異世界転移?いえ誘拐です
「つまり、こういう事ですか?」
テンプレ通りの王様の説明の後、彼は尋ね返した。
「ええっと、魔王と呼ばれる異民族に蹂躙されて、貴方の国が困っているから、私を異世界からチートな勇者として召喚したっと。で、帰るにはその魔王を倒したら、女神が現れて返してくれるっと?」
「あぁ、その通りだ」
王様が答えた。
しばらく、彼は考えた後笑いはじめた。
「ハハハハッいやぁ、それは無いでしょ。あなた方の国ではどうか分かりませんが、私のいた国ではこれは拉致誘拐、そして殺人教唆強要、これは立派な犯罪です。しかも、国対国の戦争だ。善たる神がその様な事認めているとは思えない。相手の国だって貴方が敬う神が創ったものでしょう?それに、それはあなた方の世界の歴史だ、あなたの国の歴史だ。あなた方が責任持ちなさいよ。異民族どころか異世界人の俺にけつを拭かせようとするなよ
あぁ、そうそう私にはチートな能力が有るようだ、あなた方のステータスもスキルもすべて私の物に出来たようだ。私の後で私を奴隷にしようとしてた彼のもね。あなた方のステータスでこの異世界を観光して回りますね。」
彼が得たチートなスキルは
蹂躙:ステータス及びスキルを奪い自らの物にするスキル
「大体よ、国ってのは国民を守ってあげますよ、だから税金納めてねって約束の元に成り立ってる。でも私は貴方方のお金を貰った訳でもないし、親兄弟友人が居るわけでも無いし。貴方方を護る義理も義務も責任もありませんよね。あぁ、だから隷属させようとしたのか。あ、この隷属の首輪を、王様に着けて契約すれば、この国も思い通りだよね。」
「でもさ、王様よ、これだけ立派な騎士団が有りながら、他所の世界の、戦闘経験の無い、何処の馬の骨かも分からない平民を召喚するって、騎士団の騎士達の気持ち考えた事有るの?騎士団が宛になら無いから私を召喚したのでしょ?忠誠心と能力を疑われても尚、忠誠を尽くす騎士さんて凄いね。私ならば、寝首をかいてやろうかなって思っちゃうけどね。じゃあね。俺から親兄弟友人を奪った泥棒さん?」
そういうと、
王様に隷属の首輪を着けて契約を結んだ
力を奪われうずくまる王様と家臣団を背に、
その外来生物は異世界を蹂躙しに出ていった。
泣きながら
笑いながら
全てを失った
全てを異世界に奪われた人間の
復讐が始まる
数日後、一つの王国が姿を消した。