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やりたい事をやる為に … 序章   作者: 千月 景葉
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17. 願い

お読み下さりありがとうございます。


17話目です。


通夜です。


『ほい、そんな叫ばんでもおるわい。で、なんじゃ?お願いとは。聞かんでも解るがの。』


仙人はすぐさま雅の前に姿を現した。


どうやら全て見ていたようだ。


(仙人様…。アタシの我が儘、聞いて頂けますか?あの子をあのままにはしとけません!)


『あの子供の夢枕に立つんじゃな。よかろう。しかし其方、あの子供の家がわかるんかいの?』


仙人がさらっと爆弾発言をする。


ピシッ。雅が固まる。


(…え?どういう事ですか?…嘘、カッちゃんの家なんてアタシ知らない…え、どうしよう?!夢枕って現場に行かなきゃ駄目なんですか?!うわ、夢枕、出来ないじゃない!どーすんの、アタシ?!)

雅が慌てふためく。


(ちょっと待って…!よく考えたら、先輩の家も解んない?!えー!ここへきて、計画丸つぶれ?!家族以外無理じゃない!ウソー!仙人様どうしよう!)


雅は仙人の周りを慌てふためきながら、グルグル回る。


甘かった。


全く考えていなかった。


夢枕、現場入り!


(うわー!なんで最初に言って下さらなかったんですかー!どうしよう、誰にも聞けないのにー!あぁアタシのアホー!いつも詰めが甘すぎるんだよー!)


グルグル…グルグル。


一頻り、雅の慌てふためく様を見ていた仙人。


やがてニヤリと笑うと雅に言った。


『落ち着け、雅。ウソじゃ。』


(……へ?…嘘?)


雅のグルグルが止まる。


(カッちゃんの家に行かなくても大丈夫なんですか?夢枕、出来るんですか?)


『出来るわい。何も問題ない。其方が会うた者なら其方の記憶を通じてワシャ会うた者の魂を掴まえられる。転移くらいたわいもないわ。ホッホ。』


「…ホントに?……なんだ、もうビックリしましたよ…。何でそんなからかうんですか!」

安心した雅が仙人に文句を言う。


『……其方は何でも抱え過ぎるでの。気負い過ぎじゃ。』


(え?……気負いですか?……そんな事は…。)


無い、とはいえない。


『わかっとるようじゃな…力が入りすぎとる。其方の(さが)じゃから仕方がない部分もあるが、余り全てを背負うでない。……本来ならば残される者達が自ら葛藤し、それこそ血涙を流しながらでも、愛する者を喪った悲しみを受け入れ乗り越えてゆかなくてはならぬはずを、代わりに其方が我が身に受けようとしとる。』


(仙人様…?)


『其方は優しすぎる(さが)故に、自らの魂を犠牲にすることも厭わず、出来る限りの悲しみを掬いとろうとしているが、余りやり過ぎると弊害が出ると言うたであろう?』


(…はい。)


『確かにあの子供は不憫じゃ。ワシも止めはせん。だが、これ以上は避けよ。其方の望まぬ混乱を招くぞ。わかったかの?』


(…はい、気を付けます…。)


仙人の言葉が痛い。


元々自分が他の者に感情移入しやすいのは分かっていた。


だが今は更にその傾向が強くなっているようだ。


仙人が力を貸してくれることも心強く、つい甘えてしまっている。


気を付けなければ。


雅は自らに言い聞かせた。


『ま、固い話はもう良い。さて、整理するぞ。其方が夢枕を望む者は家族と先輩やら云う男とさっきの子供で間違いないか?』


(はい。)


『家族じゃが、父、母、姉、弟で良いか?祖母もか?』


(…はい、出来れば…。)


……だって、おばあちゃん外せないもん、と雅は言い訳する。


『…今日の夜行うからな。昨日家族は皆寝ておらんから、眠らせるのは容易い。ワシがちょっかい出さんでも眠るんじゃないかの。』


(…そうですね。皆疲れてますし。)


『ワシが導く。其方は語りかけたい者を思い浮かべよ。其方の中でその者の姿が鮮明になれば、ワシが其方に同調しその者の気配を捉え、其方と共に転移・同調し、干渉を始める。』


仙人が夢枕の方法を大まかに説明してくれる。


しかし雅は自分が相手を思い浮かべる事位しか理解ができなかった。


余り詳しく知らない方が良いだろう。


ただ雅は仙人の指示通り、自分がすべき事を全力でやるだけだ。


(姿を思い浮かべるのですね。頑張ります!)


『うむ、頼んだ。後、大丈夫だとは思うが、別の者を思い浮かべるでないぞ。』


(余計なことは考えないように気を付けます…。)


仙人は頷くと雅に言った。


『では、通夜も始まることじゃし、ワシは姿を消す。日付が替わる頃合いに其方の前に又現れるでの。それまでは其方自身、色々と考えねばならん事もあろう。ゆっくりと考えるが良い。』


(はい。きちんと伝えたいことを整理しておきます。)


『ではな。』


仙人は再び姿を消した。


雅は斎場の中に入り見渡すと、親族以外にいつの間に来ていたのか上條の姿を見つけた。


祭壇の前に佇み、遺影を見つめている。


(先輩…。来てくれたんだ…。)


喪服に身を包んだ上條は、周りの親族とは一人雰囲気が違った。


普段であれば格好良いと感じただろう後ろ姿が、悲しみに打ちひしがれているせいか、痛々しい程に弱々しく頼り無げに見える。


自責の念に絡み捕られているのだろう。


やはり彼はそのままにはしておけない。


(どこまで先輩が納得してくれるかは分からないけど…でも伝えなければ。アタシの思い…。)


上條を見守りつつ、改めて思う。


ふと、遺影を見つめている上條を離れた位置から見ている者達が居るのに気付いた。


聡と慶市だ。


(聡…、又先輩に絡むんじゃないかな。)


不安に思う雅。


すると慶市が上條に歩み寄り声をかけた。


「よく、来てくれたね。体は大丈夫かい?」

慶市は上條の体調を尋ねる。


「あ、すみません。ご挨拶もせずに…。来ることを許可下さり、感謝しています」


深々と頭を下げ、慶市に礼を述べる上條。


「体は何ともありません。ご心配をおかけしました。…弟さんはご不快かとは思いましたが、どうしても彼女に会いたくて…来てしまいました…。」


上條は頭を下げたままで話す。


「別に…不快なんて思ってないですよ…。」

聡は慶市の隣に立って呟いた。


「昨日は…すみませんでした。俺、貴方に八つ当たりしました。」

聡も上條に対して頭を下げ、詫びた。


「そんなことありませんよ。君が、あなた方が恨むのは当然ですよ。…俺はそう思います。」


上條が目線を下げ、自らに戒めるように呟く。


「彼女を助けられなかった。彼女が大丈夫だと言ったことに安堵して、彼女の様子に注意を払わなかった…。岸にあの子を連れていった時、岸に居た人達に彼女の姿が消えたと…姿が見えないと言われて、信じられなかった…。」


上條はその時の光景、自らの感情を思い出したのか、声を震わせる。


「慌てて彼女の元に戻ったけど、姿が全く見えなくて…。潜って彼女を捜したけど、水が濁っていて中々捜せなくて…。何とか彼女を見つけた時には……彼女はっ……!」


堪えきれなくなったように肩を震わせて下を向き、言葉を失う上條に慶市が肩を抱き声をかける。


「もう止めるんだ、上條君。君が雅をどれ程必死に助けようとしてくれていたか、よく分かっている。君が自分を責める必要は無いんだ。もう充分だよ…。」


慶市が上條を諭す。

上條は声を出すことも出来ず肩を震わせ、されるがままに立ち尽くしていた。


聡はその様子を見ながら上條に話す。


「雅姉ちゃんって、人が善すぎていつも損するタイプなんですよ。俺には凄くキツくてさ、アンタは女か?とか、グジグジ文句言うなって頭小突かれたりとか、もうパワハラ女っていつも思ってたし。

でも、お菓子とか何でも1つしか無い物はいつも俺に譲るんだ。アタシダイエットしてるからとか、さっき食べたからアンタ食べなって…。」


聡がぎこちないながらも、上條に声を掛け続ける。


「だから、雅姉ちゃんが上條…さんに大丈夫って言ったのは、ホントに自分ではそう思ってたんですよ。自分は大丈夫だから、子供の救助に集中してほしかったんだと思う。でも、姉ちゃんはああいう損するタイプだから、まさかあんなことになるなんて思ってなかった筈です。うまく言えないけど……間が悪いんですよ、姉ちゃんは…。」


聡が遺影の雅を見て苦笑する。


「だから、上條さんが自分を責めてるのを知ったら、慌てるだろうと思います。アタシのせいで、責任感じさせてどうしようって。ああいう、バカみたいに優しい人だから。…だから、姉ちゃんの事を思ってくれるなら、余り自分を責めたりしないで欲しい…です。」


聡の話を聞いて、上條が顔をあげて聡を見つめる。


「弟さんは…お姉さんを理解してらしたんですね…。すみません、俺なんかに気を遣わせて…。彼女は、やはり俺が考えていた通りの女性なんですね…。」


上條はそう言うと目を閉じた。

感情を抑え込んでいるかのようだ。


「すみません、皆さんが一番辛いのに俺が取り乱して。」


慶市が、肩を叩く。


「もう始まる。さあ、雅の近くで見守ってやってください。案内するよ。」


「恐れ入ります。」


慶市と聡は上條を祭壇近くの席に案内する。


雅は、3人を見ながら安堵していた。


(聡…生意気。大人の対応しちゃって…。ありがとうね…。)


そうして親族とごく親しい者だけが見守るなか、通夜が始まった。


哀しみに包まれ、ただ菩提寺の住職の読経のみが斎場に響いていた。








次話は明日投稿したいです。


爺と動きます。

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