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放課後、教室にて……

大神さんに言われた通り、僕はずっと教室に居た。

一人、また一人とクラスメイトが教室から出て行くのを横目に見ながら、ひたすら自分の席に座っていた。


最後の一人が居なくなってどれくらい経っただろうか?

外を見ると日は沈み、夜になっていた。僕をこの状況に追い込んだ彼女は一行に姿を現わす事もない。

彼女を待つ間に時間もかなり経過した事もあり、トイレに行きたくなっていた。


少しぐらい席を離れても問題ないだろう……よくよく考えれば『放課後……皆が帰るまで教室に居なさい』としか言われてない。

皆が帰った今、僕はここにいる必要がないはずだし。


自問自答の末答えが決まった僕は席を立つ。それと同時に教室の扉が開く音がしたと同時に電気がついた。

音のした方を見れば、教室に入ってくる大神さんが目に入った。


「あんたどこに行こうとしてるの?」


僕に対して鋭い視線を送る大神さんに萎縮してしまうが、僕はすぐさま答える。


「トイレに行きたくなったので……」


今の僕に猶予はない。正直走ってトイレに駆け込みたい程に限界が近づいている。


「そうなのね、分かったわ」


そう言って大神さんが笑った。どうやらトイレに行っていいらしい。

僕は慌てて大神さんの横を通過しようとしたのだけど、何かにつまづいて転倒してしまった。

転倒の衝撃で思わず漏らしてしまいそうになるところを何とか堪えて立ち上がる。


「誰が行っていいと言ったの?」


目の前の美少女から発せられたとは到底思えない程冷たい声。


「あ、あの……」


「口答えしなくていいから早く自分の席に戻りなさい」


「お、大神さん。本当にもう限界なんです。お願いしますトイレに行かせてくだ」


「いいから座れよ。自分の立場わかってるの?明日から皆にイジメられる様にしてもいいんだよ」


そう言って歪んだ笑みを浮かべる彼女。


「大神さん、本当にお願いします。僕をトイレに行かせてください」


震える声でもう一度お願いするがやはり聞き入れてもらえない。


「早く座れ。これが最後ね……」


吐き捨てる様に言う彼女には僕の願いは聞き届けてもらえないだろう。諦めた僕は自分の席に戻る。


脂汗が止まらない。本当にやばい。大神さんの前で失態を見せるわけにもいかずひたすら下を向いて耐えていると大神さんが近づいてきた。

足音が止まり見上げるとスマホを片手にニヤついている。


「いい加減諦めればいいのに。ほら、あんたの情けない姿をしっかり撮ってあげるから」


そう言って彼女は足を振り上げる。何か白いものが見えた気がした。

それが何なのか理解するより早く、腹に痛みが走った。

それと同時に決壊する……僕はいい年してお漏らしをしてしまったのだ。


「あんた高校生にもなって何お漏らししてるの?恥ずかしい姿しっかり撮ってあげてるんだからお礼ぐらい言いなさいよ」


「………」


言い返す事が出来ず、悔しさで涙が溢れそうになるのを何とか耐える。


「何か文句のありそうな顔してるわね。言いたい事があるなら言えば?」


僕はここで何かを言ってしまうと火に油を注ぐと判断して口を噤んだ。


「ふん、つまらないの。明日、教室がアンモニア臭で充満するとか不愉快だからちゃんと掃除しておきなさいよ」


そう言って彼女は教室を出て行った。彼女が去り一人になった事を確認すると僕は泣いた。


悔しい、女の子に情けない姿を見せた。こんな思いをする為にこの学校に入った訳じゃない。いったい僕が何をしたってんだ。


やり場のない怒りをぶつける先を見つける事も出来ず、僕は自分の粗相の始末をして寮に帰った。

今日は早く寝よう……そう思いながらベッドに潜ると同時にスマホが震えた……。

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