第七話 ~憎むべき者~
「お、おい…」
後ろからコルミヤが声をかけてくる。おそらく、地位の高いカワテヒにずかずかと話しかけるな、と言いたいのであろう。
「…確かにお前が…、俺を憎むのはよくわかる…、だが…報酬つきだったら…どうする?」
カワテヒは途切れ途切れに口を開いた。
その中で“報酬”と言う単語が私の思考の中で“憎しみ”と争いを始める。
「いくら?」
「金で…買えんものだ…あの…剣だ…我が国の…宝とも言われる…剣だ」
「よし、術を組むわ」
「早いな」
私はコルミヤの言葉を無視してカワテヒに向かう。カワテヒが言っている剣。それは青銅剣の事だ。
青銅剣は銅に錫を混ぜて加工したもの。今は武器の多くに鉄が使われているが、実は青銅の方が加工がしやすく性能も良い。だか、反面生産量が極めて低い。だから自然と価値が高くなってしまうのだ。
「当たり前じゃない。一度獣相手に使ってみたかったのよ。…ターミシャルイミハサを…」
私はカワテヒがゆっくりと上げた右腕に握りしめられているターミシャルイミハサをもぎ取った。
「じゃあ…始めるわよ?」
「おう」
その言葉を聞いたと共に宝石に体を流れる魔力を流し込む。少々足から力が抜け、ふらついたがバランスを取り戻す。
しばらくそうしていると、ターミシャルイミハサは段々と茶褐色から鮮やかな赤色を取り戻し始めていた。コルミヤは不安そうな顔でこちらを見たり、ぐるぐる辺りを歩き回ったりしていたが、気にすると術が起動出来ないので放っておいた。
「始めるわよ!」
そう叫んで私はカワテヒの腕をわしずかみにし、その手のひらに魔方陣を魔力を纏わせた指で描いて行く。
円、星、十字架を重ね、そして詠唱する際の呪文を書きその手にも魔力を注ぎ込む。
「くっ!」
だが、やはりターミシャルイミハサの呪いは強い。やはり、かなりの魔力を使わなくてはならないようだ。
次の瞬間だった。
バアンッ!
部屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「なっ!?」
コルミヤが慌てて振り替える。私は集中力を欠かさぬため、そちらはコルミヤに任せておく。
「おうおう、コルミヤに狩妖精まで。こんなところで何してんだ?」
聞き覚えのある声が耳に伝わった。この声は…ジミサルっ!
その後、剣を腰から引き抜く音が何重にも重なって聞こえた。おそらく、やつと共に数人、もしくは数十人がドアのところにいるであろう。
これはなんとしてでも、早く呪いを解いてここを離れなければ…。
「お前がその気なら…俺も…」
コルミヤがそう言い、再び剣を抜く音が聞こえた。どうやら彼は交戦する気らしい。
「そうか……構えっ!」
ジミサルが叫ぶとガチャガチャと防具の擦れる音が聞こえ、再び静寂が訪れる。
「…何が目的だ?」
重々しい声でコルミヤが聴く。
「………死後の世界の土産話に聞かせてやろうか?」
「死後の世界の土産話に聞かせてやろうか?」
ジミサルが口角をつり上げて、口を開いた。今にでもこいつの顔に剣を突き刺してやりたい。
いまだに狩妖精はターミシャルイミハサとやらの呪いを解いている。
さすがの俺でもこの人数相手にするのは辛い。
「俺はあるお方のお指名を受けてここに来た。国王を殺せ…と言う命令を受けて…」
「それで狩妖精を味方につけようにした、と言うわけか?」
「そうだ…しかし…そいつはこちらにつかなかった…」
ジミサルが狩妖精を指差した。狩妖精は首を動かさずに「はいはい、私のへまですよ」と震えた声で言った。
「だが、国王を殺したのをお前らのせいにすれば全て話はまとまる。俺の目的は果たせるし、俺に罪の視線が向けられることもない。どうだ!?これが俺の目的だっ!!」
ジミサルが狂ったように叫んだ。