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透と誘拐犯

過去編です。

心達がどのようにして、連れて来られたかが分かる話になります。

お楽しみ下さい。


心は記のお陰で人の心を見ることが出来るようになった。


1人だけの思考なら平静でいられたが、次第に人数が増えた。


人が増えるごとに思考も増えるので、誰の思考かわからなくなりパニックを起こす。


パニックになると、吐いてしまい倒れる。


倒れる間際、大人達の思考が聞こえた。


“またか。いまいちだな。”

“期待外れだな。”

“誰が片すと思ってるんだ。”

“このままでは、役立つこともないだろうな。”


誰も心の心配はしていない。

自分のこと、実験の結果のこと、それと利用価値があるのかということだけが伝わってきた。


心は自分の部屋で目覚めた。


昨日最後に見た人の思考は利用価値があるかということ。


私達は何をするのに使われるのだろう。


誘拐までされて、いいことに利用されるはずがない。


記と歪は知ってるんだろうな。


聞きたいけど、監視の目があり中々聞けない。


そうだわ、記の心を見ればいい。


監視と監視カメラの死角からなら、見れるはず。


記は聞いても話してはくれないだろうから、記にも見られないようにしないと。


心は数日、記を観察した。


基本、記は離れて見ていたけど、人がいる中にいる。


1人になるのは、自分の部屋か昼休みの少しの時間だけ。


心は昼ご飯を早々に切り上げて、多目的室で待っていた。


記は多目的室を通って中庭のベンチに座る。


その少しの時間がチャンスだった。


この時間は監視もいないし、監視カメラの死角も把握していた。


本を読むふりをして、記の見える場所に座った。


ごめんね、記。


少しだけ心を読ませてね。


心は記の心を読んだ。


記の心は落ち着いていたが、何処か暗い感じがした。


ああ、そうなのか。


心は酷く後悔した。


涙が溢れた。


心は自分の部屋へと戻り布団を被った。


自分の浅はかな行動を悔やんだ。


記は私達を守る為に大人達に協力してる。


全てを背負いこんで。


心は声を殺して泣いた。


一緒に生活していた子供がいなくなることがあった。


それは、記が協力してその子供の記憶を操作していた。


大人達は利用価値なしとみなした子供達を処分していた。


内臓売買なり、海外に売り飛ばすなりして。


記は知ってしまい、自分から協力すると持ちかけた。


自分なら記憶を操作出来るから外にばれる確率は減るだろうと大人達を言いくるめた。


記が、子供達の記憶を無くし、大人達は子供を外へ捨てていた。


少しでも、子供達が助かるようにしていた。


誰にも言わず1人で耐えていた。


歪とは意見の違いから衝突していたが、歪は違う形で協力しているようだった。


私は何も知らずにいた。


記のことも、歪のことも。


私に出来ることはあるだろうか。


記を助けたい。


記を自由にしてあげたい。


心は決心をした。


私に出来ることは人の心を読むこと。


この力をマスター出来れば、きっと大人達はもっと重要なことを任すだろう。


情報を掴んでやる。


1人なら心を読める。


複数が苦手なのは、自分の感情が押し負けるからだ。


これを克服しなければ、私も処分される。


この日から、心は積極的に大人達の言われるまま人の心を読んだ。


2人の心を読むよう言われた。


マジックミラーの前に座る男性が2人。


2人の顔は緊張し、強張っていた。


「心、はじめて。」


「はい。」


目をギュッと瞑り、精神を集中させて目を開いた。


2人の感情が心に流れてきた。


頭がズキズキ痛んだが、堪え1人に集中した。


“横領がばれたのか。ここに座るように言われたけど。どうなる?殺されるのか?”


左の男は横領をしたようだった。


心は右の男に集中した。


“ああ、もう誘拐などしたくない。ここの子供達には可哀想なことをした。親元から連れ去って組織に利用されるしか道がないなんて。”


えっ!?

この人が子供達を誘拐してるの?


心は右の男だけに集中して、出来るだけ心の奥を見ようと思った。


心の視界に男の視点で映像が見えた。


この男の過去の映像なのだろうか。


森の中のようだった。


『こんな山奥に能力を持った子供がいるんだな?』


何処かに電話をしていた。


『ああ、小さい集落があった。小学校からの帰りを狙うんだな。…わかった。』


男は車を路肩に止め、ターゲットがくるのを待った。


暫く待つとランドセルを背負った男の子が歩いてきた。


駄目!来ては駄目!

逃げて!


心は声にならない声で叫んだ。


男の子は車の側を通ったとき、男がドアを開け男の子を攫った。


男の子は薬を嗅がされ意識を失っていた。


男は電話をかけた。


『ターゲットを捕まえた。セナ ヤマト。間違いないな?透。』


心は頭痛が酷くなってきた。


限界だ。


「ハァハァ。」


「心、何が見えたの?」


「左の人は横領を。右の人は…誘拐を。」


大人達は一瞬固まったようだったが、次の瞬間口元が笑っていた。


「素晴らしい。」

「2人同時は初めてだ。」

「成功ね。」


大人達は心を褒めたが、心は意識を保つのがやっとで耳に入ってなかった。


部屋に戻り布団に入ると疲れからか眠ってしまった。


明日起きたら、透って人を知っているか記に聞いて見よう。


次の日、目が覚めた心は記を探した。


多目的室にも食堂にもいなかった。


記の部屋かな?


ちょうど廊下を歩く歪に会った。


「歪、記を見ていない?」


「さぁ、今日は見てないな。心、昨日はコントロール出来たらしいな。」


「えっ?何で知ってるの?」


「まぁ、聞いたからな。だから、一つ忠告しといてやる。見たことは人に言うな。誰にも。」


「…歪、何か知ってるの?」


「透が見てる。ばれたらお前は無事じゃない。」


「透って誰なの…。」


「忠告はしたぞ。言うなよ、誰にも。」

歪は何も答えず行ってしまった。


歪の目はいつになく真剣だった。


嘘ではないのだろう。


「透が見てる。」


心は記を探すのをやめ、部屋へと戻った。


暗い部屋の中、心は昨日見た誘拐した人の記憶を思い出していた。


“ターゲットを捕まえた。セナ ヤマト。間違いないな?透。”


どうして、ターゲットを見つけることが出来たのだろう。


歪は透が見てると言っていた。


なんて言うんだっけ?こういうの。


何とか眼…。


あっ!千里眼!


千里眼って何かの本で読んだことある。


透視能力、予知夢で未来の出来事がわかるって書いてあった。


透は千里眼の持ち主って考えていいはず。


記を自由にするのに、透が居たら出来ない。


歪は透を知っているみたいだった。


昨日見た人も電話で透と話していた。


透を見つけないと。


「心、昨日見た人をもう一度見て欲しいんだが。」


願ってもないチャンスだった。


「はい。」


心は大人達に連れられ、マジックミラーの部屋に通された。


子供達を誘拐した人と横領した人が座っていた。


「心、見たことは誰にも話してないね?」


「はい。」


「よろしい。昨日と同じように見るんだ。こっちの人は横領した金を何処に隠したか。こっちは何故我々の指示に従うのをやめたのか知りたい。」


「はい。やってみます。」


座り方は昨日と同じだった。


心は目を閉じて、深呼吸した。


心は再び目を開き心の中を見た。


感情の波が押し寄せてきた。


横領の人は昨日と同じ恐怖の感情が伝わってきた。


感情に飲まれては駄目。


そう自分に言い聞かせ、深呼吸した。


心は右の誘拐をしていた人に集中した。


昨日とは違い感情が落ち着いていた。


何だろう?


昨日感じた罪の意識はある。


けれど、荒ぶれるような感じはない。


心は少し頭が痛くなり、手で抑えた。


なるべく深く探ろう。


心はじっと誘拐犯の目を見た。


すると、心の意識ごと飲み込まれ誘拐犯の目線となった。


“ああ、今日で全てが終わる。もうたくさんだ。上に従うのも、透に先を見られることも。”


誘拐犯のイメージが頭に流れてきた。


親の教育が厳し過ぎるせいで反発するため不良となった。


最初は万引き等の軽犯罪だった。


何度か警察のお世話になる内、親が勘当し家を追い出された。


知り合いの勧めで、組織の末端となった。


最初は雑用だったのに、いつの間にか誘拐や人身売買までやらされるように。


組織に入ってからは透の言いなりだった。


透はよく言ってたっけ。


『私はあなたの最期まで知ってるの。あなたの道はこれでいいのよ。あってるのよ。』


あれは、俺がこうなるのを知っていたんだな。


俺の人生は最悪だな。


子供達には償いきれねぇけど、どうか無事に生きていけるよう祈るくらいは許されねぇかな。


数日前、透が会いにきた。


『もう、あなたはいいわ。今までご苦労様。あなたの最期、変わらなかった。さようなら。』


ああ、俺の人生は終わるんだということを悟った。


なら、もう何しても意味がないんだろうな。


組織に逆らおうが、子供達を逃がそうが自由だろ。


最期くらい俺の意志を持って死にたい。


心は意識を取り戻した。


全身汗が滲み、息も絶え絶えだった。


「どうだ?心、何かわかったか?」


「ハァハァ…、透…。」


「えっ?」


「…透に“もういい”と言われた。」


大人達の顔色は青ざめていた。


「あっ、あいつを牢に連れていけ!」


「心、他は?」


「ほか…?えっと…他は…。」


心は倒れ意識をなくした。



更新が遅れましたが、ここまでお読みくださりありがとうございます。

過去編は次回で終わる予定です。

また次回もよろしくお願いします。

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