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妖精島の妖精の日常  作者: 紅夜阿灸
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第一話~狩り~

この地球には日本をはじめとするたくさんの島がある。一つ一つ数えていったらきりが無いだろう。


そんな中にまだだれも訪れたことの無い島があった。我々はそれを『妖精島《フェアリーアイランド》』と呼んでいる。




Ⅰ 狩り妖精のシュナ


「今日は暑いわ…」


 太陽がさんさんと照りつけるこの季節。私こと、『ミアナラ・シュナ』は服の中にじっとりと汗を掻いていた。物干しに洗濯物をさっさとかけて軽く叩いた。


「今回の依頼はっと」


 私は服のポケットから几帳面に折り畳まれた紙を引っ張り出した。

 カサカサとそれを広げ、同じく几帳面にかかれたその文字に目をやった。『アンテプ…3頭、サカラ…2羽』


 と、そこには記されていた。私は一旦家の裏にある倉庫に入った。


「さてと…」


 この倉庫にはたくさんの武器が保管されている。私の本職である『狩妖精《ライシャ》』はその名の通り、動物を狩ってそれを売ってお金を手に入れるのだ。確実に収入を得るには、確実に獲物を仕留めなければならない。そこで、その獲物に適した武器を選ばなくてはならない。


 「ん~~?」


 私は壁にかかったいくつもの剣を睨み付け、その内の一本を鞘に収め腰に回した。

そして、その横にかかっている青白い弧をした弓を手にして背中に回した。


「さて、行こうかしらね」 私は倉庫から出て、背中から生えている薄い青色を帯びた翼をはためかせて空に舞った。



「さてさて…あれね」


 しばらく空を飛んでいると、地面にいくつもの点を見つけた。アンテプの群れだ。

 私は剣の束《つか》に手をかけて鞘から引き抜いた。照りつける太陽の光をそれは眩く反射していた。


「…」


 高まる鼓動を押さえつけ、空中で体勢を低くした。そして、体を下に向け翼を動かした。

物凄い勢いで私は地面に向かっていった。ここからは集中が必要だ。


「3…2…1…っ!」


 地面との距離が目と鼻ほどの距離になった瞬間に体を上側に反らし、超低空飛行をする。そのまま剣をアンテプの腹に突き刺す。


「っく!」


 そして、アンテプの体を床にして刺さったままの剣を抜く。剣にべっとりとへばりついた血液は異様な光を放っていた。

 その勢いを利用して、再び空に飛び上がり剣を鞘に戻し背中にかけた弓を手に持った。

 アンテプは仲間が殺られたことに気付き、慌てて逃げ始めた。私は冷静に魔力の塊から作られた光矢《ライトアロー》を弓にあてがい、放った。

 光矢《ライトアロー》はきれいにアンテプに命中し、消滅する。そこに残るのはアンテプの死体だけ。


「あと、一匹」


再び弓を構え、光矢を引き絞って放つ。これも、命中。アンテプは静かにその場で崩れた。



「よいしょっ、と」


翼の動きを弱め、地面にふわりと着地する。そして、腰にかけてあったロープをアンテプの鼻に結んだ。後の2頭も同様だ。


「お次はサカラね…」


 空に目をやると、都合よく空を優雅に舞うサカラの群れがいた。

 私は弓を構え、今度は硬矢《ハードアロー》を作り出し、弓にあてがって引き絞った。

 矢は狙いのサカラに命中。更にそれを貫通し、上を飛んでいたサカラにも当たる。

 2羽は力尽き、私の前に落下してくる。一歩前にでてそれを交わす。


「これが一石二鳥ってやつかしら?いや、一矢ニ鳥とでも言うのかしらね?」


 私はアンテプ同様にそれをロープで縛った。




ガラスで出来たドアを開ける。肉の脂が焼ける匂いと香辛料の香りが鼻孔をくすぐった。


「いらっしゃいってシュナか!」


会計場から顔を覗かせた図体のいい男。彼の名は『ガラミアス・ヘリフス』。私に依頼をする常連、と言ったところだろうか。


「……!」


ヘリフスは手招きで(こっちに来い)と伝え、私はその通りに近づいた。


「どうだった?」


彼は私の耳の傍でこそこそと聞いてきた。


「もちろん上物よ」


私はヘリフスに獲物を見せつけた。その瞬間にヘリフスの目付きが一気に輝いた。


「おぉ!これは確かに上物じゃないか!」

「当たり前よ。私の腕を見くびってたの?この国一の狩妖精よ?私は」

「いや、まあ色々あってな。ほれ、今回の代金」


ヘリフスは台の上に中身がぎっしりと詰まった麻袋をどしんと乗せた。


「こんなに!?」


だが、その報酬の量はいつもの倍あるか無いかぐらい。とてつもなく多い。


「いや、な?実はこの間、『ザミライ山』で新種の動物が見つかったんだ。で、皆それを狩りに行っちまってアンテプとかサカラを狩るやつが少ねんだ。まぁこんだけあればしばらく持つな。ありがとう」

「いやいや、こっちだってこれが商売だから…、ただ、なんかおごって…」


今まで空腹にも気付かずに狩りに集中していたのだが、今になってそれが来た。お腹が弱々しい音を立てる。


「狩りは国一番だが、それ以外はまだまだお嬢ちゃんだな」

「うるさい…」

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