第3部分 彼女は仄かな悦に浸る……
「皆、ちょっと私の話を聞いてもらっていいかしら……」
私は言質が取れた嬉しさを噛み殺し、クラスメイトに呼びかける。
「この学園の序列システムを今後このクラスでは使用しないでおこうと考えてるのだけど……この考えについて反対意見のある人はいるかしら?」
クラスを見渡すと複雑な顔をしている生徒が数名いる。何か良からぬ事を画策していたであろう事が容易に想像できる。
「なぁ、ちょっといいか?」
そう言うと、1人の男子生徒が私の方に歩み寄って来た。
「ええ、何かしら?」
「俺もある程度その考え方については賛成するけどさ……それさ?異性に対してって縛りにしてもらえないか?」
「どういう事?」
「いや、下の順位の奴に同等な態度取られたらやっぱ気分悪いしさ。その辺りの線引きはしっかりしておきたいんだよな」
同性に対しての虐めは公認しろって言いたいのをワザとはぐらかした言い方。
流石にそうですかと了承する訳にはいかない。
「それを容認してしまうと、女子の方で虐めが発生するかもしれない。その可能性がある以上、認める事は出来ないわ」
「なら男子だけでいいからさ。な?それならいいだろう?」
どうしても弱い者虐めをしたいのだろうか?この名前も知らない男子生徒と話す事に苛立ちを覚えた私はこれ以上の話は無意味と突き放す事に決めた。
「男子の方でそれが行われると、最初に決めた事が覆る可能性があるから……。だからこのクラスではシステムを使わないで統一しようと思う。皆もそれでいいかしら……?」
形上は、お伺いの体を取っているが、これは命令でもあると殆どのクラスメイトは理解しているみたいね。
私の質問に誰も返事をしてこない。
「反対意見も出てこない様だからこれで決定とするわね」
先程、密約を交わした彼の方を見ると安堵の息を漏らしている。
『あなたの地獄はこれからなのにね……』
私は声を出して笑いたい衝動をなんとか抑える。そして彼に…
「約束は守ったわ。これで貴方は今から私に逆らえない。まずは……そうね、放課後……皆が帰るまで教室に居なさい。」
私は、そう命じて自分の席に歩みを進める。
彼の「はい……」という小さな声をその背に受けながら……。
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