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やりたい事をやる為に … 序章   作者: 千月 景葉
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29. 彼女の花

お読み下さりありがとうございます。


後少しで雅の記憶編が終わります。


多くても2話です。


花が判明します。


克真が落ち着き、親達や他の子供達も雅との対面をする。


克真ほど覚悟していなかった子供達は最初怖がっていたが、無理をするなと言われると何故かむきになり、雅との対面を望んだ。


実際に対面すると若い綺麗なお姉さんの寝顔にしか見えないのか、見とれる者まで出る始末。


親達に言われてしぶしぶ下がった。


元来子供とは好奇心が旺盛なものである。


克真は自分以外の子供達や親達が雅と対面している間、乃理子に手を握られ脇に控えていた。


両親が対面する間だけではあるが、何故か乃理子も克真の手を離すのが名残惜しく、克真もされるがまま大人しく従っていた。


克真が乃理子を見上げて、聞きたいことがあると彼女に言った。


「まあ、何かしら?」

乃理子が気軽に応じる。


「雅お姉ちゃんは何故あんなに良い匂いがするの?」

克真は不思議なようだ。


すると乃理子がニッコリ笑って克真に話した。

「そうね、来てくれる?後から貴方達の手からも、雅の棺に入れてもらおうと思って幾らか置いてあるの。」


克真をつれて控え室前のスペースに行く。


何故か更に匂いが強くなる。


「これの香りよ。綺麗でしょ?…雅が大好きな花なの。」


「ホントだ!この花だったんだね。雅お姉ちゃんの周りにも入ってた花だ…。何て言う花なの?」


「フリージアって言うのよ。特に黄色のフリージアが雅は好きなのよ。」


フリージア。別名 浅黄水仙。


春先から咲き始める花である。


黄色以外だと白や赤等もあるが、特に黄色と白が香り高い。


「何故お姉ちゃんはこの花が好きなの?」


克真がフリージアを見つめながら乃理子に聞く。


「…誕生花っていうものがあるの。誕生日ごとに花が決められているんだけど、雅の誕生花が黄色のフリージアなのよ。だから小さな頃からあの子には雅のお花ねって話していたのよ。香りも良いから、あの子はこの花がお気に入りになってね。確か香水もフリージアの香りのものを探して着けていたくらいよ。」


乃理子は克真に優しく聞かせた。


「その匂いだったんだね…。雅お姉ちゃんって誕生日いつなの?」


乃理子が答えようとしたとき、克真の両親が彼を呼んだ。


答えを聞けぬまま、乃理子と共に祭壇前に戻る。


両親が乃理子に礼を言い、子供達と親達は参列者の末席に座らせて貰って、葬儀の時間まで待つ。


もうすぐ葬儀が始まるのだ。


雅の家族達も忙しくし始め、上條や佐奈も克真達と同じく参列者席にやって来た。


親達が立ち上がり上條に挨拶し、改めて救助に対する礼を言う。

子供達も立ち上がり同じ様に礼を言う。


上條が恐縮し、お互いに席に又座った。


やがて僧侶が到着し、祭壇の前に座る。


親族達も皆親族席に座った。


斎場の手配した葬儀の司会者が葬儀の開始を告げる。


13時。


僧侶の読経が始まった。




皆が静かに着席し、僧侶の読経だけが響く中。


祭壇横で、フワフワと浮きながら参列者を見守る者が居た。


一人は白髪で長髪、長い白髭の老人とおぼしき者。

曰く“仙人”。


もう一人はクリームイエローのドレスを身に纏った若く美しい女性。

この葬儀の主人公(?)とも云うべき立場の雅である。


『…始まったの。』


(はい。…自分でももっと取り乱すかと思いましたけど、何だか今穏やかな気持ちで見ていられるんですよ。不思議ですね。)


仙人と雅が葬儀を眺めながら、そんな会話を交わす。


たった3日間の出来事だ。


なのに余りにも多くの事が有りすぎて、とてもそんな短期間の事とは思えない。


3日前なら考えもしなかったことが次々と起き、自身は死んでしまい、あろうことか魂すらも別世界に行くことになった。


僅か3日前からの付き合いになる克真、もう少し前からの知り合いだがホントは克真とほぼ変わらない付き合いの上條。


この二人は特に別れを悲しんでくれて、雅自身にとっても特別な知り合いとなった。


特に克真。


何故だろう。


気にかけるなら上條の筈なのに、克真の方が雅には気にかかる。


年の離れた友人、又は弟のように、或いは持ったことは無いが、雅の子供の様にも思えた克真。


羽海乃の家族も克真をとても気にかけてくれているようだ。


もう会えなくなるのがとても辛い。


上條にはいずれ忘れてくれと雅から言った。

結婚適齢期の上條にはこの事を引きずってもらいたくないから。


上條を好きなのは本当だ。

ただこの気持ちが今以上育つことは無いだろう。

上條には雅よりお似合いの人がきっと居ると信じている。


つまりは、上條とはそういう縁だったのだろう。

それで良いと雅は思う。


だが、克真は違った。


寧ろ雅自身から関係を断ち切りたく無くて、夢枕であんなことを克真に課した。


克真の事を思えば、きちんと離れる方が正解だった筈。

ある意味重荷を背負わせたかも知れないのだ。


でも、どうしても出来なかった。


克真が強く賢い子だから?


雅には少年愛のような性癖は無いし、キッパリノーマルだと自分で確信している。


なのに克真だけは雅の気持ちを波立たせる。

見守ってあげたいと強く感じるのだ。


…今となっては、叶う筈もない願いだが。


『小僧が気になるようじゃな。』


(…勝手に気持ちを読み取っちゃいけません、仙人様。)


『図星か。…あまり入れ込むのも辛いぞ?』


(はい。…何でですかね。出会いが強烈過ぎたのでしょうか。…話したのもごく僅かな時間だし、カッちゃんはアタシの顔だってうろ覚えな位なのに。あの子のこれからが気になるんです…。)


雅は参列者席の克真を優しい目で見つめる。


仙人が雅の様子を見ながら、話す。


『命を賭けて助けた小僧じゃ。無理もあるまい。…それに小僧も、其方への思い入れが強いと思う。他の小僧とは全く違うたからの。…ま、理由はあるにはあるんじゃが。』


雅は仙人を見て問う。


(理由…?何のですか?)


『知らんでも良いと思うぞ。…ただ、小僧自身の魂の強さも驚くもんがあるんじゃ。其方も強いが、全く異なる強さじゃ。其方の強さは包み込むようでしなやかな優しい強さ。小僧のは…全く違う。他を寄せ付けず蹴散らし、又従える荒々しい強さよな。ワシも小僧が気になるのは気になるんじゃがな。』


(へえ…。よく分かんないけど、カッちゃんスゴいんですね。何か嬉しいな。)


仙人は目を閉じ、何か考え込んでいる様子だったが

『…ま、今から考えてもどうなるもんでもないわな。』と呟いた。


若干その様子が気になった雅だが、敢えて問うことはやめた。


必要ならば教えてくれただろうし、必要でなければ聞くのは野暮というものだ。


気が付くと読経が終わっており、皆焼香をしていた。


子供達も焼香をしていたがおっかなびっくりで、見ていて思わず笑ってしまう。


特に合掌の際、あろうことか柏手(かしわで)を打とうとする子も居て、監視役の親達に(すん)でで止められていた。


(皆、良い子達ばかりです。カッちゃんだけでなく、皆健やかに育ってほしいですね…。残念だな…見れないのが。)


雅の目に微かに光るものが浮かぶ。


『…心配せずともあの小僧等は逞しく育つじゃろ。見守るは諦めるしかないがの。』


仙人が雅を見ず、淡々と答えた。


クスッと笑って雅が認める。


(ですよね。心配要らないかぁ。)


そうだ。


もう、アタシが居なくなっても大丈夫。


アタシがこの世界を去っても、又皆日々を過ごしていく。


いずれ時が皆の悲しみを癒してくれる。


止まない雨は無いっていうもの。


そうやって全ては思い出となるのだ。


だから…心配は要らない。


雅は一人自分に言い聞かせていた。




やがて葬儀が終わった。


棺が祭壇から動かされ別れを悲しむ人達によって、棺の中に花が手向けられていく。


火葬場に付き添えない人達も居るため、最後の別れになる人もいる。


哀しいかな、母の乃理子もここで最後の別れをしなければならない。


全ての宗派ではないかも知れないが、不幸にも子が先に逝ってしまうと、荼毘に付す火葬場に母は行ってはならないという仏教上の風習があるそうだ。


親より先に死ぬのは、最大の親不孝だという考えから来るものらしい。


実際は自らが産んだ子を荼毘に付すというのは、母にとってとても耐えられるものではないという配慮からだと聞く。


どちらにしろ、母の乃理子にとっては身を裂かれるより辛い。


棺に寄りかかり、声も出せず泣き続ける。


家族の他の者や親族は皆火葬場に行き、荼毘に付き添うのに。


母の自分が娘の最期に付き添えないとは。


余りにも辛い。


そんな哀れな乃理子の元に克真が近付く。


手には綾から差し出されたフリージア。


克真が声をかける。


「乃理子おばさん…。これ、雅お姉ちゃんに一緒にあげよう…?」


乃理子はピクッと肩を震わせて克真を見る。


「カッちゃん?…出来ない…雅を離したくないわ…。アタシもこの子と…。」


「おばさん、それを言っちゃダメだよ…。おじさん達がいない間は俺がおばさんと一緒に居るからさ。フリージア、雅お姉ちゃんにあげるんだよね?おばさんが俺に教えてくれたんだよ…?」


乃理子の目を見てフリージアを差し出す。


克真を見てホロホロ涙を溢しながらも乃理子は立ち上がり、唇を噛み締めてフリージアを受け取る。


克真が乃理子に寄り添い、共にフリージアを持ち雅の棺の中に手向ける。


「雅お姉ちゃん、聡お兄さん達がお姉ちゃんを送る時、乃理子おばさんには俺がついてるからね。心配しないで。…俺も行きたいけど、おばさん残して行けないから。」


乃理子は克真を見て、又涙を溢す。


「雅…どうか、どうか…貴女が安らかに逝けます様に。あたしにはカッちゃんが居てくれるから、耐えれるわよね…?付き添えないあたしを許してね、雅…。」


周りが見守るなか、棺の中に娘に語りかける母。




雅の本当の最後の別れがもう、そこまで来ていた。










勝手にキャラクターが走ると言うのを

今回初めて体験?しました。


克真くん、こんな筈では無かったんだけどな。


荼毘の間、乃理子母の付き添いになりました。


びっくり。書き直してもこうなりました。


最初の設定とは違います。


調整しなくちゃ。

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