#08 警護任務
この世界は様々な部分が日本とよく似ている。
一年の流れ、季節感などもそうだ。日本ほど冬夏での寒暖差は無いが、それでもはっきりと四季は存在しているし、年間を通じて似かよった行事なども多い。
朝日はアニメやラノベでかじった程度の知識でしかないが、この世界はきっと平行世界――パラレルワールドに近い存在なのだろうと自分なりに理解をしていた。
暦は五月中旬。本日は朝日の身辺警護テストを兼ねた初外出の日である。
ただいまMaps側リビングルームでは、五月と梅が何やら準備の真っ最中だ。
「しっかしコレの許可が男性特区でよく出たもんだな?」
「私を誰だと思っていらっしゃいますの? それに朝日様の為ですもの。当然ですわ」
そう言って胸をはる五月を横目に、梅が腰のベルトに装着しているのは銃のホルスターだ。
男性特区では銃の携帯は厳しく制限されており、Mapsですら許可されていない。
そして、今回は実弾ではなく、殺傷を目的としないゴム弾頭限定の条件付きとなっている。朝日の行動に予測不能な可能性があることを考慮し、五月が携帯の許可申請をしたのである。
「大和さん。貴女はともかく、私は射撃が得意分野。それに深夜子さんも射撃技術は相当のものと聞いてますわ」
「ああ、そういやそうだった。けどよ、深夜子は別に銃なんか持たせなくても強えぞ。ぶっちゃけ出番はねえと思うけどな」
梅は深夜子の腕に覚えあり。と言った感じだ。
「もちろん、貴女方がお強いのは存じておりますわ。けれど、万一に備えて損はありませんことよ」
身だしなみと装備を整えつつ五月はさらりと言い切る。
そんな五月の本日の服装は、控えめなピンク色のカッターシャツにダークグレーで薄手のスーツをチョイス。袖にMapsの腕章を通して準備完了。
いつもより化粧に少しだけ気合いを入れ、上品なアクセサリーも数点。警護任務の邪魔にならない程度の着飾りなので、そこはご愛敬。
「ところで大和さん……貴女の服装ですけれど。私服警護担当の時はいつもそんな格好をされてますの?」
「あん? そりゃそうだろ。動きやすいし、何よりカッコいいかんな!」
梅は満足気に慎ましやかな胸をはり、可愛い八重歯をのぞかせる。
「格好……いい……ですの?」
眉間にシワを寄せた五月が、その姿を上から下までながめる。
迷彩柄のズボンにミリタリーブーツ。上半身は薄紫の長袖パーカートレーナー、おまけに指無しグローブも装着済みだ。
深夜子あたりに言わせれば、格闘ゲームのキャラっぽい格好と評価するであろう。
しかし五月にしてみれば、なかなか理解に苦しむファッションである。
Mapsの腕章を左足に括りつけているあたりも実に疑問に思う。かと言って、見た目がロリ猫娘の梅に似合う服装とは?
「ま、まあ……人それぞれですし。よろしいのでは無くて?」
――――途中で考えるのを止めた。
「ごめん。おまたせ」
そこに自室で着替えを終えた深夜子が入ってくる。
梅と同様、私服警護担当らしく動きやすさを重視したスタイルで、ブランド物のレディーススニーカーに、腰が少し露出するスリムなダメージジーンズ。
上半身は重ね着風のカットソーTシャツの上にカーキのジャケットを羽織っている。腰にかけた銃のホルスターとベルトは少し緩めに巻き、タイトな服装に合わせていた。
五月に負けず劣らず化粧にも気合が入っている。目つきの悪さはともかく、なかなかの見栄えだ。
「あ……ら……意外でしたわね? いえ、失礼。深夜子さん、とても素敵ですわ。日頃の部屋着が適当でしたので驚きましたわ」
「ふっ、このくらい当然」
さも当たり前、と言わんばかりの深夜子だが……。
「おいおい深夜子ー。おまえってば服のセンスそんなだったっけか?」
そこに梅が食いついてきた。
「うぐっ」
何やら痛いところをつかれたらしく深夜子は渋い表情をみせる。
それとは正反対に梅はニヤニヤしながら、その周りをくるくると回って服装をながめている。
「どれもこれも新品っぽいじゃねえか? ……ははーん! もしかして? あれっ、あれあれあれー?」
「うぐぐっ」
梅の追撃に深夜子は顔を赤くしてうつむく。
そう、深夜子はファッションには全く頓着の無いタイプであった。普段は部屋着がジャージだったりと中々にひどい。
しかし、朝日の気を引きたい一心からオシャレの研究をしていたのだ。
それを冷やかしている本人のセンスは絶望的なのだが、自覚が無いだけに性質が悪い。ウザい煽りをしつこく続ける。
「あっれー、みやこちゃんはー、もしかしてー、あさひきゅんの――――へっ!?」
瞬間、梅の眼前に銃口が向けられた。
その速度はまさに電光石火。深夜子が銃を抜いたと同時に発砲音も部屋に響いた!
「へっ? ……い、今……銃を抜く瞬間が見えなかった? ……ですわ……」
あまりに一瞬の出来事に五月は呆然とする。深夜子の動きがまったく認識できなかった――って、いや、それどころではない。
梅が頭を撃たれた!?
ところが、さらに信じられない光景が五月の眼前で繰り広げられていた。
「み、深夜子てめえっ!? なんてことしやがんだよ!!」
――ポロリ。
開かれた梅の左手からゴム弾が床に落ちる。
そんな馬鹿な。五月は理解に苦しむ……銃弾を手で受け止めていた?
「おいこら深夜子っ、俺を殺す気かっ!?」
「ゴム弾だから無問題」
知らんがな、と言いたげに深夜子は半目でジトッと梅に視線を向ける。
「至近距離だろうが、当たり所悪けりゃ死ぬぞっ!」
「ふっ、急所ははずした」
表情そのまま、深夜子はスッっと右手を上げてサムズアップ。
「嘘つけ! 思っいきり急所狙いだったよな?」
そうだね。人中狙いだったね。
「梅ちゃんなら大丈夫。信じてた…………ちっ」
「残念そうに言うんじゃねぇっ!」
「いっ、いやいやいやいやいや! お二人ともおかしいですわよね? 特に大和さん。銃弾を手で受け止めるとか、どういうことですの?」
まるで軽いお遊び。そんな空気で軽口をかわす二人に、我に帰った五月が全力でツッコミを入れる。
深夜子の抜き射ちも凄まじいものだったが、梅のこれはもはや技術と呼べるシロモノではない。
「あん? 別にそうでもねえだろ。コツがあんだよ」
「そうでもありますし、コツで済んではいけませんわよねっ!?」
良い子は絶対にマネをしてはいけない。
「ま、さすがにこのグローブが無けりゃちっとキツいけどよ。32口径くらいまでなら実弾でもいけるぜ」
「ちょっと何を言ってるかわかりませんわ!」
そう豪語する梅が使っているのは、強化繊維ゲルを素材の中心とした特注の防刃グローブだ。
最近開発された新製品で、耐久度、防御力、素手による格闘なんでもこいの万能さに加え、若干ながら防弾能力も有している。
わざわざ指無しの特注をしているのだが、決して中二病装備などではない。ないったらない。
「おおぅ、梅ちゃんそれどこのヤツ?」
「おうこれな。ブレードウォーカーっつうメーカーのでよ。特注で高ぇんだけど――」
「つ、ついていけませんわ……この方たち……」
言動のみでなく、物理的にもおかしい二人に頭を抱える五月。武闘派SランクMapsの肩書は伊達ではないようだ。
◇◆◇
「朝日君。お待たせ」
全員準備完了。リビングルームへ集合となる。
「うわぁ、深夜子さん凄く格好いい……スーツや部屋着の時と全然違ってびっくりしました。素敵ですね!」
さっそく朝日が目ざとく深夜子の服装に反応を示す。
深夜子。努力の甲斐あって見事にフィッシュオンである。
「えっ、ふぇ? そ、そそそそそうかな?」
ところが、ここで深夜子は自分の誤算に気づく。
着飾るのことに全力投球であったがため、こう言ったことで過去男性から褒められた経験皆無であることが頭から抜けていたのだ。
もちろん妄想の中では――。
『ありがと朝日君。嬉しいよ、フッ(キラーン!)』
『(ぽっ)はわわ、み、深夜子さん。す、素敵ですぅ』
『もう、照れちゃって! 朝日君は可愛いなあ』
『結婚しよ』
『いいですとも!』
――になるはずだった。
どっこい現実はキラキラと目を輝かせている朝日を前に絶賛挙動不審中。
急激に顔が熱くなる! 心臓がバクバクと波打ちうまく言葉が出てこない。
「あっ、深夜子さん。そのピアスもかわいいですね。三日月の形だから名前にもぴったりで……うん! 凄く似合ってますよ」
「ひゃぁ、こ、これ、そ、そうかな? ウェヒヒヒ」
隙を生じぬ二段構え。深夜子の平常心はあっという間に危険水域へ追いやられた。
女性のオシャレを察知して褒める。
二人の姉に鍛えられた”敏感男子”神崎朝日とっては、息をするかの如き当然の行為。
だがそれは、この世界の女性にとっては未知のモンスターの特殊攻撃。
その言葉は、嬉し恥ずかしの精神的絨毯爆撃となって深夜子に襲いかかる!
そんな馬鹿な? 先日格闘ゲームで超高難度の連続技を決め、朝日に褒められた時には余裕で対応できていたじゃないか。
今だって服装やアクセサリーをちょっと褒められただけじゃないか。なのに何故?
気がつけば深夜子はまともに朝日の顔を見ることすらできなくなっていた。
いけない! これではまたしても拗らせ処女になってしまう。
簡単なのだ。軽く『ありがとう』と言うだけで良いのだ。深夜子さんにおまかせなのだ。
いくぞ! 心に活を入れて朝日へと目を向け口をひら――。
「えと、僕。今日の深夜子さんの格好……その、結構好きかも……」
そこには少し頬を紅潮させ、照れながらそう呟いている美少年の穢れ無き眼があった。おっふ。
「いやあああああっ! 見ないで! あたしのこと見ないでええええええ!」
悲しいけどこれ処女なのよね。
「えっ……えええええっ!? み、深夜子さん!?」
両手で顔をおおい、耳まで真っ赤にして、深夜子は脱兎のごとく部屋から出ていくしかなかった。
「うぉーーい! チームリーダーがいきなり離脱してんじゃねえぞっ!?」
「…………少々お気の毒な気持ちになりましたわ」
出発前からこれでは先が思いやられる。仕方なく五月が、深夜子復活まで代わりにと事前説明を始めるのであった。
◇◆◇
「こちらが朝日様専用のハザードマップですわ。危険度に合わせて青・黄・赤で分けてありますから、目をお通し下さいませ」
「あの……これ青い場所って、家のある壁に囲まれた区域以外には……ほんのちょっとしか無いんですけど?」
青が最も安全度の高い区域なのだが、朝日専用マップにはわずかしか青表示がない。現在住んでいる場所を除けば、男性専用施設と商業施設の一部だけであった。
「ええ、これは『現在の朝日様専用』と言うことですわ。その……はっきり申しますと、朝日様は殿方としての危機管理意識が、かなり欠如されておれられますの。ですので、慣れるまではこちらでお願いしますわ」
しばらくは万全を期したいのだ、と申し訳なさそうに五月が説明をする。もちろん、慣れてくれば青や黄色の区域を拡大するという意味である。
「うっ、そうかぁ……。でも仕方ないですよね……お任せします」
「ご理解いただけて何よりですわ。それでは、本日は私が朝日様の身辺警護担当。深夜子さんと大和さんは、私服で周辺警護担当になりますわ」
これに朝日が敏感に反応する。身辺警護と言えば、五月ら三人が常に朝日の回りを囲んでガードしているイメージだった。
「えっ? みんなでいっしょに行かないんですか?」
「朝日様……いくら護衛と言っても、過度な殿方の拘束は許されませんの」
「あれだ。男性の権利だのなんだのって、うるせぇヤツが多いんだよ。そのくせ何かありゃ、全部俺たちの責任だけどな……」
『男性権利保護委員会』
通称『男権』。行政機関の一つで、男性の権利を守る為の行政委員会である。この手の組織は独立した権限を持っており、そして例外なく面倒くさい。
朝日が疑問に思った件もまさに一例。警護官による身辺警護は、男性に不要な圧迫感を与えてはならない。と言う条令がある。
指定区域内では、確実な危険が伴わない限り男性の近くに警護官は一人のみ、以外の警護官は男性が圧迫感を感じない程度に距離を置かなければならない。今日、五月以外が私服なのもその為だ。
男性の権利を守ると言えば聞こえは良いが、実にダブルスタンダードな条令で梅が愚痴るのも仕方ない。
「え……と、僕は構いませんから、みんなでいっしょに歩きませんか?」
「……そういう訳にはいきませんの。Mapsもいくら警護対象が良いとおっしゃられても、守らなければならないルールがありますわ。それに、家の中と違って外には人目もありますので……」
五月が申し訳なさそうに朝日を諭す。
「あっ……ご、ごめんなさい。初めてみんなと外出できると思って浮かれてました……」
朝日は、そのまじめな雰囲気を察して素直に謝る。だが、残念そうにしゅんとした表情を見た瞬間、五月が鼻息を荒げた。
「ああっ、そんなっ、そんな悲しいお顔をされないで下さいませっ! 朝日様は何も悪くありませんわ。大丈夫ですの、朝日様には私がついておりますわ! ですので、何もご心配なされずに――そう、例え世界の全てが敵に回ろうとも、五月だけは朝日様の味方ですのっ!! それにすぐに慣れますわ。いえ、慣らせて見せますわっ、この――あうっ」
演説でもしているかのような五月の後頭部に、背後から手刀が落ちる。
「五月、アピール露骨すぎ」
「んなあっ? なんですっ……て、あら深夜子さん」
謎の理論を展開し、朝日に言い寄っていた五月への不満か。はたまた自分の不甲斐なさへの憤りか、不愉快そうにしながらも復活した深夜子だった。
その後、必要な説明を終え。四人は春日湊で最も大きな商業施設がある地区へ移動を開始した。
◇◆◇
――現地到着。
初の警護任務となる本日。最大の目的は朝日の服を購入することである。
現在、朝日はこの世界に転移した時の服しか所持していない。つまり学生服のみだ。下着など最低限の手配はあったが、それ以外は現地調達になっていた。
「んと、朝日君。最初は好きにお散歩して、五月とあたしたちがついてくのに慣れて」
まずは朝日にMapsを連れて歩くことに慣れてもらうため、深夜子が自由行動をすすめる。
「あ、うん。深夜子さん、梅ちゃん。よろしくね」
「らじゃ」
「まかせときな」
「んじゃ五月、梅ちゃん、インカム準備」
準備をしながら離れていく深夜子と梅の背中を朝日はみつめる。よろしくとは言ったものの、心中には少し不満が残っていた。
そもそも今日はみんなと楽しくお出かけして買い物をする。これが朝日の想像であり理想であった。
ところが現実は五月しか側にいない。しかもバリバリのスーツ姿で同行しているだけのお仕事モード。
深夜子と梅に至っては会話すらできない距離である。
そんな、気持ちが顔に表れていたのだろうか、出発直前にそっと五月が朝日の側へ寄ってきた。
「朝日様……やはり、ご不満ですか?」
「え……あっ、ご、ごめんなさい。僕、そんなつもりじゃ」
気持ちを見透かされてしまった気がして、朝日は恥ずかしさに少し顔を伏せた。
(おっふおっはああああっ! な、ななななんなのですの? この可愛らしくいじらしい生き物はッッ! いやいやいや素敵な殿方に対して生き物などと失礼な、ああ、いけませんわ。五月雨五月! ここはしっかり、しっかりしなくては)
そんなそぶりが見事に五月のハートキャッチ。荒ぶりそうな鼻息を強引に制御して冷静を装うため、しばし動きが止まってしまう五月であった。
「あの……五月さん。どうかしましたか、もしかして怒って――」
「おりませんわっ、まっっっったく、怒ってなどおりませんわ! ともかく、朝日様のお気持ちはわかりましたわ」
「え……あ、はい」
結局少々鼻息が荒い五月に気おされる朝日。だが、何か歩みよりは見せてくれそうな気配も感じる。
「――そそそそそそれでは、参りましょうか。ああああ朝日様」
「えーと、あのー、五月さん。どうして手をつないでいるんですか?」
困惑する朝日の左手を五月の右手が握っていた。
「そっ、それは、その朝日様のご要望に……お答えを……」
自ら手をつないだわりには顔を真っ赤にして挙動不審な五月だ。
「んーと、要、望?」
全員でいっしょに買い物をしたり、とは思ったが何か方向が違う。それでも不器用ながら自分に気を使ってくれているのはわかる。
ふと、昔を思い返せば一番上の姉と五月の姿が被る。そう言えば、よく姉はデートと称して自分をあちこちに引きずり回したものだ……そして、とある事も朝日は思い出した。
「あのっ、朝日様。けっ、けけけ決してやましいつもりなど無く……そう! そうですわっ、道にっ、この不確かな地で朝日様が道に迷わないように、と。私としましては――へっ」
手を離してあたふたとしている五月の右腕を、朝日がすばやく左腕で絡めとった。そのまま五月の手を取って、軽く指を交差させる。
「はいいっ!? あ、朝日様、こっ、こここれは?」
「そうですよね。せっかく、五月さんは僕の近くに居てくれるんですから。これくらいはいいですよね?」
まさかのカウンター。微笑みながら手をつないでくる美少年に五月、大混乱である。
「ふへ? いい? あああ? そう……よろしいですけれど――えっ? はっ!? あっ、あああ朝日様から……私に!?」
「昔、姉さんがよくこうしろって言ってたの思い出しました。ふふ」
そう、朝日の姉は自慢の美少年をこれ見よがしに連れまわし、手を繋いだり腕を組ませたりと中々の溺愛ぶりであった。
そんな背景など知る良しもない五月だが、懐古の念にかられた朝日は遠慮なし。先ほど軽く指を絡めた手をきゅっと握りしめる。俗にいう恋人繋ぎ完成である。五月さんやったね!
「ちょぉおおおおおっ!? そっ、そそそれは、朝日様の指と五月の指ががががが、か、絡みあって? はわあっ、手っ、暖かっ、柔らかっ……ちょっ、ちょっ、ちょ――――」
五月の目の前が真っ白になった。
先日のダメージが完全に抜けていないから? 否! 万全だったとしてもこれは無理だ。恐ろしいまでの多幸感に脳がしびれる。からめられた指、握りしめられた手、下半身の力がごっそりとそこに吸い取られていく。
「あふんっ」
その場でとろけるように五月は下半身から崩れていった。
「あっ、あれ知ってる。合気道の達人とかが良くやるヤツ」
「いやちげぇだろ!? それより朝日のヤツ何考えてんだ。あれじゃ警護もくそもねえぞ? つか、次回担当俺じゃねえかよ……耐えれる自信ねえぞ」
それを目の当たりにした深夜子と梅が思い思いの感想を口にする。
「ぐっ、それにしてもなんたるうらやま! なぜあたしは今日担当で無かったのか……」
「お前が決めた順番じゃねえか? って、お前あんな状態で警護できんのかよ?」
「三十秒なら耐えれる」
「意味ねえだろ? それ」
いまだに警護開始地点から1メートルすら移動できていない朝日様ご一行であった。