歪と記
都市伝説のきさらぎ駅を参考にしました。
きさらぎ駅の話を読んだ時、電車に乗るのが恐くなったのを覚えています。
内容を知らない方は検索を。
では、お楽しみください。
洋は電車に揺られていた。
「あれ?いつの間に乗ったんだっけ?心と秀は?」
洋は辺りを見回す。
「乗り遅れたか?」
でも、おかしい。
乗客が俺以外いない。
風景も見たことない。
「ハッ!携帯!」
心にかけてみる。
繋がらない…。
と、いうかノイズのような音がするだけ。
恒興にも、本部にも繋がらない。
ブーッブーッとバイブが鳴った。
メールだった。
メールは繋がるのだと、ホッとした。
心からで
“洋さん、電車に乗ってます?電車の中、1人じゃないですか?”
“何でわかる?”
“都市伝説きさらぎ駅です。”
都市伝説 きさらぎ駅
ある女性が電車に乗る。
電車は自分1人で、いつもと違う風景なことに気がつく。
間違えたのだろうと、きさらぎ駅で降りる。
しかし、そこは山と草原が広がる無人駅。
携帯の電話は繋がらず、ネットだけができた。
何処からか、鈴の音と太鼓の音がする。
女性はネットに助けを求める。
ネットの住人はそんな駅が日本に存在しないことを突き止める。
時間のずれがあることも分かった。
助けを呼ぶ為、駅から出て人を探す。
段々と鈴の音と太鼓の音が近づいてくることに恐怖を感じながら、女性はネットに助けを求めた。
トンネルがあり、恐怖を我慢し、トンネルをくぐった。
トンネルの先で偶然通った車に乗せてもらうが、運転手の様子がおかしい。
隙を見て逃げ出すと最後の書き込みをして、女性は音信不通に。
「何だ、これ?」
“さっき電車がきたって言ってましたが、私には電車は見えませんでした。メールもいつまで出来るかわからないので、出来る限りの情報を送りますね。因みに時間にずれはありますか?今こっちは昼間の11時です。”
「時間は…夜の20時になってる。」
“車掌はいますか?”
洋は車掌のいる運転席まで行ったが、車掌はいなかった。
「アナウンスは流れるが、見当たらない。」
“きさらぎ駅に着いたら、駅から離れないで下さい。”
「トンネルの中をずっと走ってる。一体どうなるんだ?」
電車はトンネルの中を20分以上走っていた。
“落ち着いて下さい。なんとか戻れるよう調べますから。”
『きさらぎ駅、きさらぎ駅。』
嫌に低音なアナウンスが響き渡る。
電車のドアが開き、洋はホームへと降りた。
風が吹き身震いをした。
駅は無人駅で電灯がチカチカしていた。
外は夜になり、薄暗いホームで1人。
駅は寂れた感じで人の気配が全くしなかった。
電車はドアが閉まり、電車が動き出した。
「あぁ、行ってしまった…。」
“GPSで場所の特定できますか?”
洋は携帯のマップを開くがエラーが出るのみだった。
「エラーしかでない。」
“写真撮って、送って下さい。”
洋は駅全体が映るように携帯カメラを向けた。
パシャ。
「何だこれ?全体が赤くなってるだけで何も撮れてない。故障か?こんなときに。」
パシャ。パシャ。
何度撮り直しても同じだった。
“ただ赤くなるだけで、何が映ってるのかわかりませんね。GPSも駄目となると、異空間にいると考えていいかもしれません。”
「異空間?電車でか?」
“そうですよ。少しのきっかけで異空間に行くという都市伝説はいくつもあります。エレベーターだったり、神社だったり、ほんの些細な出来事で異空間と繋がるのです。時刻表はありますか?”
洋は掲示版に張り出されたいくつかの紙を見た。
「どれも字が読めなくなるまで朽ちてる。ボロボロだ。」
“では、電車が来ないのを確かめてから、線路に降りて下さい。変わったとこはないか調べて下さい。”
洋は心の言う通りに電車が来ないのを確認してから、線路へ降りた。
線路やホームの下にも特に異常はなかった。
「おい、線路に出ちゃ危ないぞ。」
誰かに話しかけられ、洋は後ろを振り向いた。
洋の数メートル先の線路に片足のない老人が立っていた。
顔までは距離があってわからないが、確かに話しかけたのはあの老人のようだった。
不気味だったが、1人よりマシだと思い駆け寄ろうとした瞬間、老人はゆらりとまるで煙りに巻かれたように消えた。
「ワァァァアア」
何なんだよ!
この世界!!
洋は無我夢中でホームを登り、改札を通り抜け走った。
何処からか太鼓の音と鈴の音が聞こえ、走ってるのに段々と近づいてきていた。
恐い!恐い!何なんだよ。
さっきまで普通の世界だったのに。
どれだけ走ったのかわからなかった。
喉が渇いた。
何か飲み物…。
パニックになっていて、訳が分からなくなっていたが、携帯がブーッブーッとなっていた。
心からのメールが何十件もきていた。
“洋さん、無事ですか?”
“今何処ですか?”
“何かありましたか?”
「すまん、恐い思いしてパニックになっていた。駅から離れてしまった。喉が渇いた。自動販売機探す。」
“駄目です。そっちの食べ物、飲み物を口にしたら戻れないとの情報がありました。口にしないで下さい。”
「嘘だろ。どうすれば、元に戻れるんだ?もうこんな世界たくさんだ!」
“駅まで戻れますか?何かを燃やすと戻れるらしいです。”
「何をだよ!そんな不確かな情報で駅に戻れるか!」
洋はイライラしていた。
目の前にはトンネルがあった。
電車は長いトンネルを抜けて、きさらぎ駅に着いた。
あのトンネルを抜ければ帰れるはず。
「トンネルがある。」
“トンネル?駄目です!行っては駄目!”
携帯の充電が切れかかっている。
後ろからは太鼓と鈴の音が近づいてきてる。
洋はトンネルを進むことにした。
トンネルは長いようで先が見えない。
思わず生唾を飲み込む。
疲れと空腹から正常な判断が出来ないのかもしれない。
心は駄目だと言うが、戻りたくはなかった。
洋はトンネルに一歩踏み入れた。
風が吹き、汗だくだった洋はどこか気持ち良ささえ感じた。
トンネルの中は薄暗く少し歩調を緩めるしかなかった。
どれくらい進んだのだろう。
時間の感覚が分からなく、10分経ったようにも感じるし、1時間のようにも感じる。
響き渡るのは自分の足音と、微かに鳴り響く太鼓と鈴の音だけ。
「ハァハァ。くそっ。まだ先が見えない。」
携帯はブーッブーッと鳴っていたが充電を持たせるため、電源を切ってしまっていた。
心は心配してるだろうか。
けど、体験してない人には分からないだろう。
この世界の異常に。
早くトンネルを抜け出したいその想いが洋を動かしていた。
振り向くとなにかいるのでは思えて、後ろを見ることはできなかった。
やっとトンネルの終わりが見えた。
洋は走りだした。
「ハァハァ、やっと外に出れる。」
トンネルを越えれば、元の世界へ戻れると思っていた。
トンネルの先はきさらぎ駅の周囲と変わらず、山と草原が広がっていた。
それでも、太鼓と鈴の音は聞こえてくる。
気がおかしくなりそうだ。
頭を抱え、道路にしゃがみ込んだ。
もう、駄目なんだな。
帰れない。
頭をよぎる考えに恐怖を覚え、身震いする。
せめて方角を確認しようと空を見上げようとすると、目がチカチカした。
車のライトだった。
「お〜い、助けてくれ!」
洋は手を大きく広げた。
車は止まってくれた。
人だ。良かった、これで助かる。
「どうした?大丈夫か?」
「きさらぎ駅から来た。道に迷って困っていた。最寄りの街まで乗せてくれないか?」
「ああ、いいぞ。隣に乗って。」
軽トラで農業をしてるような格好をしていた。
後ろにはシートが掛けられているが、野菜でも積んであるように盛り上がっていた。
「こんな夜更けに何事かと思ったよ。」
「助かったよ。何か太鼓と鈴の音が聞こえたけど、祭りかなんかか?」
人に会えた安心感から落ち着きを取り戻し、洋は息を整えて聞いた。
「ああ、今日は祭りの準備だよ。練習してたんだろ。」
ん?
祭りの準備?
あんなにずっと鳴っているものか?
洋は何かが引っかかった。
車の時計を見ると23時となっていた。
こんな時間に祭りの準備?
何か変だ。
車は山道へと進んでいた。
街だと思われる灯りとは逆方向だった。
「何処へ行くんだ?」
洋は急いで携帯の電源をつけた。
心からのメールがたまっていたが、それらを無視し、今の現状をメールした。
“今すぐ降りて!”
心からのメールを見て決心した。
この運転手も正気ではないと。
「止めてくれ!」
洋は叫んだ。
運転手の目は虚ろで何か念仏のようなものを唱えだした。
その顔は狂気に満ちたようにも見え、ゾッとした。
ドアを開けようにも開かない。
運転手を止めようにも、結構なスピードで山道を行く為カーブの度ドアや運転手にぶつかる。
どうしたらー。
その時、前から車が凄いスピードで迫ってきた。
洋はハンドルを山道の側溝に切った。
洋と運転手はエアバッグに守られ、運転手は気を失っていた。
洋は運転手を車の外へ運びだした。
突っ込んできた車は目の前で止まっていた。
「危ないだろ!」
洋は相手の運転手に詰め寄った。
運転手はドアを開け、近づいてきた。
「ん?ヨウか?お〜、久しぶりだな。何してんだ?ここで。」
車のライトで逆光となり顔はよく見えない。
赤いスポーツカーで音楽が鳴り響く。
「誰だ…?」
「はぁ?何を言って…。あぁ、記のせいか。」
「記?」
「まぁ、いいや。俺は歪。空間を歪めることが出来んだ。異世界と繋げることができる。ここは、狂気と恐怖の世界ってとこかな。いい体験出来ただろ?」
「お前…『switch』か!」
「そうだよ。ヨウ、お前も早く目覚めろよ。今回は貸しにしてやる。」
男の口元が笑う。
「目覚めるって何のことだ?」
「心に聞け。その内、また会うだろうし。じゃあな、ヨウ。」
男は車に乗り込み指を鳴らした。
「待て!」
ゴチっという音がして、頭に衝撃がかかった。
「痛っ。」
頭を抱えて心がうずくまっていた。
洋は額をさする。
秀が洋に飛びついた。
周りを見渡すと、元の世界の駅のホームのベンチにいた。
「良かった。目が覚めたんですね。おかえりなさい、洋さん。」
心は涙目をしながら、額を撫でていた。
どうやら洋の顔を覗き込んでいた心と起き上がった拍子に、頭をぶつけたようだった。
「ここは…、元の世界か?」
「そうですよ。良かったぁ。どうやって戻れたか覚えてます?」
「…歪って奴に会った。」
心の身体が一瞬ビクッとなる。
「歪ですか。洋さんが無事戻れたのが、分かりました。」
「あいつは一体…。いや、事務所に帰るか。」
「そうですね。ちょうど電車も来ましたし、事務所へ帰りましょうか。」
心は洋に手を差し伸べた。
電車のドアが開いた。
洋は腕を伸ばしたが躊躇した。
「あ〜…、悪い。…タクシーでもいいか?」
心と秀は一瞬目を丸くしてから、心は洋の手を取った。
「そうですね。タクシーで帰りましょ。」
電車のドアは閉まり、走り出した。
ここまでお読み下さりありがとうございます。
ホラー回ではありましたが、私にホラーは難しいなと思いました。
次の話は心の過去編の予定です。
感想など頂けたら嬉しいです。
では、また次回をよろしくお願いします。