10. 旅人
お読みいただいてありがとうございます。
10話目です。
爺が語り出します。
『見えとるよ。…其方にはワシが爺に見えるんじゃな。』
仙人は面白そうに答える。
(え、お爺さんですよね?…違うの?!ご、ごめんなさい!)
会話が出来る事に驚きながら、雅は謝る。
『ホホ…気にすることはない。其方にとってワシはそうなっておるのじゃろ。爺で仙人か、ワシの見た目は。』
そう言って仙人は気さくに笑う。
雅はそんな彼を改めてよく見る。
やはりどうみてもステレオタイプの仙人の姿だ。
ご丁寧に長く白い髭まで生やしている。
(あ…それもごめんなさい、つい……あの、貴方は?)
また謝り、恐る恐る仙人が何者なのか尋ねる。
『仙人じゃ。其方にとってはの。』
仙人が気を悪くした様子はなく、雅の質問に軽い返事を返してきた。
(なぜ貴方にはアタシが見えるんですか?誰も気付いてくれなかったのに…。)
雅は一番気になることを聞いた。
『うむ。ワシは其方と似たようなモノじゃからな。…其方の力が増したせいもあるが。だから面白いとゆうたじゃろ?』
(…?意味が分からない。)
雅は仙人を困ったように見つめる。
『…そうよのう。其方にわかるように話さねばならんか。』
仙人は髭を撫でながら思案すると、ゆっくり雅に話始める。
『…ワシはこの世界のモノでは無い。数多ある異なる世界を行く渡りじゃ。』
(異なる世界?渡り?)
『そうじゃ。世界は一つではない。折り重なるように、連なるように数多あるのじゃよ。』
(世界は一つじゃない…。)
雅は不思議な気持ちで静かに耳を傾ける。
『ワシは偶々この世界にやって来た。通り過ぎるだけだったんじゃが…この世界に入った途端、其方がいた。』
仙人は雅を楽しそうにみる。
(アタシ?)
雅は戸惑いながら聞く。
仙人はさっきも気になることを言っていた。
雅の力が増したという言葉。
『…恐らくワシは其方の道標となるようじゃ。』
道標。
(分からないことだらけなんですが…。)
仙人が雅の居るこの世界とは違うところから偶々やって来たことは流石にわかった。
だが、雅の力とはなんだろう。
道標って?
『其方流に言えば、今の其方は魂というものなんじゃ。』
それはそうだろう。雅もわかってはいたが、死んだイメージが益々強くなるので敢えてそういわなかっただけだ。
『魂はそれが存在する世界で輪廻する。全てが輪廻出来るわけではなく、力の弱い魂は消える。だが中には魂の力が強くなり、この世界を飛び出すモノもいるのじゃ。』
(アタシの力が増したと言ってましたよね。力ってなんですか?何でアタシ強くなったんですか?)
力が強くなったと言われても、自覚できない。自分の姿すら分からないのだ。
『魂の力は意思の力じゃな。其方、他の者を救ったの。その事で其方の大事な者達が動揺し争ったりしておる。』
(なぜその事を知っているんですか?!)
雅は驚いて仙人に問うた。
『其方をみればわかる。ワシはこの世界のものではないが、其方の軌跡を読み取るのは容易い。例えばな、其方は羽海乃 雅。25才。両親と姉と弟がおる。間違いないであろう?』
さっき会ったばかりだし名乗った覚えは無いのに、雅の名前を知っているばかりか歳や家族構成も言い当てた。読み取れるというのは間違いないようだ。
雅が頷くと仙人は話を続ける。
『話を戻すぞ。其方はその様を見て哀しんで、争いをやめて欲しいという思いを持っておる。自らが消えるかもしれぬという状態でじゃ。…命を失ったこと自体は淡々と受け入れておる。何かに責を問うたりもせずな。』
(アタシが死んだのはアタシの油断が原因だから。)
雅はアッサリと肯定する。
『命を失ったのは、他の者を救おうとしたからじゃ無いのかの?救わなければまだ生きていられたじゃろうに。悔いておらぬのか?』
些か皮肉を込めた眼差しで仙人は雅に聞いた。
(あの子達を助けた事に悔いなんてありませんよ。後悔するなら始めから助けたりしない。)
はっきりと言い返す雅。
『それじゃよ。』
仙人は笑って頷く。
(?)
雅は首をかしげる。
『命を失ったにも関わらず、何者をも怨み憎まず己の行動を悔いぬのは、中々に難しい。強く揺るがない意志が要るものじゃて。』
仙人は続ける。
『他を責めた方が容易く己を守れるからのう。だからこそ淡々と受け入れる其方は珍しく面白いのよ。魂が弱ることなく、又嘆くわけでもなく辛い事実を事も無げに受け入れた其方は魂の力が強くなって当然じゃ。』
そういうと仙人はニッコリと笑った。
次話は明日か明後日になります。




