを不安にさせるから」

「もう不安になった」


 キアラだけ知らないでいて俺もフェンリルも、もう少し前から気配を察知していた。


「俺も知っていた。キアラをだましていたわけじゃない。たぶんゴブリンだろうから、何匹いるのかを様子見ていた。数は俺が把握したところ二十匹はいる」

「そんなに……馬車を止めますか?」

「そのまま進んでくれ。襲ってきたら俺とフェンリルが対応を取る」

「わかりました。進みます」


 ベレヌスは明らかに緊張していた。

 戦闘経験のない農民ならゴブリン一匹でも恐怖する。

 そこでベレヌスを慌てないようにした。

 ゴブリンはやはり大群だった。

 ベレヌスからの情報と同じだ。


「ベレヌスの情報と同じだ。ゴブリンは大群でいる。きっと今までにも商人や農民などを襲っていた感じする」

「直ぐに襲って来ないのはゴブリンは相手の様子を観察しているから。ゴブリンは敵の誰でも襲うわけでなく、弱い敵しか襲わない。強い冒険者の集団なら逆に逃げて行く。まだゴブリンは逃げていないところを見ると、こちらを弱いと見ているようです」


 フェンリルの見立ては俺も感じた。

 魔物を俺よりも知るフェンリルが言うのだから間違いないと思える。


「フェンリルは馬車から降りてくれ」

「はい。私がオトリになるってことですね」

「馬車の後ろから走れ。俺が援護する」

「わかりました」


 フェンリルだけ馬車から降ろした。

 馬車も停車させる指示をベレヌスに。

 町に向かう途中で停車させる。

 フェンリルが馬車から降りて、立っていた。

 もちろんゴブリンの存在を知らないフリをしている。

 フェンリルは以前の魔物姿ではない状態の時は魔力は低い。

 ゴブリンは魔狼フェンリルだとわからないだろう。


「タケダ様。フェンリルは大丈夫ですか」

「ゴブリンにやられることはない。後はゴブリンが逃げないようにする。俺が全力で攻撃したら、残りのゴブリンは逃亡する。それだと同じ事の繰り返しになる」

「また農民を襲う」

「それでは意味がない。全滅させることに意味がある。フェンリルも俺の考えを理解している」


 ゴブリンに俺が攻撃したら、直ぐに逃亡するのはわかっていた。

 あえて敵を誘き出す作戦だ。


「ええっ、それじゃわからないのは私だけってこと?」

「そうなる」

「仲間外れな気がする。私もオトリになります!」


 いきなりキアラがオトリ希望をしてくる。

 あくまで危険性があるから、フェンリルにお願いしたのだが。


「キアラもやりたいのか」

「やりたい」

「わかった。フェンリルと一緒に馬車ノ外でゴブリンを引きつけるんだ。しかし危険性もあるので、危なくなったら馬車に戻ること」

「はい」


 作戦通りにフェンリルは実行していて、後からキアラが外に出るとフェンリルは意外な顔をした。

 ゴブリンに悟られると不味いから、フェンリルはキアラと遊びをする振りをした。

 ゴブリンはフェンリルとキアラが弱い女の子だと判断したらしい。

 馬車の遠くにある木から少しずつ二人に接近中なのはわかる。

 周りは深い森。

 もしゴブリンが逃げたら、捕まるのは困難だ。

 なるたけゴブリン全匹を引き付けて欲しい。

 そしたら俺が全匹に攻撃を仕掛けるタイミングとなる。

 キアラが道にある花を取る。

 森にいるゴブリンからはキアラのパンツがモロに見えてるばすだ。

 ゴブリンがキアラのスカートの中のパンツに興味をひくかわからないが。

 フェンリルは、上着を脱いでみせた。

 上半身の胸がほとんど露出されている。

 なにもそこまでしろとは俺は言った覚えはないのに、まるでゴブリンに裸をみせつけていた。

 そのおかげなのか、ゴブリンは確実に近づいていた。

 すでにフェンリルの近くの木から覗いているところを見ると、フェンリルの裸が効果があったらしい。

 キアラのパンツも覗いているゴブリンを確認。

 目視出来る数は十匹はいた。

 俺の気配の察知したところでは、残り十匹はいる。

 もう少し待つのが確実だ。

 俺はじっと馬車でゴブリンが来るのを息を潜めて待つ。

 農民のベレヌスも同じで、馬車に隠れる。

 するとゴブリンはぞろぞろと森の中から顔を出してきた。

 並みの冒険者には判別できなくても、俺にはわかる。

 キアラは今度は馬車の車輪を掃除しだした。

 車輪は大きい車輪であり、キアラはお尻を持ち上げる風にしている。

 人間の男が見たら、今のキアラの姿勢に釘付けになるだろう。

 ゴブリンはどう感じたのかわからないが、キアラに吸い寄せられて集まって来ていた。

 フェンリルもまた俺の狙い通りに振る舞い、ゴブリンを引き付けるアピールしてくれる。

 もうここが限界かというところまで来た。

 これ以上の接近はキアラの命に関わる。

 ゴブリンは森の木から姿を表しているし、全匹が逃げられない距離にまで姿を。

 もうここか限界か。

 フェンリルが俺の方に視線を一瞬だけ送る。

 あまり見ると、不自然だから。

 意味はもうゴブリンは接近していると俺に伝える。

 アイテムボックスを使用とした時に、踏みとどまる。

 まだ反応を感じた。

 森の奥にゴブリンの気配を。

 直感では十匹。

 今いる二十匹ノ他に十匹いる。

 そいつら十匹も逃さない。

 残りの十匹がゆっくりと近くには来ているのは察知した。

 しかし時間はかかるので、キアラはかなり危ないだろう。

 残りの十匹が先に来るか、キアラがゴブリンにさらわれるか、どちらが先かと二択になった。

 すでにゴブリンの多くはキアラとフェンリルの体を近くから覗いていていた。

 一匹のゴブリンがそろりとキアラに接近し、胸に手をかけるところまで来ていた。

 キアラは俺に首を縦に振る。

 もう限界て合図だった。

 そこでも待つ選択をした。

 キアラの服に手が届いた時に、キアラは我慢して動かない。

 じっと俺を信じて我慢する。

 服を引っ張る瞬間。

 俺はアイテムボックスを開いた。


「アイテムボックス、モチカッター」


 選んだモチはモチカッター。

 これは雑草が多く生えた農地で使用した。

 雑草を根こそぎ刈り取って、綺麗に更地にする時に効果的だ。

 カッター部分は鋭利な硬さにしてあるので、草木にも負けない。

 周囲にある森にある草、大木、枝などをモチカッターで刈り取る。

 刈り取った時間はほんの僅かな時間だ。

 ゴブリンがキアラの上着に手をかけていた。

 その手が止まる。

 ゴブリンは何が起きたのかと動きを停止。


「ああっ、草や木が全部切り取られていく!」


 農民のベレヌスはモチカッターの効果に隠れているのに声を出していた。


「モチカッターと言う。周囲の雑草から木も刈り取る。キアラとフェンリルは避けて取っていく」


 モチカッターで周囲の雑草と木を取ったので、残ったのはゴブリンとなる。

 最初に来た二十匹と、奥から出てきた十匹の合わせて三十匹だった。

 一瞬の間に露出されたゴブリンは慌てて周囲を確認するが、起こった現象の把握は無理だろう。

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