『102話 農民の護衛をする』
『102話 農民の護衛をする』
農民の味方になるという俺の思想から農民ギルドを作ったのはいいとして、全てに俺が護衛したりは無理だ。
護衛に関しては、今後は考える余地がありそうだ。
農民のベレヌスに運ぶキャベツを持って来てもらう。
「これが運ぶ予定のキャベツだ。けっこうあるだろう。取り引き先はハクサン国カンプー町になる」
大切な農作物のキャベツは馬車で運んできた。
かなりの量になるため馬車は必須だろう。
「キャベツは新鮮に見えます」
「収穫したばかりだから、早く持って行きたい」
「タケダ様のモチジェットでは無理な量だわ。人が何人か乗るので満杯になるもん」
「無理だろうな」
「だけど、ご主人様が少しずつ何往復もしたら運ぶのは可能ではありますが、それでは農民ギルドを作った意味がなくなります。ここは普通に馬車で行くべきでしょう」
「キアラとフェンリルと俺は馬車で行く。シルフはギルドを頼む」
フェンリルが言うように、俺が何回も往復したら不可能てもないが、農民ギルドを設立したのは、たくさんの農民が助け合うのが目的である。
そのため、今後も考えて、モチジェットは使用しないと決める。
ベレヌスの馬車は大型であったから、全員が乗れるので、ベレヌスにも了解を得て出発となった。
「ベレヌス、馬を走らせてくれ。もしゴブリンが現れたら直ぐに教えてくれ」
「はい、そうします。出発します」
馬車は大量にキャベツを乗せているためか、速度は恐ろしくゆっくりだった。
「普段はタケダ様のモチジェットを使うためか、遅く感じる。けどゆっくり移動するのも悪くないわね。旅している気分」
「キアラは気楽でいいな」
「ゴブリンはタケダ様にお任せします」
「ゴブリンは構わないが、ハクサン国に入るのが気になっている」
なぜなら俺がもと居た国。
勇者であった頃に、地下牢に入れられた暗い記憶。
「そうでした、ご主人様にとってはハクサン国は裏切られた国。入国するのは気分が良くないはず」
「以前はハクサン国の田舎に居たからな。今回行くカンプー町も王都からは離れてはいる。王都でなければいいだろう」
「王都に居る父である国王と魔術士達は、タケダ様を見たら驚くでしょう。シオンはタケダ様を勇者とは知りませんし。まだ幼くて顔も覚えていない。しかし地下牢に入れられた時は、タケダ様は魔力、体力は限界まで減少していた。だから魔術士の魔法で地下牢に。でも今はシオンだろうが、魔術士だろうが、騎士団だろうが、タケダ様はには敵いません」
「俺は戦う気はないが」
キアラの言うとおりで、あの時はひどい状態だった。
「さすがに魔王様とは激戦だった。ご主人様の気持ちを察します」
馬車の移動は旅に近かった。
人が歩く速度よりも少し早いくらいだ。
農民の移動はこれが当たり前なのかもしれない。
俺が今まで知らなかったと考えることにし、いい勉強と思う。
◇ハクサン国
「タケダ、そろそろムイト国からハクサン国に入る」
「やっと国境線に来たか」
「入国管理局があると思うタケダ様」
「アイテムボックス、入国許可証」
ムイト国とハクサン国には国境線はある。
ハクサン国に入国する際には入国管理局を通る。
ハクサン国が認めた国の管理局員に許可証を見せると通行出来る。
俺はムイト国の国王から許可証を受けているので問題はないと思う。
国王に無理を言ってハクサン国、ガーネット国、セレスタ国の国に行ける許可証だ。
普通は許可証は簡単には持てないのだが、俺は認めてもらった。
「なるほどムイト国国王から手配してあるのでしたね。タケダ様がいれば私達も通行出来ますよ」
「入国管理局へと進んでくれ」
「はい」
入国管理局は国境線沿いにある。
国境線は高い塀が建っていた。
塀には一つだけ入り口があり、馬車を前に停車させる。
管理局の人間は俺達の馬車に気づいたらしく、寄って来た。
「ムイト国の人間だな。入国許可証をみせろ」
「俺の入国許可証だ」
アイテムボックスから出した許可証をみせた。
ハクサン国の人間から見たら、俺達は外国人となるのもあり、上から見てくる威圧感を感じる。
「農民か。積んである野菜はなんだ?」
「キャベツです」
ベレヌスが質問に答えると、管理局員は荷台を調べだした。
調べるのはいいが、キャベツしかない。
「キャベツか。半分置いていけ。俺が頂く」
「待ってください、これは売り物なんです。勘弁してください」
売り物のキャベツを置いていけとは、ずいぶんと横暴な局員だった。
「タケダ様、ここでは置いて行くのが当たり前みたい。国の局員にはこのような者が多いとも聞いたことあります。通行料を取ったりするとも。そして逆らうと罰せたり、罰金を払わせたりもある」
「許せるわけはないな」
「キアラの国の局員なんだ。私はキアラ姫だぞて脅したらどうだ」
フェンリルがキアラの姫の立場を利用したらと提案したところ、
「逆に捕まるようなもの。私は国から追われている身なのよ」
小声で会話をした。
キアラの存在をバラすのは不味いだろうから、ここは俺が対応をしよう。
「ベレヌス、俺が対応をする。下がってくれ」
「はい、お願いします」
ベレヌスを下げて俺が局員の前に。
局員は男で全員で四名いた。
「許可証の奴か、お前も農民か。黙って置いてけ。命は助けてやる」
こちらが逆らえないと思っていて強気なのだろう。
「お前に置く分のキャベツはない。早く通せ急ぐ」
「なんだと、耳が聞こえないのか。逆らったという理由で、罰金を払わせるぞ」
「お前に払う罰金はない。さっさと通せ」
俺が反論して言うと局員らは、態度をより強く出てきた。
「お前、馬車から降りろ。ムカつく野郎だ」
「降りる時間がない。お前らの相手をしている暇はないと言ったのか聞こえないのか」
「てめぇ、許さねえ、逆らったらどうなるか思い知らせてやる!」
「おい、タケダマスター、逆らわない方がいい。キャベツは置いておく」
「大丈夫だベレヌス」
「しかし……」
ベレヌスが不安になるも俺は馬車を降りた。
局員の四人と向かい合う。
「農民一人で俺たち四人とケンカする気か。こいつは馬鹿な農民だ、あはははっ」
「アイテムボックス、モチメテオ」
「なにメテオ?」
四人はメテオと聞いた時には俺は巨大なモチの岩石クラスのを頭上に上げていた。
そのまま上空に上げていくと、
「おいおい、何だあの巨大な石は?」
「この農民が出したぞ、何する気だ!」
「落とすのだが」
上空で停止したモチメテオを今度は落下させる。
落下地点である目標は入国管理局。
管理局に一直線で落ちたモチメテオは、爆音とともに管理局をふっ飛ばした。
「うわぁ〜」
「管理局が一発で壊された、何なんだお前は……」
「アイテムボックス、モチレイン」
「今度は何をする?」
慌てる局員に俺は手加減しないで、モチレインを使用。
モチレインはモチを小粒にしたもの。
上空にまたも上げて降らせる。
「痛い!」
「痛い痛い!」
四人の局員に小粒のモチレインが命中し、地面を転がり回る。
小粒なモチであるから、当たれば痛いが、致命傷を負うほどではない。
殺すのは不味いという判断から軽い怪我程度に抑えた。
「殺される、こいつの強さは異常だ。ヤバい四人とも殺されるぞ」
「わかった、通行していい、早く行け」
「キャベツは?」
転がり回る局員に俺が訊いた。
「キャベツは置かなくていい。そのまま通っていい」
「ありがとう」
俺は通行の許可がもらえれば良かったから、馬車に帰る。
「ギルドマスターはとんでもなく強いな。驚いた」
「ベレヌス、ご主人様は局員ごときに負ける人ではありません」
「初めから、通してくれたら俺も手をかけずに済んだのにな」
「しかしタケダ様。入国管理局を派手に跡形もなく破壊したら、この後問題になる。しかも許可証をタケダ様のですから、タケダ様が破壊したと直ぐにバレますよ」
キアラは俺がこのままだと破壊した犯人になると心配したよう。
確かに、許可証をみせたから、俺だと後でわかるな。
このままだと面倒になる。
「管理局を作れば問題にならないだろう」
「作る気です?」
「アイテムボックス、モチハウス」
「うわぁ〜また何か出したぞ!」
「殺さないでくれ……」
土下座する局員を無視してモチハウスによる、入国管理局を建設するとした。
四角いブロックノ形をしたモチハウスを、破壊した入国管理局の位置に送り飛ばす。
次々とブロックが重なり合い、家の形になる。
出来るだけ元の管理局の形に仕上げておく。
見た目はほとんど変わらない形に建設でき、自分でも上出来と思えた。
「おお、おい、入国管理局が元に戻っているぞ……」
「何をした農民?」
「お前は化け物か……」
俺を化け物扱いしだすが、無視をした。
「タケダ様。いつもながら建築は見事です。誰が見ても入国管理局にしか見えないです」
「似せて作ったからだ。それに強度はモチハウスなので、最強レベルだ。ドラゴンの炎にも耐えられる」
「ドラゴンとも戦える管理局を作るとは、さすがご主人様」
「す、凄いなギルドマスターは……」
ベレヌスは俺のモチの圧倒的な強さに感心していた。




