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妖精島の妖精の日常  作者: 紅夜阿灸
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第五話~策略~

「どういう…こと?」

「だから言っただろう?俺にとっては都合がいい。それだけだ。話す訳、ないだろう?まだ会って数分のお前に…」


都合がいい。国王が死ぬことが都合がいい?一体何が言いたいのだろうか。


「確かにそうね…」


はぁ…とため息を着いた。それを聞いて武妖はピクリと反応した。


「…じゃあ…俺と取引をしないか?」

「取引?」

「そうだ。簡単な取引だ。お前は何を言われても決してカワテヒの…その呪いというやつを解くな。そのまま、奴が死ねば死刑をチャラにしてやる。…どうだ?」


その内容は何とも卑劣なものだった。国王を殺す。簡潔に言ってしまえばそうなる。それは私の手で殺したと言うことにもなる。

私のもっていたターミシャルイミハサを国王が拾い、呪いの術式を知っているのにも関わらずそれを使わずに死を待つ。それは私の心を罪悪感と劣等感が永遠に蝕み続けるであろう。

しかし、このままでは私は処刑される。

殺すか死ぬか。その選択だ。少したりとも誤ることは出来ない。


「しばらく…考えさせて」


まだ六日ほど時間はある。その間、しっかりと選択を見極めることはできるだろう。


「いいだろう。ではまた明日にくる。俺の名はスヤラマ・ジミサルだ」


そう言って武妖…ジミサルは踵を返して歩き始めた。それは何とも力強く気力に満ち溢れていた。






「どうだった?」


彼は俺に問いかける。その声は低く、特徴のある響きを帯びていた。


「…伝えたことには伝えましたが…まだ答えは…」

「まだだと!!??そんなにねちねち時間をかけられることではない!さっさと話をつけろ!!」


バァン!彼はテーブルをおもいっきり殴り付けた。暗い色の木材でできたそれはミシリと音を立てた。


「も、申し訳ありません。明日には、明日には必ずや答えを出すでしょう。それも、あなた様のお望みの通りの」

「ほう?嫌に自信があるな。どうしてそう断言できる?」


彼の声は半ば浮かれているように聞こえた。


「それは………………」








「っち!あいつ、何考えてんだ!」

ジミサルが去って間もなく、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。コルミヤだ。だが、この私てさえ彼の気を感じとることはできず、可能な限り首を動かして周りをぐるりと見回したが視界にも入ることは無かった。


「ねぇ…あなたどこにいるの?」

「ん?さすがのお前でもさすがにこれはわからねぇか。逆にわかった方が怖いが…」


最後にコルミヤはクククククッと笑った。

私の影がゆらりと揺れた。

よもやと思うが…


「影隠《サーマ》?」


影隠、それは初歩の方で学ぶ魔法の一つ。とは言うものの、かなり使用頻度が高くもこれによって命が助かったことも数回あったくらいだ。相手の影にやすやすと溶け込み、場所を悟られなくする魔法。魔力の消費が少なく、ちびっこどもが遊ぶ時によく使用される。

しかし、特に武妖や貴妖たちの間では『魔法』は穢れた物とされ嫌われている。それなのになぜこの妖精。コルミヤは武妖なのにも関わらず魔法を使っているのだろうか。


「あなた、武妖のくせして魔法を使うの?」

「ん?別に便利な物使って何が悪い?くわがあるのに素手で畑を耕す奴はいねぇだろ?それと同じだ」

「その言い方をすると、王族たちが素手で畑を耕しているように思えるけど?」


軽く鼻で笑ってそう溢す。


「それ意外ないだろ?」


そう返して、コルミヤはこちらに近づいてくる。


「ほら、腕を出せ。鍵外してやる」


コルミヤはごそごそと懐から小さな金色の鍵を取り出した。


「大丈夫。そんなもの使わなくても…」

「は?」


私は後ろに回されている腕の指先に小さな火をおこした。別に私はここから抜け出せない。なんぞ言っていない。だからジミサルの話にその場で了解しなかった。

魔力でおこされたその火は小さいながらも絶大な火力を持っている。数秒ほどで鎖は柔らかくなり、数十秒ほどで鎖はぐにゃりと曲がり千切れた。

千切れた鎖を軽く振りほどいて、私は立ち上がった。

一瞬立ちくらみでくらくらとしたが、特に支障はない。


「で、何の用でここに来たの?」

「おい…」

「え?」


コルミヤの放った二文字の言葉は今までと比べ物にならないくらい声色が変化していた。

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