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妖精島の妖精の日常  作者: 紅夜阿灸
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第四話~表と裏~

「はぁ…はぁ…はぁ…」

「カナミラ様!しっかりしてください!」


その頃ベッドの上で寝かされている、この国の国王である『カナミラ・カワテヒ』の周りには沢山の妖精が集まっていた。医妖、武妖、聖妖。とにかく沢山だ。


「う…う…くる、しぃ…」


カワテヒはゆっくりと口を動かして弱々しい音を上げた。しかし、そんな中でも『ターミシャルイミハサ』はカワテヒの手の中で握りしめられていた。


「カナミラ様!」


すると、どかどかと足音をたてその集団を掻き分けながらカワテヒに近づく武妖がいた。

彼の名は『ニャエサ・コルミヤ』。彼は武妖の中でもかなり腕の立つ者で性格も正しいことを貫き通すいわゆる、模範というやつだ。

コルミヤはカワテヒのベッドに顔を近付けた。

かなりカワテヒは弱っている、あの狩妖精のいった通りになっている。つまり、カワテヒはあと数日で死に至る。と言うことだ。


「カナミラ様、あの緋色の宝石はいかがなさいましたか」


コルミヤはカワテヒの耳元でそっと呟く。


「私がもって、いる」


今にも折れてしまいそうな声でカワテヒは返事をした。


「決して、他の者にそれを渡さないで下さい。この国の安堵が蝕われます」

「わかっ、た…」


そのままカワテヒは目を閉じた。息はあるので死んではいない。いわゆる昏睡だろう。彼の額には点々と汗の粒が並んでいた。




        *




「暇…」


ぽつり、そう呟いた。この薄暗い牢獄の中、なにもすることがない。ただただ暇だ。意味もなく鎖をいじる。


「はてさて、ここからどうするかな…」


あと六日ほどでカワテヒは死に至る。そうなってしまえば私の死刑は逃れられないだろう。だからといってそんな容易にここを脱け出せる訳でもない。まさに八方塞がりだ。

幸い、ヘリフスのとこで食べ物を大量に詰め込んで来たので、まだ空腹にはみまれていない。


「でもどちらかというと…術式を…組みたくないのよね…」

「…」

「………誰?」


明らかに空気が変わった。殺気でもなければ妖気でもない。

すると、またもや橙色の光が揺れ宝石をちりばめた鎧を見にまとった者が姿を表した。


「よく気がついたな。俺だって相当息を殺していたぞ」

「気よ気。あんたが入って来ると同時に周りの空気が変わった」

「さすが、何度も生死の境にたたされた狩妖精は違うな」


まだはっきりと姿は見ることはできないが、それは確かに鼻で笑った。


「まぁね。これまでに…数十回位?」

「随分と多いな…」


一度目は…いや、それはまた今度にしよう。今は目の前のことに集中。


「で?何のよう?何もなければわざわざこんな所には来ないでしょう」「よくわかったな。まぁ気づくか。それではいくつか質問をさせてもらおう」


牢獄内にコツコツと高い音が響き渡る。そしてそれはゆっくりと近づいて来る。徐々にそれの顔が浮かび上がってくる。

先ほどの武妖とは違い、肌は白く顔は細い。俗に言う優男的な表情だ。


「先ほどの武妖は何を言っていた?」

「それ、私が言わないと駄目?本人から聞けばいいじゃない」

「コルミヤから聞けとでも言うのか?聞けるわけないだろう。あいつとはそんな仲を育んでいない」

「へぇ…あの妖精コルミヤって言うんだ…いいこと知った」


あの武妖はさっき名乗らなかった。まあ、別に知って何か得をする、という訳ではないのだが知って損は無いだろう。


「で、何を言ったか?の質問のことなんだけど、ただ様子を見に来た。ただそれだけよ」

「コルミヤは鎧をはずしたか?」


私は首を横に振った。


「そうか…では次の質問に移ろう。お前、カナミラに何をした?」


この武妖の顔が一瞬だけ強ばった。


「待って、いまカナミラって言った?さっきのコルミヤとやらはカナミラ『様』って呼んでいたわよ?」

「別に俺はあいつを敬っている訳ではないからな。さて、何をした?」

「正確に言ってしまえば、私が何をどうした。とうう話じゃないのよね。私が持っていた宝石『ターミシャルイミハサ』をカワテヒがたまたま拾っただけ」

「ターミシャルイミハサだぁ?ふっ笑わせてくれるな。そんなおとぎ話に出てくるようなもの。あるとでも思っているのか?」

「なら確かめてみればいいじゃない。ターミシャルイミハサを持った者は六日ほどで死に至るのよ?」

「なら、なぜお前は死ななかった?」

「私は緑髪族だからよ。緑髪族は呪いを防ぐ力がある」


髪の色によって力の有無を考えるものは少ない。だから信じられるかどうかはわからないが、一応説明する。


「そうか、なら俺には好都合だ」


武妖の口角がにゅっと上がったのを私は見落とさなかった。

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