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やりたい事をやる為に … 序章   作者: 千月 景葉
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27. 親族達

お読みくださりありがとうございます。


27話目です。


親族大集合?ってとこでしょうか。


その頃身支度を整えた斎場の家族の元に、遠方の親族達が駆けつけ始めた。


雅の従姉妹達も綾の元に走り寄る。


「綾姉!みやちゃんは、みやちゃんは!」


愛美(まなみ)ちゃん…来てくれたんだね。優菜(ゆうな)ちゃんも。ありがとう。」


「ごめん、ごめんね!どうしても今日しか来れなくて。みやちゃんは?みやちゃんに会わせて!」


従姉妹のこの二人は綾と雅と歳が近く、小さな頃は父の慶市の実家でよく遊んだのである。


留学したり就職したりで近年はあまり会うことも無かったが、機会が有れば昔のように直ぐに話が弾む、気のおけない親族だ。


今は二人とも就職しており、離れた地で生活しているので中々駆けつける事も難しかったろう。


ましてや親兄弟でなく従姉妹の雅の葬儀であれば、厳しい企業や公的機関なら忌引は1日のところが多い。


二人は若く、上司や同僚に無理を言うのも苦しいところだ。


なのに何とかして雅に別れを告げようと駆けつけてくれた二人には感謝しかない。


綾は二人を労い、雅の棺に案内する。


「みやちゃん…!なんで、こんな…!」

「やだ…やだよぉ…!みやちゃん…!」


後は言葉にならない。


棺に覆い被さるように泣く愛美と、その傍らで両手で顔を覆い座り込んで泣く優菜。


綾も唇を噛みしめ、顔を逸らす。


そんな綾の後ろから、又一人従兄が声を掛けた。


綾より2つ年上の宗隆である。


「綾ちゃん大変だったな…。後から宏樹達も来るって連絡あったよ。みやちゃんに会っても構わないか…?」


「来てくれてありがとう、宗兄。会ってやって。」


棺にくっついて泣いていた愛美に声を掛け、雅の顔を見る宗隆。


「…!みやちゃん…!早すぎるだろ…こんな…。」


声をあげて泣く事も出来ない宗隆は

「…すまん、ちょっと外す…!」と言い残し

斎場の隅に顔を伏せてもたれた。


皆、若すぎる死を目の当たりにしてしまうと言葉を無くす。


棺の中の雅が生前と変わらない様子なので、尚更何故という気持ちになるのは無理もない。


突然の別れを素直に受け入れられる者など居はしないのだ。


綾は親族が来る度に雅の棺に案内する。


このくらいしかもう雅の為にしてやれる事がないという、やるせない思いに心が塞ぐ。


そんな自らの気持ちを宥め、悲しむ親族を労い、来て貰ったことに礼を言う。


そうしているうち、愛美が綾に話し掛けてきた。


「綾姉…近くに花屋さんってあるかな…。」


「花…?どうして?」


綾が愛美の急な質問に戸惑う。


「ん…。ちょっと買いたい花があるの。…みやちゃんの花。」


綾は愛美の言葉を聞き、彼女の気持ちを直ぐに悟った。


「愛美ちゃん!ありがとう…!アタシそんなこと全く思い付かなかった!そう、そうよね…。未だあった、あの子の為に出来る事。」


愛美に礼を言い、慶市と乃理子に直ぐ様話をしにいく綾。


乃理子が話を聞き、涙を見せる。

直ぐに頷き、綾にその花を用意してくれるよう頼む。


綾は愛美や優菜、従兄の宗隆と後からやって来た従弟の宏樹にも声を掛け、近隣の花屋を調べ、運転役の宗隆と宏樹に車を出してもらう。


宏樹は愛美と優菜を、宗隆は綾を乗せて二手に別れ、近隣の花屋を()の花が見つかるまで、しらみつぶしに当たる手筈だ。


確かにこの時期この花は少な目であるが、けして流通していない訳ではない。


だが事前に予約していなかったので、今すぐ確保できるかは微妙なところだ。


薔薇やガーベラ、百合のように、主役となれる花とは趣が異なる。


だが、かすみ草程奥ゆかしい控えめな花でもない。


可愛くて香り高い、だが出過ぎない雅のような花。


「有って頂戴…。お願い…!」


綾は祈る。


妹の旅立ちにせめてもの手向(たむ)けをと。


あの子と(えにし)深いあの花をどうか共に。


祈る綾を乗せて、やがて宗隆の車は一店目の花屋に着いた。


「…!嘘。この時期にこんなにあるものなの?!」


綾は驚いた。


探す花が大量に飾られていたのだ。


店のなかはその花の芳香に包まれている。


その花は何色か種類があるのだが、その店に有ったのは綾が探していた色の花であった。


綾は慌てて店員に尋ねる。


「あの!この花を売っていただけますか?」


店員がニッコリ笑い、嬉しそうに話す。


「いらっしゃいませ!こちらですね?どの位お包みすればよろしいですか?」


「出来れば有るだけ…。無理でしょうか?」


店員は一瞬驚いた表情を見せたが、直ぐに悟ったように頷く。


「分かりました。大丈夫ですよ。直ぐに御用意させていただきます。暫くお待ちくださいませ。」


店員が陳列していたその花を全て作業台に持っていく。


作業を見守る綾に店員が微笑みながら話をする。


「実は…この花手違いで大量に仕入れてしまったんです。」


「え?手違い?」


聞き返す綾に店員が自嘲気味に話す。


「はい。普段ならそんなこと起こらないんですよ。なのに今日市場から戻って荷台を見たらこの花が大量に有って。間違えて他の店の分がウチに来たのかと発注票見たら、ちゃんと発注したことになってて。狐につままれたみたいで…。」


「そんなこと…。有るんですね…。」


綾が驚いたまま、何とか声を出す。


「…でも、分かりましたよ…。お客様の為だったんですね。…ウチの店、たまに有るんです。仕入れた記憶が無い花が手に入ると、その花を求めてお客様が来られるんです。あまり売れ残る事がないんです、このパターンは。」


作業を進めつつ、店員が又微笑む。


「旅立ちに手向けられる花なのですね…。どうか少しでも心が慰められますよう、私共も祈らせていただきますね…。」


店員の心からの言葉に、言葉を失った綾は目頭をハンカチで押さえる。


宗隆が綾の肩を叩き、代わりに店員に謝辞を述べた。


「ありがとうございます。急だったので、間に合うかどうか私共も気を揉んでいたのです。こちらのお店に来られて良かった…。本当に感謝いたします。」


宗隆が頭を下げた。


「とんでもない!どうかその様な事お止めください。私共こそ御要望にお答えできて、安堵致しました。お役に立ててよろしゅうございました。…さあ、お待たせ致しました。どうぞこちらをお持ちください。」


店員が綾にそっと花を差し出す。


綾がしっかりと花を受け取り、目を潤ませながら花を見て

「良かった…。有ったわよ雅…!」

と花に頬を寄せる。


二人は店員に支払いを済ませた後もう一度礼を述べ、店を後にする。


バックミラーを見ると、店員が深々とお辞儀をして見送ってくれていた。


「不思議なことってあるもんだな…。まるでみやちゃんの為に用意されていたみたいな…。」


運転している宗隆がボソッと呟く。


「そうね…。でも、きっとそうなんだわ。あの子の花なんだもの。きっとそう…。」


後部座席にそっと置かれた花束を見て、綾は優しく笑った。


他の店を廻ること無く、斎場に戻る。


綾と宗隆の姿を見て、一足先に戻っていた愛美と優菜が走り寄ってきた。


「綾姉!聞いて!花がね、花がいっぱい置いてあったの!沢山買えたんだよ、凄いでしょ…て、あれ?綾姉達もそんなにいっぱい買えたの?!」


愛美と優菜が綾の手元の大きな花束を見て、思わず言う。


綾が店での不思議な顛末を二人に話す。


愛美と優菜が顔を見合わせ、驚きに目を丸くする。


「…嘘、全く同じだよ…。アタシ達も行ったお店で同じこと言われた…!この時期は本来少ないんですけどね、って…。こんな事あるの…?」


綾も驚いたが、やがて笑って二人に言った。


「きっと雅の仕業よ?あの子、この花がどうしても見たかったのね…。アタシ達を使って用意させたのよ、きっと。」


綾の言葉に二人も思わず笑ってしまう。


「有り得る~!だってみやちゃん、何かぼおっとしてるっぽいのに、意外と物頼むの上手いんだよね!そっかぁ、そうよね綾姉!」


三人は顔を見合わせてひとしきり笑った後、斎場の中に入っていく。


葬儀は13時から。


後3時間を切った。


早めの昼食をと、仕出しの弁当が運ばれてきた。


皆交代で食事を取っていく。


そんな中、斎場の入口に若い男女の姿が見えた。


雅の先輩上條と同僚の永峯佐奈である。


その姿を慶市が見て近寄る。


「上條君、連日で申し訳ない。よく来てくれたね。そちらの女性は?」


上條が話し出すより速く、佐奈が深々とお辞儀をしながら挨拶をする。


「初めまして。永峯佐奈と申します。ご連絡もせず、突然参りましたこと申し訳ありません。…雅さんとは会社で仲良くさせて頂いてました。どうしても、どうしても最後に一目雅さんに会ってお別れをさせて頂きたくて…!上條先輩に無理を言って連れてきて貰ったんです…。お願いです、雅さんに会わせてください!どうかお願いします…!」


お辞儀をしたまま顔をあげずに挨拶とお詫びを述べた後、佐奈はそのままでいた。


とても後が続かない。


床にポタッポタッと、佐奈の瞳から溢れ出す涙が落ちる。


「そうでしたか…。私達家族の都合で家族葬にしてしまい、雅の友人の方達には辛い思いをさせてしまいました…。こちらこそ申し訳ありません。永峯さん、でしたね。さあどうぞ中に入って雅に会ってやってください。」


佐奈は涙に濡れた顔をあげ、慶市に改めて礼を言う。


「ありがとう、ございます…!」


二人は案内されるまま雅の棺に近付き、やがて慶市が棺の扉を開ける。


「雅!…いやあ!…みやび、みやびー!」


佐奈が倒れ込むように棺にしがみつく。


「なんで!…目開けてよ!…いやあ!」


佐奈の声が斎場に響く。

悲鳴混じりの泣き声が止まらない。


慶市も辛そうな表情で佐奈を見ている。


暫くして上條が佐奈に声を掛ける。


「永峯さん、このまま羽海乃にしがみついて泣いていては家族の方に迷惑をかけてしまう。さあ、立って…?」


「いや…お願い…雅と居させて…。こんなの…こんなのって…!」


離れようとしない佐奈に、綾達が近付く。


「雅のお友達ね?初めまして、姉の綾です。」


「…雅の…お姉さん、ですか…?」


泣き濡れた顔をあげて綾を見る佐奈に、優しく微笑んで頷く綾。


「こっちに来て?あの子の従姉妹達も居るの。女同士、雅の思い出話をしましょ?会社でのあの子の話を聞きたいわ…。ね、良いかしら…?」


綾の言葉にしがみついていた棺から漸く離れ、佐奈はフラフラと立ち上がる。


綾に近寄り、肩を抱かれつつ控え室に行く佐奈。


慶市と上條はその後ろ姿を見つつ、ホッとため息を洩らす。


「女性は女性同士ってことかね?上條君。」


「はい…。正直どうしようと思いましたから、助かりました…。」


「では男は男同士かな。あっちで皆固まってるから、君も来なさい。」


「ありがとうございます。是非。…その前に雅さんに会わせてもらって良いですか?」


「ああ、構わないよ。」


上條は棺の中の雅にそっと話す。


「…約束通り、朝すぐに永峯さんに伝えたんだよ。そしたらそんなの許さない!って電話で泣かれて…。結局ここに連れてきてしまったよ。君が一言伝えてくれって言った理由がわかるよ。ホントは彼女に会いたかったんだろ?雅…。」


上條の話す中身に慶市が聞き返す。


「上條君、約束とは…?」


ばつの悪そうな苦笑を湛え、上條が慶市に昨夜の夢枕の話をする。


「とても信じて貰えないとは思いますが…。どうしても俺には本当に彼女が会いに来てくれたとしか思えないんですよ。」


優しく雅を見つめる上條を慶市は驚いて見ていたが、やがて頷き上條に笑って言った。


「会いに行ったんだよ、君に。…実は私達家族も昨日同じ体験をしたんだよ、上條君。」


上條が驚いて、慶市を見る。


慶市は再度頷き、斎場の入口にいる聡を見る。


「私達も雅とした約束があってね…。聡はその約束の為にあそこで待っているんだよ。…もうそろそろ来る頃合いだがな…。」


やがて斎場の入口に大人の男女二人づつと、小学校低学年位の男の子が四人現れた。


克真達である。


さて、次はヤンチャ連合です。


先に出ていたカッちゃん&タケに、まだ名無しの二人の子供もくっついて来ました。


花の名前は次に出てきます。わりかしポピュラーな花です。


次話は明日か明後日投稿します。

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