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やりたい事をやる為に … 序章   作者: 千月 景葉
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19. 夢枕・家族へ 1

お読み下さりありがとうございます。


19話目です。


女性はしつこく強いです。


夢枕・家族へ 1になりました。


おまけに長いです。


(えへへ、皆びっくりした?)


雅は生前の姿そのままに家族の前にたっていた。


クリームイエローのドレスを纏ってにこやかに、しかしどこかばつの悪そうな笑みを湛えて皆の前に立つ雅。


まず最初に動いたのは綾だった。


(え、雅…?アンタ、アンタ生きてたの?!)


雅に走り寄り抱きつく綾。


(雅!貴女本当に雅ね?!)


乃理子も走り寄り抱きつき、雅の体のあちこちを触って気遣う。


(ああ、本当に雅だわ…。どうして死んだなんて…。ちゃんと居るじゃない。嘘じゃないわ、触れる本物の貴女ね!)


泣き笑いの表情で雅にしがみつく乃理子。


(悪い夢を見ていたんだわ…。貴女が溺れたなんて言われて病院へ行ったら、貴女が治療されてて…。でも間に合わなくて。ああ思い出すのもイヤだわ!母親なのにひどい話よね。ごめんね、雅!)


乃理子は頭を振ると、嬉しそうに雅に話す。


ゆきほがフラフラと歩き寄る。


(雅なの?雅なんだね?)


(ええ、お義母さん。イヤね、皆で悪い夢を見てたのね。雅はしっかりここに居ましたよ!ほら、ちゃんと温かい!)


乃理子はゆきほに近寄り、雅の手をゆきほに握らせる。


(おばあちゃん、アタシだよ。)


(ああ本当に…。雅の手だ…。あの子の手だ。おばあちゃん、雅に置いていかれてどうしようって…。代わってやりたいって。)


雅の手を握りしめ、その温かさに涙するゆきほ。


乃理子が振り返り、慶市と聡に呼び掛ける。


(あなた、聡!雅はちゃんと生きてましたよ!家族全員でなんでこんな勘違いをしてしまったんでしょうね?さあ皆で家に帰ってご飯にしましょう。雅の好きなものいっぱい作らなきゃね!)


乃理子は不自然にも思えるほどはしゃいでいる。


綾は雅に抱きついたまま、顔を雅の肩に伏せて動かない。


ゆきほは雅の手を握り締め、おでこを雅の手にくっつけ咽び泣いている。


やがて慶市がゆっくりと歩み寄って来た。


(雅…。心配をさせたんだな。すまない。お前はどこまでも優しい子だな…。)


慶市は雅を見つめ、自嘲げに笑いながらそう言った。


(父さん…。アタシ…。ごめんなさい。)


(あなた?雅…?)

乃理子は雅から手を離さないまま、慶市と雅を見比べる。


(雅姉ちゃん…ごめん、俺があの人に八つ当たりしたからだよな。カッコわりいな、俺。)

聡が頭をかきながら、決まり悪げに雅に苦笑する。


(聡?一体何を言っているの…?)


乃理子は聡に不安な表情で問いかける。


(…乃理子。雅は死んだんだよ。…私達が心配で、家族皆の夢に出てきてくれたんだな…そうだろう?雅。)


乃理子に切なげに話す慶市に、聡も頷き同意する。


(雅姉ちゃん、あのドレス着てるもんな…。死んでからずっと俺達の近くで居てくれてたんだろ?だから棺の中の姉ちゃんの姿、そのまんまなんだろ?……俺、ホントにカッコ悪すぎだわ。)


聡が慶市に続いて、雅が既に死んでいると話すと乃理子が首を降る。


(バカな事言わないで、聡!慶市さん、あなたもひどいわ。雅はちゃんとここに居るじゃないですか!温かいし、触れるわ。母親ですもの、娘が本物かどうか位わかります。変なことを雅に言わないでくださいな。)


乃理子が憤慨して二人に言い放つと、雅に向かって優しく笑いながら話す。


(雅、ごめんなさいね?皆どうかしてたのよ、きっと。雅からも二人に言ってあげて?ちゃんと帰ってきたって。元気なのよって。ね、雅?)


乃理子が雅を優しく見つめながら頼むと、雅は一瞬顔を歪ませて目を伏せた。


(雅?…どうしたの?気を悪くしちゃった…?)


乃理子は雅の様子に慌てる。


やがて雅は目を開けてクッと顎をあげると、乃理子に優しく微笑みながら言った。


(父さんと聡の言う通りなんだよ、母さん。ごめんなさい、アタシはもう…死んでしまっているの。)


(雅!冗談言わないで!もうたくさんよ、貴女が死んだなんて…からかうのは止めて!)


乃理子が顔を強張らせて、雅の腕をきつく掴む。


その母の手を止めること無く、雅は静かに乃理子に語り掛ける。


(ありがとう、母さん。本当に冗談にしたかったよ…。ごめんね、一番の親不孝をしてしまったんだよね、アタシ…。でも、嘘はつけないよ。…アタシはもう死んでるの…。勘違いなんかじゃない。本当の事なんだよ…。ごめんなさい、母さん。)


雅の肩に顔を伏せたままの綾がピクリと反応する。


乃理子は雅の顔を見つめたまま、唇を震わせて懇願する。


(だって貴女に触れるわ。ほら、温かいし。死んだなんて言っちゃ駄目。全て間違っていたのよ。貴方はここに、皆の前に居るじゃない!お願いよ雅。母さんもう耐えられないの…。)


幼子のように首を振り続け、雅の死を否定する乃理子はやがて言葉を切り、涙を溢れさせ雅にしがみつく。


(嫌、嫌よ。貴女が居なくなるなんて。母さんを置いて先に逝ってしまうなんて、そんなひどい事しないで戻ってきて!母さんを置いて逝かないで…!)


乃理子が声をあげて泣き始める。


ゆきほは乃理子が声をあげて泣き続ける中、雅に問いかける。


(雅、本当に死んでしまったのかい?温かいこの手は、雅じゃないのかい?おばあちゃんが代わってあげられないのかい?孫娘が年寄りより先に逝ってしまうなんて、そんなひどい話はないよ。おばあちゃんが雅と代わってやるから、雅は戻っておいで?)


雅の手を優しく擦り、雅に話すゆきほ。

穏やかに雅に話すゆきほは、いつも通りの優しい祖母だ。


雅はゆきほに微笑むと首を振った。


(おばあちゃんが代わるなんて駄目だよ。大好きなおばあちゃんにそんなこと言わせるなんて、アタシは悪い孫だよね。…アタシの分まで長生きしてもらわなきゃ、おばあちゃんには!)


そう言って笑う雅に、ゆきほは顔を歪めて怒る。


(アンタが先に逝っちゃうのに、何言ってんの。年寄りが先に逝くのは当たり前じゃないか。アンタは慶市や乃理子さんと未だ居なきゃ駄目でしょうが。ホントに代われないのかい、雅?…孫までアタシを置いて逝っちゃうなんてね。)


ゆきほは肩を落として、下を向く。


(ホントにごめんね、おばあちゃん…。)


雅はゆきほから手を離してもらうと、ゆきほの腕を擦り詫びた。


(お姉ちゃん…。)


雅は肩に顔を伏せたままの綾に声を掛ける。


(逝かせない。)


(お姉ちゃん?)


肩から顔をあげた綾は、涙でグシャグシャになった目を雅に向けた。

その目は血走って、怒りにも似た感情を湛えて雅を睨む。


(離さない。アタシ達を残して逝くのは絶対に許さない。雅はここに居るのよ。逝かせないんだから…!)


(お姉ちゃん…。)


(アンタが死んで…皆どれだけ悲しんだかわかる?父さんも母さんもおばあちゃんも聡も…!アタシだってそうよ!ずっと一緒だったのよ…。アンタが生まれてからずっと。何で死んだりしたの!何で先に逝っちゃうの!逝かせないわ、絶対に離したりするもんですか!アンタはアタシの妹なのよ!大事な妹なのよ…!)


綾は一気に言い切ると、大きく息を吸い込む。

揺るがない眼差しで雅を睨み、又言い放つ。


(死んだって言うけど、アンタは今ここに戻ってきてるんだもの。離さなきゃ逝けない筈よね?しがみついて、噛み付いてでもアンタを何処にも逝かせないわ!姉を舐めるんじゃないわよ!)


(綾姉ちゃん、怖え…。)


綾の余りの迫力に聡がビビる。


(お姉ちゃん、アタシ嬉しいよ。)


雅は綾に満面の笑顔を向ける。


(お姉ちゃんにスゴく愛されてるってホントに嬉しいよ。アタシはお姉ちゃんにとって良い妹じゃなかったよね。メイクも満足に出来ないし、大雑把でいつもお姉ちゃんに叱られてた。アタシお姉ちゃんに甘えてばっかで、何にも還せてない。なのに愛してくれて、大事な妹って言ってくれて…。ありがとう。アタシも綾姉ちゃんが大好きで大事だよ。なのに…ごめんね。)


雅はそう言うと、とうとう堪えきれなくなり両目から涙をポロポロ溢し始めた。


(皆…突然居なくなってごめん。こんなことになるなんて、思わなかったの。あの子達を助けたかっただけなの。アタシ泳ぎ得意だし、大丈夫だと思ったの。まさかブーツが引っ掛かって、底に引き摺りこまれちゃうなんて夢にも思わなかったんだよ…!)


雅は両手で目を擦り泣きじゃくりながら、家族皆に詫びる。


(アタシが溺れて、死んでしまって…。それから皆が悲しんで、疲れはてて体調も気持ちもボロボロの状態で…でもアタシを慈しんでくれているのを見ていたんだよ…。ごめん、ホントにごめん。)


(だから、せめて皆にアタシがこの家の子で良かった、アタシは皆を愛してるって伝えたかった。愛してる家族がこれ以上悲しみでボロボロになっていくのを見たくないから。アタシを喪った悲しみや恨みなんかに囚われすぎないで欲しいの。そう言いたかったの。)


雅はそう話すと綾に向かって泣きながら笑う。


(アタシの体はもう戻れないんだよ。綾姉ちゃんが綺麗にメイクしてくれたアタシの体は生きることを止めてしまったのよ。だから、魂のアタシもここに居続ける事は出来ない。ごめんね、お姉ちゃん。勝手な妹でごめん。でも、わかって…?)


綾は雅を驚いたように見つめ、次第に表情を歪めて雅を離す。


そのまま雅にもたれ掛かり、両手で自分の顔を覆い泣く。


(勝手よ、アンタ勝手過ぎるわよ。わかってくれなんて、わかりたくなんか無いに決まってるじゃない!このバカ!ホントに…バカなんだから…。)


後は言葉を無くす綾。


(母さん…。)


雅は、声が出なくなり今やしがみついて体を震わせて泣いている乃理子の肩を抱く。


そして優しく叩きながら、幼子に言い聞かせるように話す。


(母さんが、あの子達の両親に優しく応対していたのを見ていたんだよ、アタシ。流石母さんだって思っちゃった。凄いなぁって。そんな母さんをこんなにまで取り乱させて…ひどい娘よね。ごめんなさい、本当に。最悪の親不孝をして。)


(…ひどい娘なんかじゃないわ…。自慢の娘よ。雅も綾も聡も、皆とっても良い子で、あたしは本当に良い娘と息子に恵まれて…。だから、離したくない。なぜ、逝ってしまうの…!)


(…ごめんなさい。謝るしか出来ないアタシを許して、母さん。アタシも母さんから、皆から離れたくないよ。死にたくなんかなかった…!でも、アタシはアタシのしたことを後悔はしていないのよ?だから、したことの結果がこうなってしまったのは全てアタシの責任。受け入れるしかないの。…バカな娘で許してください…。)


(雅…。本当に逝ってしまうのね。もう戻れないのね…?)


雅を見上げて、乃理子は唇を噛み締める。


雅の瞳を見つめ、静かに死を受け入れた娘の覚悟を改めて見て悟る。


もう、なにを言っても無理なのだ。


(…雅…ごめんなさいね。貴女が一番悔しいわよね。でも、助けたことを後悔していないのなら、母さんも貴女のように貴女の死を受け入れるしかないのね…。でないと雅を苦しめてしまうわね。)


乃理子は雅を離すと目を閉じ、呼吸を整えた。


(もう、大丈夫…。すぐには無理だけど、貴女の死を受け入れるように自分で何とかしなきゃね。ありがとう、雅…。会いに来てくれた貴女はやっぱり優しい、アタシの自慢の娘だわ。)


そう囁くと、何とか雅に微笑み掛ける。


(綾、もう充分よ…。雅はこんなにも健気にあたし達の為に会いに来てくれた…。あたし達も、雅を困らせちゃいけないわよね。)


乃理子は綾の肩を叩く。


綾もノロノロと顔をあげ、乃理子を見て唇を噛み締める。


(母さん…雅ったら母さん説得しちゃったのね…。変なとこ、上手いんだから雅は。アタシも折れるしかないじゃないの。)


綾は雅を睨みため息をついた後、苦笑いして渋々離れた。


(雅、凄いな。我が家の女性陣、見事に説得したじゃないか。父さんには無理だよ。流石雅だ。我が家で一番の調停役だからな。)


慶市が笑って言う。


聡も肩をすくめて話す。


(雅姉ちゃん居なくなったらマジやばいな。俺には出来ないよ。綾姉ちゃんは怖すぎだし、母さん根性あるし、ばあちゃん妙な話術使うからな。)


そう話すと、すぐさま女性陣に睨まれる聡。


綾がツカツカ寄って聡の頭をはたく。


(…さて、雅。家族皆を心配してくれてありがとう。もう大丈夫だと思うぞ。…それより、なにか私達に他に伝えたいことが有るんじゃないのか?それもあって、会いに来てくれたんだろう?)


綾と聡を苦笑しながら見ていた慶市は、雅に向き直るとこう切り出した。


(流石父さん。鋭いな。うん、頼みたい事があるの。)


雅は父に話し出した。



次話は明日投稿します。


夢枕・家族へ2です。

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