1-4 初めての会話
時刻ってめんどくさいですよね。私は午前か午後かよくわからなくなります。
「よう、そこのお嬢さん。新入りかい?」
上之浦はいきなり隣から話しかけられ驚き立ち上がってしまう。
「そんなに驚かなくても…」
上之浦は振り向き苦笑している男性の顔を見る。すると、
「うわっ!」
3つのウィンドウが勝手に開いて上之浦はビックリした。しかし相手の男性にはウィンドウが見えていないようで首を傾げていた。
ウィンドウを半透明にしておいて良かった。顔を見るだけでウィンドウが開いていったら絶対前見えなくなってた。
とりあえず上之浦は適当に会話していく。
「いえ、あの…いや、違うんです!これはあなたの顔を見たから…とか…」
うん、知ってた。一年間親と妹としか話してない俺に初対面の人と会話なんて出来るはずがなかった。
しかし男性は気分を害した様子もなく笑う。
「そんなに気にしなくていい。それに、顔を見て驚かれるなんていつものことだし」
はっはっはと豪快に笑いながらベンチに座り、上之浦に座るよう促す男性はいかにも重そうな鎧と長い両手剣を装備したがたいのいい白髪のおっさんでタナカと言う名前らしい。
タナカを見たときに表示されたウィンドウの一つに名前、性別、そしてレベルが表記されていた。
あとの2つには心拍数や血液型、血圧などの不必要な情報が書かれたものと攻撃力や防御力等の詳しいステータスが表示されていたが必要なさそうなのでこの2つは非表示にしておく。
「えーっと、タナカさんですよね…?」
「おう、本名は川口だがな」
なんで名前田中にしたんだ!上之浦は心の中で叫んだ…つもりだったのだが、
「なんで名前田中にしたんだ!」
声に出てしまったらしい。タナカはきょとんとした顔で上之浦を見つめ、それからすぐに笑いだした。
「いやー、別に深い意味は無いんだがな?こっちの世界に来て名前決めるときに本名だと味気ないな~と思ったんだよ。だからタナカにした」
うん、どうでもいい。どうでもいいのだが、
「こっちの世界に来た?」
「そう、この世界にいる全てのプレイヤーは皆日本から来ているんだ」
◎○◎○◎
「『アプリで遊べる!さくさくMMORPG』。それをスマホにインストールし起動すると画面が白く光り、気がつくとここに飛ばされるんだ」
お嬢さんもそうだろ?と振られたので上之浦は頷いておく。
「俺がこの世界来たのは2016年の1月3日。かなり古参なんだぞ?」
正月から何をやっているんだこのおっさんは…
上之浦は今度はちゃんと漏れないよう注意して心の中でつっこむ。
「ちなみにお嬢さんはいつ来たんだ?」
「確か…2018年の2月の中旬辺りだったと思います」
「あやふやだな、お嬢さんまだ小学生だろ?」
…は?何言ってんだこのおっさん。と思ったが恐らく見た目がステータス画面の銀髪ロリ美少女になっているんだろう。
「いや、自分実は男子高校生で…ってやめたから違うか。とりあえずホントは18歳の男です」
上之浦は一応誤解を解いておこうと思ったのだが、上之浦の話を聞いた途端タナカの顔が変わった。どうやら驚いているようだ。
「…こっちの世界にくる前もそんな姿だったのか?」
「いや、ゲームのキャラメイキングで――」
「キャラメイキング?」
タナカが上之浦の話を遮る。
「…よし、ちょっと移動するか。酒場行くぞ」
「は?俺まだ未成年――」
「ほら、いいから来い」
半ば強引に上之浦は酒場へと連れていかれた。
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