一章一輪目
翌日。
今日はアル学の入学式である。天気も良く、マンドラゴラについた朝露も輝いている。
「かばんよし、着替えもよし、護身用のマンドラゴラもよし。出発!!」
マンドラゴラは土から引き抜くと魔力を込めた声でさけぶ。その声を受けると効果は種類にもよるが体がしびれたり、めまいをおこしたり、気絶させたりもする。
ちなみに僕は幼いころから聞きなれているので気絶するようなレベルでもまめいですむのだ。
宿の階段を駆け下り、僕は学園への道へと走りだした。
*
学園の講堂に着くともうすでに人が大勢いた。
心なしか案内をしている上級生の顔に疲れが浮かんでいる。
そんな上級生を横目にクラスの書いてある札を確認し、席へと向かった。
僕のクラスはA組である。
クラスがあっていれば席はどこでも構わないと書かれていたので迷わず窓ぎわに座る。
光合成をマンドラゴラにさせるのだ。
*
「お隣、よろしいかしら?」
「はい、どうぞ。」
そう言いながら振り向いて僕はおどろいた。
そこにはとんでもない美人がたっていた。
長い濡れ羽色の髪をうしろでまとめており、すらっとした体つきで、僕は黒百合をイメージした。
「いいマンドラゴラですね。」
「あ、ありがとうございます。」
「あなたも園芸部に入るつもりですか?」
そういえば昨日勧誘されたおぼえがある。
「検討はしていますがどういう所か知らなっくって。」
「私は入ろうとおもっています。あなたはそのかばんの中の種から察するにマンドラゴラコレクターでしょう?」
「はい。植物なら基本好きですがその中でもマンドラゴラが好きで、コレクションしています。」
無表情だった彼女のかおがぱあっと輝いてその口元が緩んだ。
「私、エレナといいます。あなた、トレントはお好きですか?」
トレントは魔物の一種で木のくせに歩き回り、そして動物を見つけると枝でたたいて殺し、肥料として使うのだ。
「僕はカミルです。好きですよ。小さいころ一日中トレントを追いかけた時は親にこっぴどくしかられたりもしました。」
「そうですか、そうですかあなたもトレント好きですか。友達にトレントが好きと言うと毎回なぜか引かれるのです。あんなにかわいいのに。たとえばあの根っこでうまく歩けずよたよたしながらも健気に進んでいくところとか、頑張って自分はただの木だよアピールしているところなど...(以下省略)。」
結局彼女のトレント語りは先生が前のステージに上がるまで続き、その間僕は周りからの痛い視線にたえつずけていた。
木の可愛さ。よくわから ないです。