瓶の十二神
おはようございます。
ご観覧ありがとうございます。
(痛い!!)
強烈な痛みに耐え切れず奇声をあげながらも、徐々に意識がはっきりしてきたユイナは
先ほどまでのカールフェルトとの会話を少しずつ思い出していた。
(確か、契約成立で椅子ごと下に落とされて...落下のショックで気を失って...)
(ん?なんだこれ、あれ、私の髪の毛こんなに長くなってる...てか裸だし...)
自分の体とこれまでの経緯を思い出していると、後ろに気配を感じ、とっさに体を反らし
身構えた。
目の前には歳が近そうな、白髪で長髪の女性が、手を燃やしながらこちらを睨んでいた。
(えぇ...なんだこの状況、召還のイレギュラーとは言われてたけど部屋も凄い事になってるし)
(意味がわかんないよ・・・。)
お互い状況を理解できず、様子見が続いていると。
近くの割れた瓶が、カタカタと揺れだした。
白髪の女性は先ほどまで睨んでいた目を瓶に向け、やばいっといった表情で瓶に駆け寄ろうと
していたが、瓶には亀裂がいくつも入り、勢いよく割れてしまった。
一つかと思えば、本の下敷きになっていた瓶も複数同じように割れ
中から、人影の様な煙が私達の前に現れた。
角と牙、龍の様な長い髭が生えた人影が
『やっと出て来れたぜ...とっても疲れたわよ...この白髪の糞野郎..身体があれば食べてやりましたのに』
男性口調と女性口調が変わりながらも、白髪の女性を睨んでいた。
次に虎のシマ模様が入った様な女の人影が
『貴方は十二神の一人なのですよ、汚い言葉使いは止めてくれますか』
二つの人影が言い争いを始める前に、最初の人影より大きな角を生やした人影が
『まぁまぁ、久しぶりに出れたんだ 楽しく行こうぜ 何か食い物ないのか...』
二人を仲裁するように現れ、周りを見渡し
『ほんとに食いしん坊な事で、ふふ 実体が無いから食べれないのに可愛ぃ』
舌を出しながら妖艶な人影が大きな角の持ち主に語りかけた。
次に現れたのは長髪の人影であった。
『ビタミンAが豊富な人参を何故一番、魅力的な野菜と気づかないのか..愚かな奴らだ』
他の人影を見下すように、全員を挑発していた。
『おいおい、また始まっちゃったよ ややこしくなるから一旦落ちつけ』
長い尻尾をくねくねさせて、猿の様に座っている人影がいつの間にか現れ
その横のパーマが、かかった小柄な人影が
『皆、仲良くしようよぉ、喧嘩は良くないよぉ』
若干煽っているようにも聞こえる話し方で、仲裁しようとしていた。
『お前たち、外が久しぶりだからと言っても、はしゃぎすぎだ』
犬の様なピンっとなった耳の持ち主が、腕を組みながら全員に喝を入れると
先ほどまで言葉が飛び交っていた状況は一変し、誰も発言せず静まり返った。
そして、白髪の女性に近づき
『君が我々を召還した方かな、正直我々を召還できる召還師が居ることにとても驚いている』
『この様に実体に近い状態で話せるのは、ずいぶん長い事無かったからね 感謝する』
私の方を見ながら
『私の予想では、制御できる器に我々を入れて操るつもりだったんだろうが』
『あの様子だと、恐らく失敗か』
白髪の女性は目の前の人影に手をかざし
『自由を奪う地の鎖よ、この者の力を束縛せよ』
呪文を唱え終えると手に魔方陣ができ、人影の下から光の鎖が巻きついていった。
完全に身動き出来ないほどに、巻きついたかと思われていたが、人影は一瞬で鎖を破壊し
『この様な魔法で止めれると思わないで頂きたい、召還まじかならまだしも』
『残念ながら、もう覚醒してしまっているのでね』
驚いた白髪の女性に、髭の生えた人影が目の前に現れ
『その身体頂き!』
女性の顔に手を近づけると、力が抜けたように座り込み
犬の人影が制止しようとしていたが、それを避けるように白髪の女性に入っていった。
白髪の女性は突然笑い出し
『やっと入ってやった、久しぶりの生身の身体よ、何もかもぶっ壊してやる』
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