15. 出立
お読みくださりありがとうございます。
15話目です。
散文的です。
夜が明けた。
(本当に皆朝まで起きてたよ…。大丈夫かな?)
雅は、彼女の体を見守りながら語り合う家族達とずっと一緒に居たが、本当に誰一人眠らなかった。
(皆眠れそうにないって言ってたけどさ。相当疲れてるはずなのに…。)
休んでほしいと思っても、自分に何が出来るわけでなし、フワフワと皆が話したり動くのを見ている。
(なんかこの雰囲気だと別にアタシが何も言わなくても大丈夫かも…。皆思い出話をしてるときも穏やかだったし。泣き叫ぶとか取り乱す事もなかったし。)
仙人と話してから、死者である自分が生者である家族達に干渉する事がどうしても必要なのかをもう一度考えようと思ったのだ。
元々自分の死のせいで家族が争っているのを見てしまったから、何としてでも荒んだ気持ちを鎮めたかった。
でも昨日の夜の雰囲気だと干渉しなくても何とかなるかもしれないと感じた。
干渉しないで聡達が落ち着いてくれるなら、それに越したことはない。
何だか自分も焦っていたのかもしれないと思う。
そう考えながらフワフワと又屋根の上に行く。
もうすぐ家とお別れだ。
通夜は斎場で行われるので、雅の体と家族や親族は午後には支度をして斎場に向かう。
雅が家に帰ることはもうないのだ。
体も明日には荼毘に付される。
それと時を同じくして魂の自分もこの世界を後にする。
哀しく寂しいが、受け入れなければ。
家の中では斎場へ向かう準備を家族達がしている。
別に自分が居ても邪魔にはならないんだが居づらくて、屋根の上に逃げてきた。
自分ではあまり自覚がないが、動揺してるのかもしれない。
いよいよ本当に家を永遠に離れるのだから。
屋根の上から自宅の周りの景色を眺める。
普段何気なく見ていた景色。
毎日歩いた道。
春になると綺麗だった桜の木。
角の家の秋桜が揺れている。
隣の家の飼い犬の鳴き声。
(ジョン今日も鳴いてる。散歩行きたいのかな…。)
雅の事で今日は朝からお悔やみに来てくれた隣のおじさんおばさん。泣いてくれていた。
(ジョン、アタシのせいで朝から散歩行けなかったんだな…。ごめんね、アンタにも迷惑かけちゃったよ。)
聞こえない声でジョンに詫びる。
(…アタシ、死んでからなんかずっと何かに謝ってる気がするなぁ…。ハハ。)
死ぬときは皆一人だって何かで聞いた。
そんなの嘘だ。
死ぬ前も死んでからも皆に迷惑掛け通し。
一人じゃ何にも出来ない。死んでも同じだ。
(一人じゃ生きられないし、一人で終わることも出来ないんだな。本当に人との繋がりって大切だよ。)
死んでから悟る自分が呑気で何だか笑える。
やっぱり鈍感なんだな、て思う。
改めて自宅の周りを見る。
記憶に焼き付けたい。この景色。
離れても、忘れないように。
そうしているうちに、斎場へ向かう時間になったようだ。
昨日とは違う寝台車が自宅前に着いた。
(とうとう、お別れか。)
雅も家の中に向かう。
葬儀会社のスタッフさんや、朝から駆けつけてくれた親戚の人達が忙しそうに動くなか、雅は家の2階へ上がる。
自分の部屋に行き、見渡す。
(今までありがとう…。アタシだけの一番落ち着く場所だったよ。)
部屋にお礼と別れを告げる。
2階を回り、1階のリビングや台所も回ってみる。
全てが思い出に溢れる場所だ。離れがたい。
(ありがとう…。どうかこれからも家族を頼むね…。この家が大好きだったよ。)
雅の体が棺に納められたようだ。
すすり泣きが大きくなる。
もう戻ることはない。
白い棺が親族の男性達によって抱えあげられ、すすり泣く声の中静かに家から運ばれる。
雅は棺と共に家を出る。
寝台車に棺が乗せられるとき、振り返って家を仰ぎ見る。
大好きな我が家。
雅の、家族の全ての幸せがここにある。
雅は思いを込めて家に囁く。
(ありがとう…。さようなら、皆をお願いね…。)
そうして住み慣れた家に別れを告げ、自分の棺に寄り添い、家を後にしたのだった。
次話は明日更新したいと思います。
穏やか一変するかも。




