那朗高校特殊放送部~すれ違いホワイトデー編~
筆者:城嶋蓮
ホワイトデー。
それは、一か月前、バレンタインデーにチョコを貰った男子が、女子にクッキーをお返しするという、
二つ一組のイベントの内の一つ。
悲しいかな、親位からしかチョコを貰ってない俺は、このホワイトデーに一切合切やる事は何も無いのだ。
男女比で女子の方が多い部活に通ってんだけどなぁ…
部長はなんだかこう、好きな男子が居るのかもよくわからない感じだし、
夏輝先輩は…めっちゃ絡んでくるけど、今年はくれなかった。
きょ、去年は義理だって宣言とと共に石みたいなチョコ貰ったんだけどなぁ
倉井先輩と霜月先輩はそもそもバレンタインとか興味無さそう…
良く考えたら、同じ部活だからといって先輩からチョコを貰おうって考え自体が甘いのかもしれないな。
チョコだけに。
……
やめよう!
クソつまらないぞ俺!
とにかく、同じ部の、同じクラスの与那嶺さんからも特に何もなかった以上、俺にとってホワイトデーはなんにもないただの土曜日だ。
土曜日っていうか、今休校期間中だから本当に何もないし。
きっと三条先輩はチョコとか貰ってるだろうし、今日はお返しとかしてんのかな。
そうなってくると気になるのが白金の存在だ。
俺の同級生にして友人、そして同じ部活。
あいつが何か貰ってて俺が貰えてなかったら凹むぞ!?
そう思うと急に気になってきて居ても立っても居られなくなったから、思い立って通話してみた。
スマホの先からは聞きなれた声が、少し籠った感じで聞こえてくる。
スピーカーの宿命。
『あ、どうした?』
「いやまぁ、そんなに大切な用がある訳じゃないんだけどさ?今日、何の日だと思う?」
めんどせぇ話の切り出し方したなぁ…と思ったが、もう後の祭だ。
ここからリカバリーしていかないと。
『今日?あれだろ?例の日だろ?』
「そうなんだよ」
あいつが察し良い奴で助かる。
「でさ、ちょっと聞きたい訳なんだけど、お前なんか今日用事あるの?」
『用事?』
「そう。相手いる?」
ドストレートな質問だが、果たして白金はどうだろうか?
『ああ』
「あるの!?」
テンプレ見たいな突っ込みをしてしまった…
いやでも仕方なくないか!?
ホワイトデーだぞ!?
つまり、あいつはチョコをくれた人が居ると言うことだ。
これは追及していかないとな!
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筆者:白金春人
『今日、何の日だと思う?』
いきなりかかってきた蓮からの通話。
今日が何の日って…
そうだ!
僕と蓮がやってる"アームズギアオンライン"の新規パッチの日じゃん?
アームズギアオンラインってのは、MMOとしては割りと珍しめな、ガッツリSFのゲームで…
まぁ、その辺はいいですね。
とりあえず、その話だな?
「あれだろ?例の日だろ?」
僕はドヤ顔で答えた。
まぁ、見えてないけど。
『でさ、ちょっと聞きたい訳なんだけど、お前なんか今日用事あるの?』
「用事?」
『そう。空いてる?』
空いてる…って、時間の事か?
そりゃまぁ、アプデ初日はガッツリINしたいし特に何も予定は入れてないですけどね。
でも蓮も一緒じゃない?
「ああ」
『あるの!?』
なのに凄い驚いてくる。
「そりゃあ空いてるだろ…」
『マジか…俺は選ばれしものじゃ無かったのか…』
βテスターかよ…
とはいっても、アプデ開けしてしばらくはログイン混んでるだろうし、割と早いうちから待機してないとすぐには遊べないかもしれない。
メンテ開けの予定時間は6時だし、親の手伝いでもあるんでしょうね!
どうせ一緒に遊ぶのは夜だしノープロブレムですね。
『俺はもう手遅れだわ』
「手遅れ…?あぁ、なるほど」
時計を見ると、時間は11時23分。
メンテ入りは11時だから、確かにもう準備はできませんね。
大方ログアウトした場所間違えたとかでしょうね。
予告の時にちゃんと新要素のクエスト出る場所言ってたのに。
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筆者:城嶋蓮
まさかアイツにチョコを上げる女子が居たなんて…
誰だ?
夏輝先輩か?与那嶺さんか!?
いやそれとも…
いや、詮索はよそう。
友達を失うかもしれない。
ここは話題を変えて…
「今回さ、先輩はどうしてると思う?」
とりあえず、三条先輩を話題に上げてみた。
先輩は絶対持てるだろうし。顔もそうだけど、バンド部っていうアドバンテージがデカすぎる。
『先輩?あー、確かに先輩はああいうイベント好きそうだよね』
「やっぱそう言うイメージあるよね」
『なんて言うか、僕らが手を組んでも勝てそうにない奴作りそうだよね』
「めっちゃわかる」
どうやって作ったのかも分からないような凄いクッキーとか作ってそうなイメージはある。
っていうか、なんだかんだ三条先輩器用だし。
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筆者:白金春人
「今回さ、先輩はどうしてると思う?」
確か紅葉先輩もアームズギアオンラインやってるって言ってましたね。
サーバーは違うので一緒に遊んだことは無いですけどね。
僕らは男子で、先輩は女子ですけど、多分どっちもハマれるアプデが次に控えてます。
そう意味ではきっと、何処かで先輩もこのアプデを心待ちにしているでしょうね!
で、多分紅葉先輩はやり込むタイプだと思うし、今回の武器システムの拡張も、凄いガッツリやると僕は踏んでます!
「所謂ガチ勢って奴だな!」
『後でどんなもの作ったのか見せて欲しいよ』
僕らはレベル60帯で遊んでる時、先輩80って言ってたような気がしますから。
凄い武器なんだろうなぁ…
「それで思ったんだけどさ、来年僕ら受験生じゃん?やっぱ控えるべきだよな…」
流石に受験シーズンに遊び惚けてる訳にはいかないし、勉強を考えるとそんなにやる時間も…
って事になってきます。
『うーん…でもさ、折角の高校ラストだぞ?思い出残したくない?』
「いやまぁ、確かにそうだけど」
ていうか、高校の思いでがオンゲでいいのか?
ああいや違うな、中身は関係ないですねこういうのは。
一緒に遊んだ事実ってのが大切なんですね!
…多分、オンゲだから進学後も続けるとは思いますけどね!!!
『正直俺は貰いたいしあげたい』
「う、うん……」
……何を!?
…そんな事を思ってたら、PCに一通のメールが。
何だろうと思ったら、アームズギアオンラインの月額プランの自動更新期間が切れているとのメールが。
あ、やっば!!
払い忘れてました!!
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筆者:城嶋蓮
あいつ自分に女子が出来たからか少しよそよそしくなったか?
反応もなんか鈍いし。
去年はもっとこう、チョコ欲しー!
とか二人で唸ってた所に夏輝先輩が飛び込んできて、辻斬りのようにチョコくれて、
それでホワイトデーのお返しを何にするか悩みまくったと言うのに。
まぁでも、逆の立場だったら俺もそうなるかもなぁ
『あっ、やべぇ』
「ん、どうした?」
現実にうちひしがれそうになってても、通話は終わらない。
って言うか白金の方に何かあったっぽいな。
『今月の代金払い忘れてた!』
「代金?」
『そう、月額継続プランだよ』
「っっ????」
月額!?
……まさか、今月の友達料って奴か?
それは………良くないんじゃないかなぁ??
友達どころか、実質彼女みたいなものだし…は、言い過ぎか。
バレンタインにチョコ貰うだけだしな。
「まさか……買ってるのか!?」
『いやいやいや、プレミアムな方じゃ無いから』
「そ、そうか…ならまぁ」
高くないならまぁ……
いやいや!?
その友達料金界隈詳しくないけど、プランとかグレードとかあるのか!?
仮にあったとしても、安いプランだから大丈夫って訳じゃないとは思うけどね?
「その、ちゃんと気を付けろよ?」
『わかってるって、二度はしないから』
わかってくれた……のか?
多分、あいつも今年だけはなんとか…!
という気持ちだったのかもしれない。
……もし来年も脈なしになりそうだったら、ちょっと話聞いてみても良いかな…
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筆者:白金春人
流石に説明不足過ぎましたかね?
最初にスタンダードプランの月額だって言っておけば良かったですね!
アームズギアオンラインには何種類かプランがあって、蓮が勘違いしてたプレミアムってのは今年始め辺りで追加された新しいプランで、
高い値段の代わりに、色々便利な機能が解放されるらしいんですよ。
ただまぁ、コスパ的に毎日ガッツリやるような真のガチ勢向けだと明言されてて、
多分、紅葉先輩レベルでもコスパ的には良くないでしょうね。
しかし、新規アプデ当日に切れるなんて運の悪い…
メンテ開けるまでに入れておかないといけませんね。
あっ、そう言えば、今日ってホワイトデーでしたね。
「ところでさ、今日ホワイトデーじゃん?」
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筆者:城嶋蓮
『ところでさ、今日ホワイトデーじゃん?』
何がところでなんだ…さっきまで話してたろ。
…あれか?彼女契約は別枠の話なのか?
「ああ」
『ホワイトデーって、なんでホワイトデーって言うんだろうな』
「え?…さぁ…どうなんだろ」
ホワイトデー…ううん?
『ホワイトデーって、バレンタインと対になるイベントじゃん。なんか関連性無くない?』
「確かに」
『バレンタインは固有名詞なのに、なぜかこっちは色の名前なの、何でなんだろな』
「…思いつかなかったんじゃない?」
現に俺も思いついて無いし。
多分ホワイトデーはバレンタインのおまけみたいなもんだから、考える人もそんなに凝らなかったんだと思う。
『マジ?じゃあなんでホワイトなんだ?』
「…知らん」
ホワイトな理由?
特にホワイトなイメージは無いなぁ…
あくまでもバレンタインの対のイベントってイメージだから…
『片方を色の名前にするなら、もう片方は対になる色の日にするべきだと思う』
「ブラックデーか」
『…いざそう聞くと、内容との解離が凄いな…』
ブラックデーって聞くと、何か裏の世界の何かみたいな印象があるけど、
蓋を開けてみればごりごりに甘い、女子の恋愛イベントだからな…
「うーん、名前の由来は難しいな」
かといって他に何も思い付かず、とうとう諦めようとしたその時、
『あ、アレじゃない?』
白金が何か思い付いたようだ。
『ホワイトデーってクッキーとか渡すじゃん?クッキーって白くない?』
「アレ白いか?どっちかって言うとはベージュとかじゃない?」
『じゃあ、ベージュデーで』
「って事は対になるのは、ブラウンデーか」
『チョコだから?』
「うん。クッキーのベージュと、チョコのブラウン」
そして一瞬辺りが静まり返って、
「『地味じゃない?』」
「やっぱり素人が考えたんじゃダメか…」
『俺らには思い付かなかった何かがあるんだろうなぁ』
端っから新しい名称なんて決める気は無かったと思うけど、
男子の会話なんてそんなもんだ。
『あ、僕そろそろ用事あるからちょっと切るわ』
だから、幕切れも突然だったりするし、それに特に違和感も覚えない。
っていうかその用事、クッキー渡しに行くとかそういうのじゃ無いだろうな…?
「あぁ、またな」
『って訳だから、今夜やろうぜ?』
「えっ、何を?」
何かあったか?
ホワイトデーの話しかしてないが…?
『え?』
「え?」