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異世界政治モノはいかが?  作者: 神野皇極
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第7話「精霊の力」

 結局、馬車妨害事件から、俺とソレイユは王のいる都市を目指すことになった。幸い、その日のうちに出発することができて、今は馬車の中だ。

「もしかして、私たちの旅の途中でも、同じようなこと、あるかな?」

「ああ、それはあり得るかもしれない。その時は、少しぐらい調べて回ってもいいだろうな。ただ危険もあるかもしれないから、用心しよう。」

場合によっては、俺も今度こそ戦わなくてはいけないかもな。

『グレイス、冷やす以外に何か能力はないのか。』

精霊とは脳内で会話可能だ。『』で表している。

『私だけの力ではありませんが、精霊全般が持っている力や性質について、まだ十分に話していませんね。実は、私たち、壁とかはすり抜けられます。それと、召喚士は私たちを操作することができます。あと、その時は、私たちの分の視覚と聴覚も使えます。』

『それ、個別の能力はなくとも、人間の世界じゃ十分強力だぞ。しかし、多分脳への負担が大きいのだろう?』

『そうですね。視覚と聴覚などは、操作中も召喚士自身のものは途切れる訳ではないので、2人分ですし、魔法としての負担もあるので、おそらくは…。』

やっぱりかよ。これ、使っているうちにレベルアップで扱いやすくなったりしないのかな。

 グレイスと会話中に、ソレイユが顔を覗き込んでくる。

「陽、考え事?」

「ああ、精霊と話をしていたんだ。」

「私もお話してみたいなぁ。」

「やっぱりそう思うか―。」

グレイスから『無理』と言われた。

「無理だってさ。」

「残念。じゃあ、どんな見た目なの?」

「うーん、西洋風の雪女ってところか。雪女って何かって?ああそうなるよね…雪女ってのは……文字通り、雪の中に現れる女だよ。」

「よくわからないな。」

何て説明すればいいんだろうか。異世界モノってこういうすれ違いはあって然るべきだが…。

「もっとイメージしやすくすると、氷の世界の女王みたいな。」

「なんとなくイメージできてきた。ありがとう。」

その純粋な感謝が俺の心には染みるんだよ。

「陽、陽、そういえば、まだ陽の世界のことで聞きたいことが…」

「ああ、すまない、俺、酔っちゃってみたいだ。」

「馬車酔い?」

「うん。俺の世界には自動車というものがあるんだが、それでも酔うんだけど、乗り物酔いしやすいみたいだ。悪いが、ちょっと寝させてくれ…。」

マジで気持ち悪い。かなり辛いが、ソレイユにあまり格好悪いところを見せたくないが、やむを得ない。

「私こそ、ごめんね。ちょっと大人しくしてるね。」


目が覚めた。ここはどこだろうか?町が見えてきているから、もうすぐ着くのだろう。

「あ、目を覚ました?もうすぐ町だよ。今日はここに泊まろうね。」

「ああ、お世話になります。」

 この町の宿屋に着いた。

「2部屋貸してください。」

「申し訳ありませんが、馬車妨害の影響で今日は宿泊者が多くて1部屋しか空いてません。」

どうするんだよこれ。まさか同じ部屋では寝たくない。色々不味いし、俺としても恥ずかしい。

「じゃあ1部屋だけでいいです。」

「……ぁ?」

ソレイユちゃん、衝撃発言だな。ああそうか、俺が他で寝ればいいか。

「さあ陽、行きましょう?」

「俺も行くのか?」

「当たり前でしょ?どこで寝るつもりだったの?部屋空いてるし、ベッドも2つあるらしいし、いいじゃない。」

この子とは認識や価値観の違いが大きそうだ。まあ、相手は俺とは別世界の人間、当たり前と言えば当たり前だ。でもまあ、前から思ってたし、一応言っておこう。

「そんなに無防備でいいのか?俺が襲い掛かるかもしれないぞ、色んな意味で。」

「だってそんなことする人じゃないって知ってるもん。」

「誰にでもその態度じゃないだろうな?」

あ、何か嫉妬心が見えるような台詞になってしまった。それはともかく、出会ったばかりだし、男女でなくとも国の後継ぎと一緒なんて、国柄によってはぶち殺されておかしくない。

「それとも陽の方こそ、期待してるのかな?」

「そんなことは…そもそも出会ったばかりだし。それより姫様、私はしっかりと護衛をしますので、どうぞお先に床にお付きください。いや、むしろ俺が先の方が安心か。」

そういう言い方は恥ずかしいけど、好みなんだよなぁ。後、下手な返事で傷つけたくない。何とか上手く誤魔化した。


 この国も上下水道はしっかりしていた。そして、風呂の文化があったらしい。ああ、もちろん一緒に入った訳ではないが、湯上りは見てしまった。うん…ダメでしょう。もちろん、何もなかった。まあ何回かからかわれたけれど。

「陽、よく眠れた?」

「いいや、あんまり。」

どうしてよく眠れたと思うんだコイツ。

「やっぱり私のせいだよね?私は陽がいたから、よく眠れたけど…。」

「この短期間で、俺の扱い方が上手くなったな!」

よく見てるなぁコイツ。そういう言い方に弱いんだって。

「陽の世界で言うと、『ツンデレ』って言うんでしょ?」

「デレないから違う。」


 朝の茶番は終わって、馬車に乗り込み、再び旅を再開する。しかし、何か不吉な予感がする。俺はやたら勘が良い方だ、特に悪いことには。

「きゃあ!目の前に岩が…それに道路も滅茶苦茶に。」

馬車妨害にあってしまったか。確かに、ちょうど後ろには貨物馬車もある。合ってもおかしくはないだろう。

 すると、すぐにソレイユが馬車から飛び出した。追いかける気のようだ。仕方ない、ついていこう。幸い、何故か見つかっていないようだ。


 ソレイユに追いつくと、如何にも「アジト」という雰囲気の洞窟に着いた。

「おい、待て。」

「え!なんだ陽か…。普段と声が違くて、見つかったのかと思っちゃった。」

ああ、普段は落ち着いた感じで話しているからな。余裕がないと声が高くなる癖があるし、分からんでもない。

「突入するつもりだろう?いきなり押しかけて、相手の立場を考えるに危険だ。そもそも、君は自衛はできるのか?」

「一応、国の後継ぎとして自衛用に武術は習ってるし、この魔法剣を使えば…!まあイヌ科の動物は苦手で、戦えなかったけど。そうでなければ!」

手に握った短剣に対して、長剣状にオーラのようなものが伸びている。原理は分からないが、それで戦えるということだろう。

「陽こそ戦えるの?」

「いや、正直魔法はまだ無理だな。サポートに回る。できるだけ戦闘は避けよう。だが待てよ、そもそも君はここで何を成し遂げたら勝利なんだ?」

「事件の真相…といったところかな。」

「じゃあ、メインで彼らを捕まえるのは、大人しく本職の人に任せた方が良さそうだけど。それに、こんな危険を冒さなくても、立場的に情報開示を求められるんじゃないのか?」

そうだよ、そもそも戦う理由が曖昧だ。ここをはっきりしなくちゃいけない。無意味に危険な目に合う必要はないんだ。それに戦うには大義名分が足らない。

「うん…多分、陽は純粋に心配してくれてるんだよね、ありがとう。でも分からない。自分の手で何とかしたいって思っちゃって。」

「漫画の主人公か君は。」

「どういう意味?」

「いや、気にするな。俺は好きじゃないってだけで、良いところとだと思う人もいるしな。」

考えなしに動くなよ。結局勝利条件よくわからないし。

 さて、やるか…。正直、あの時のバックファイアを考えると、かなり不安でしかないが、1人の少女の無謀さを少しはどうにかしたい。

「ちょっと待ってろ。とりあえず俺のまあ新能力的なもので、内部の構造を探る。動くならその後だ。」

「え、何それ?」

「精霊の力、らしいぞ。じゃあ行ってくる。」

そうして、俺はグレイスと視覚や聴覚をリンクさせて、アジトの内部を探り始める。

精霊魔法は基本的に、パワーよりは便利な感じで使えるものです。この先の能力も頭を使っていかないと活かせません。だからこそのこの主人公で、この主人公だからこそのこの能力です

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