第2話 共同生活はじめました。
「痛てて…あのくそ狐に噛まれたけどあいつ病気持ってないよな」
二の腕や手の甲には噛み跡らしきものが生々しく残っている。現在稲荷は手や足、胴体など縄に縛られていて無闇に動けないため八雲 悠磨のことを睨んでいる。
「エキノコックスだっけ?狐が持っている寄生虫。おまえ持ってないよな?」
「わらわをそこら辺にいる狐と一緒にするな」
「俺から見たらそこら辺にいる狐の方がよっぽどおまえより優れていると思うんだが」
「なんじゃと小童!?この縄が解けたら覚えておれよ…」
「やれるならやってみろよくそ狐w」
縄で縛られ抵抗できない中学生(見た目が)に対して強気でいる大学生。傍から見れば警察沙汰である。
「縄で縛るとは随分と考えたのぉ」
「いやそこにあったから…ってじじいいつの間に戻ってきた!?」
「いまさっきじゃよ、それよりこいつのことが分かったぞ」
「ほんとか?」
「あぁ、どうやらこいつは五百年前ここら辺を支配していた妖怪らしくてな、わしらのご先祖さまがあの壺を使って封印したらしい」
「へー…ってことは力があったって言うのは本当だったんだな」
「ふふーん♪わらわの凄さを思い知ったか小童?さっきわらわのこと馬鹿にしたこといまなら許してやっても良いぞ?」
「調子に乗るなよくそ狐」
「お主はわらわのことを何回くそ狐と言えば気が済むんじゃ!?」
「あ、妖狐様に言わなきゃいけないことがありましてな…どうやらその壺には特殊な魔術?みたいなものが付加されてるって古文書に書いてあるんじゃ」
「魔術?」
「えーとその魔術はどうやらこの壺の封印が解けた時の万が一のために付加したものらしい…どうやら妖狐様が持っていた本来の力は封印から開放されても100年近くは使えないらしいわい」
「なるほど!だからさっきあいつが出した狐火がライターほどの大きさだったのか」
「嘘じゃろ…」
その話を聞いて稲荷の顔は徐々に絶望に変わっていくのが2人にはわかった。
「なー、元気だせよ。ほら油揚げやるから」
「ははは…人間に捕まって封印された挙句妖狐としての力を失うとわな…妖狐の恥晒しじゃ」
現在3人は倉庫から離れ本堂の一部屋である和室の部屋にいる。じじいの話を聞いてからか少女は縄を解いても噛み付く素振りを見せない。
「はぁ…まったくさっきまで俺らのことを殺そうとしていたのに…」
「ははは…もうどうにでもなれ…」
「っていうかこいつくそネガティブだな!?さっきの威勢はどうしたんだよ!?」
「そりゃああんな真実突きつけられたからの…とりあえず悠磨よ、その妖狐様お前さん家で面倒みてくれんか?」
「は!?なんで俺の家なんだよ!!俺の家ボロアパートの一部屋だぞ?ただでさえ狭いのにあいつが来たらもっと狭くなるわ!!」
「えーそんな事言っても…わし面倒事嫌いだし」
「面倒事嫌いって…そもそもじじいが俺に倉庫の掃除を……ってお前はなにしてる?」
隅っこの方にいた稲荷がこそこそしていたので八雲 悠磨はそういった。
「え…えーと荷造り…」
「荷造りってお前俺の家に転がるためのか!?くそぉ!!ここには俺の味方は1人もいないのか!?」
「お主がわらわの封印を解かなかったらこんなことにはならなかったのじゃ」
さっきまでギャーギャーうるさかった八雲 悠磨はその言葉を聞いてきょとんとした顔になり静まり返った
「そうだぞ悠磨…封印を解いたのなら責任を取らないといけないぞ」
「そ、それを言われると…」
「それともなにか悠磨?自分の都合が悪いことになったら年寄りであるわしにすべて擦り付けるのか?かー!!こんな親不幸な孫がいるだなんて…」
(こんのくそじじい…)
いまにも祖父のことを殴りそうな拳を片方の空いている手で抑えた。
「はぁ…わかったよ。俺が面倒見ればいいんだろ…」
「さすが我が孫じゃ」
「ただし条件がある。俺も大学もありアパートの家賃で生活費はカッツカツなんだそれにこいつが加わるともっと悲惨になるだからじじいの方からも生活費を送ってくれ」
「ぐぬぬ…まぁそれぐらい別に問題はないわい」
「よし、交渉成立だな…じゃあ俺明日大学だしそろそろ帰るわ。いくぞくそ狐」
「誰がくそ狐じゃ小童」
「あ?誰が小童だ?俺には八雲 悠磨というちゃんとした名前があるんだよくそ狐」
「馬鹿な顔しているお主にも名前というものはあるんじゃな…失敬」くくく
「じじい…こいつまた縄で縛っていいか?」
「帰るならはよ帰ってくれ」
こうして八雲 悠磨と妖狐である稲荷との奇妙な共同生活が始まった。
前回の後書きを読み直すと不定期と書いたつもりが定期となっていたことに気づきました。見ている人に勘違いをさせてしまいましたここで深く謝罪したいと思います。誠に申し訳ありません
不定期と書きましたがなるべく早く更新するように今後頑張りたいと思います