1-8 タナカ宅でのコンティニュー
目が覚めると、見たことのない天井が目に入った。
そうか、スライムにやられて俺は…
ノゾミはため息を吐き、体を動かそうとする。全身にふわふわとした感触。これが天国なのか?
「き、気がつきましたか…?」
ノゾミは声をかけられ、横たわったまま声をした方を向くと目と鼻の先に幼く美しい少女の顔があった。
この人が天使か、ノゾミは天使を見る。ブロンドの髪に同じ色の瞳、肌は白く、薄い生地の服に覆われた胸は…ノゾミの胸より大きそうだ。年齢は12歳くらいだろう。
そして一際目立つ長く尖った耳。
「エルフ…?」
ノゾミが呟く声が聞こえたのか天使はニッコリと微笑んだ。
「はい。タナカ様の奴隷でエルフのフェリシアです」
∫∬∫∬∫
タナカ?じゃあここは天国じゃないのか?
ノゾミはキョロキョロと周りの様子を確認する。その結果、ここは天国ではなくただの家でノゾミはベッドに寝ていることが判明した。
「俺は死んでないのか…?」
ノゾミは背中に触れる。スライムに皮膚を溶かされていたはずなのに痛みがない。
「そのブレスレットだと思います。ご主人様に頂いたんでしょう?それ」
フェリシアはノゾミの腕につけているタナカにお守りとして貰ったブレスレットを指でさす。ちなみにこのフェリシア、ウィンドウの情報が正しければ82歳らしい。とんだロリババアだ。
「それは【転移の首輪】と言って、装備すると体力が少なくなった時に自動であらかじめ決めていた場所へ転移することができるんです」
「へえ…」
だからタナカは自分を助けなかったのか――いや、あの表情は絶対に楽しんでた。
「アイツ…次あったら殴ってやる」
ノゾミは上半身を起こし、拳を握りしめる。
「あ、今は起き上がらないほうが――」
「ただいま~」
呑気な声と一緒にドアが開き、帰宅したタナカが部屋に入ってくる。そしてベッドの上で上半身を起こしているノゾミを見て、顔をひきつらせた。
「あー、なんというか…」
「…?なんだ?」
「服、着たら?」
そう言われ、ノゾミは自分の体を見る。服を着ていない。微かな2つの膨らみや、下半身までもがタナカの眼前にさらされていた。
ノゾミは羞恥心から顔を真っ赤に染め、
「出ていけこのロリコン野郎ぉぉおおおおお!!!」
片方の腕で裸体を隠しながら逆の腕で枕を投げた。枕はタナカの顔に一直線に飛んでいき見事命中。タナカはその勢いで外に倒れた。
★☆★☆★
それからノゾミはフェリシアに用意してもらった服に着替え、タナカの家で晩御飯を食べることになった。ノゾミの着ていたローブはスライムのせいでぼろぼろだったので、フェリシアが捨てたらしい。それにしても、前まではローブだけだったので気にならなかったが、服が完全に女物なので違和感がすごい。
「この晩御飯…異世界感ゼロだな」
茶碗に盛り付けられたご飯に豆腐とワカメの入った味噌汁、そして焼き魚。完全に和食なメニューにノゾミが呟くと、それにタナカが反応する。
「いや、その魚はただの魚じゃないんだぞ?それは歩魚っていうモンスターの魚でな、昨日俺が倒した奴だ」
「そうなの?」
ノゾミがフェリシアに話を振るとフェリシアは笑顔で、
「はい、大きかったので捌くのが大変でした」
との一言。
どうやら他にも似ているようでまったく違う生物から取れた材料で作っているらしい。豆腐が一種のスライムから作られていると聞いたときは味噌汁に口をつける気が失せた。
「なあ、お前はこれからどうするんだ?」
食材の話題が一段落したとき、タナカがノゾミに聞いてきた。一人で生活できるようになるまではここで泊めさせてくれるらしい。なのでどうやって生活したいかと聞かれた。
「…タナカは俺がタナカと同じように戦って生活していけると思うか」
「思わん」
即答だった。タナカは今日の戦いを見て思ったことを口に出す。
「お前の場合初期ステータスが低すぎる。スライム相手にダメージが入らないんだったら何も倒せない。まあレベルを上げたらなんとか戦えるかもしれないが…」
「戦闘に関係するステータスはオール1だからな、俺」
何故か偉そうに言うと、驚いたようにタナカはノゾミを見る。
「お前…ステータスが見えるのか!?」
次回、ノゾミの秘密が明らかに!?
※次回の内容はなんの連絡もなく変更される場合があります。
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