二・想いはしまって
一刻経ってから、楓は用事を終えて帰ってきた。
私の姿を見ると駆け寄り、
「姫様ー!ただいま戻りました‼︎」
と言い、長い薄紅色の結った髪を揺らしながら、私に抱きついた。
「ご苦労様。楓」
「はい!姫様」
私達の熱い抱擁を見ている、暁と白は冷めた目をしていた。
「お前ら女同士で何やってんだよ。暑苦しい」
と暁が言い。
「楓。姫さんに失礼だろう」
と白はそう言うと、楓を離そうとする。
「いやー‼︎私今日朝に姫様に会ってなくて姫様が足りないのよ!邪魔をしないでっ」
「ちょっ…首が…しまっ」
「楓!姫さんを離しなさい!」
「おいこら!楓‼︎」
暁も加わり、押しくら饅頭状態である。
私は気を失いそうになりながらも必死に抵抗する。
すると、戸が開いた。
「おやおや。姫様は大変人気ものですね。」
全員が声のする方に向き、叫ぶ。
「「霜月さん‼︎」」
霜月さんは微笑んだ後、皆に向けて言う。
「皆さん。姫様の事を好いているのはわかりますが、姫様に失礼でしょう」
暁と白が離れ、楓はしぶしぶと私を離した。
「遅くなってしまい申し訳ありません。少し用事ができてしまって」
「いや…大丈夫です!霜月さんが忙しいのは分かっていますから!」
私がそう言うと、霜月さんは困ったような笑みを浮かべた。
そんな霜月さんを睨みつけるように白が見ていたことに気づかなかった。
その後、霜月さんと暁が帰って行き、(白は山に修行に行った)
私は楓とのんびりお茶を飲んでいた。
「ふー…落ち着くね〜」
「ですね〜」
私が熱いお茶を口に含んだ時に、
「そういえば…姫様は誰がお好きなんですか?」
私は驚きのあまり、お茶を盛大に吹き出す。
「わっ!姫様!大丈夫ですか⁉︎」
楓は慌てて拭く物を用意し、机の上や私を拭いてくれる。
いや、楓のせいだろ…と思ったことは心の中に閉まっておくことにした。
……怒ったら怖いからな…
拭き終わった後、再度聞いてきた。
「み、皆好きだけど、お慕いしているわけではないしっ」
「本当ですか?言っておきますけど、あの3人女性方に人気があるのですよ?」
「え…そうなの?」
「はい」
私はふと思い浮かべる。
女性達に囲まれている少年。
なんか胸がムカムカしてきた…
「姫様?どうかされました?」
ふと、我にかえると動揺していたのか、手の中のお茶が少し零れていた。
すると、楓は少し悲しそうな顔をして、
「ごめんなさい。姫様…急にこんなことを言ってしまって……私姫様にはお慕いしている方と婚儀をしてほしくて……家の決まりに縛られてほしくなくて、つい言ってしまいました。」
そう。私は自分で婚儀をする相手を決められない。家の決めた者と婚儀をする。
そして、生まれた子供に跡を継がせるのが決まり。
生まれた子が女であったら、問題はないのだが
男だったら、養子に出される。
「大丈夫よ。これも決まりなのだから。」
「…姫様」
そう…これは絶対の決まり事。避けらない…
「私は…姫様の味方です。もし、お慕いする方ができた時は私協力しますから‼︎……だから………その時は私に言って下さいね?……絶対に婚儀を勝ち取りましょう‼︎」
「…ありがとう。」
私は脳裏に浮かぶ赤い髪の少年を思いながらも、胸にしまう。
私は巫女姫。
決まりは必ず護らなくてはならないのだから。
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