くえすと5.5 VRゲーム初心者
5話のアックス視点になります。
やぁ俺はアックス・フォレスト。アックスって呼んでくれ!
ドラゴン退治からキノコ集めまでなんでもござれだ。だけど女だけは簡便な!
ハハハ何故かって?
聞かないで……。
そんな俺が超絶絶壁美少女リリィと旅をガッ。
「痛てぇっ! 何でいきなり殴るのお前? え、なにか失礼なことを考えてただろうって? それに痛くないだろうって? 痛くないなら殴っていいわけじゃないだろう! グハッ! ヘッドバットもやめてください」
こほん、超絶美少女リリィ様と旅を始めてはや……まだ一日ちょっと目的地方面に手頃な敵がいるので一回死んでみたいというリリィと森の中に入っていく……。
森に入ってしばらく歩きながら話していてふと気づく。
「ちょっとその木のあたりに立ってみてくれないか?」
ちょっと気になったのでリリィに頼んでみる「別にいいけど」と木のそばに立ったその姿を見た俺は確信するコレは行ける! どこに?
こんな感じ? と聞いてくるリリィにあったばっかりの頃のお嬢様スマイルを要求する。
「こうかしら?」
おおう素晴らしい、この普段見ると“その笑顔の中で何を考えてるかわからない顔”がこの場所で見ると神秘的に見えるマジック! 俺の目は節穴ではなかった! さすが俺! そんな自画自賛をしつつ場所を変え高さを変えスクショを撮りまくる……っち! パンツが見えない。いやいや今はこの素晴らしい芸術的なスクショをだなと考えているところに。
「……あんたすくりーんしょっと撮ってるわね!」
今頃気づくのかコイツは……まあゲーム慣れしてないと良くわかんないか、しかしゲーム用語は何でカタコト何だコイツ?
「ふ、当たり前じゃないか我ながら素晴らしい一枚がとれたぞ」
ふふん、俺様すげーぜと胸を張りつつ言う俺に。
「はぁ? さっきしゃがんでたのってまさかエッチな奴撮ってたんじゃないでしょうね!」
えー俺っていつもそういう事してると思われてるの? いつもじゃないよそういう事してる時だけだよ? さっきはほら……見えなかったしね!
と心のなかで言いつつ反論もしてみたが。
「……さっさと行くわよ」
何故か溜息をつかれ先を促される。おっかしいなぁ何で怒られてるんだ俺……ん?
[ストップ]
とっさにPTチャットに切り替えた俺を訝しみつつ。
[何故この距離でぱーてぃちゃっと?]
ちゃんとPTチャットで返してくるリリィにアッチを見ろとハンドサインで支持を出す。どうやら気づいてくれたようだ。ゴブリン達を見つけてわかりやすくリリィのテンションが上がる。まあ初めてアレ見たときは俺でもすげーなと思ったほどのゴブリンってこうだよね! って感じだもんなぁと思い出しながら適当に作戦を決める。
[んじゃ行くぞ!]
そう声をかけダッシュする〈身体強化系〉パッシブスキルの補正を受け久々に全力で走る。おぉう、つまづきそう、だがココでコケたら何を言われるかわからないため七割くらいに抑えて走る。数秒もせずにゴブリンの前に到達すると刀を抜き放ちつつ叫ぶ。
「ウォオオオオオオオ!!」
スキル〈Lv75ハウリング〉を発動させる――この技は俗に言う挑発技で敵のヘイトを集めることができる。本来このLvは必要ないのだがこのスキルは最大Lvで固定されているのでしょうが無い。まあスタミナもあんまり使わない技なのでどうでもいいのだが――
[今だ撃ちまくれ]
言うやいなや。
[さーいえっさー!]
そんな返事とともに矢が飛来しガスガスと連続で敵アーチャーに矢が刺さる。凄いなあいつ、とても今朝まで花にすら当てれなかった奴とは思えない。
何射目かの矢が刺さったアーチャーが断末魔とともに光の粒となって消えていく、それと同時にカラーンという効果音がかすかに聞こえたのでPTステータスを見るとリリィのLvが上がっていた。
[おぉおめ~]
[ありがと!]
そんな声をかわしつつ、死ぬならアーチャーのタゲが外れて狙撃されるかなと思っていたがコレだと大丈夫そうだなと考えながら次のターゲットを指定する。
[次はこの右のソルジャーをいってみようか]
そんな俺の指示に。
[でもそんなに動いてると当たんないよ、それにあんたに当たっちゃう]
と言われる。それは先に言っておいて「ほら言ったじゃん」と言いながら俺を撃つ振りだな、そうはさせんぞ!
[大丈夫、俺が今から隙を作るから俺の合図に合わせろ]
[わかった]
よし、いい返事だ! ちゃんと聞いたからなこれで後から「だって~タイミングが分からなかったんだも~ん」とか言ったらパンチラ撮りまくりの刑にしてやる!
などとニヤニヤ考えつつ――この角度からはリリィから見えないからあとから“顔がキモかった”とは言われないはずだ!――ゴブリンの動きをよく見ながら動きを予測しタイミングを測り。
[射てっ!]
支持を出しすかさず振り下ろされるゴブリンの曲刀めがけて自分の刀を振り上げる。
ガッキィィンッ! という音と共に曲刀を弾かれ硬直するゴブリンそこにズガガッ! と矢が命中する。
「[ナイス!]」
思わず声に出しながら褒める。ほんとすげえなあいつは一体どんな才能だよ、今までこのゲームをやってきた時間は決して短くはないと思っている俺だがこんな場所でこんな奴に会えるとはなぁ。ホント楽しくなりそうだ。
何やら褒めてオーラ満載ではしゃぐリリィを本音を隠しつつ適当に褒めて先を促す、そこに。
[うわーいこっちにもソルジャーでてきた]
なんとも気の抜けたエンカウント報告である、まあここで死んだとしてもあいつのLv位のデスペナルティだと一瞬でリカバーできるからなぁと考えつつ。
[それはご愁傷様です]
適当に返事を返す、リリィも早々に諦めているのかアホなことを言いながら敵に向かって行っているようだ。
「[よっしゃーどんとこーい、だがただではやらせはせん! やらせはせんぞっ!!]」
ホントにコイツは幾つなんだ? と思いつつ取り敢えず目の前の敵と倒しちゃうかぁと剣を構えたその時。
「いやぁああああああああああああああっ!」
絶叫が森に響いた。
おいおい何だ何だ? ドズルさまはそんな叫び方しなかったぞ? と思いながら。
[演技派だなぁ…おーい大丈夫かぁ?]
取り敢えず声をかけてみる…返事がない既に屍のようd「[うでがうでがっ! っきゃっ!]」なんだ…何が起きて……そこで気付くあいつは確かゲーム初心者だと言っていた――そう今のVR技術はリアルすぎるためとりわけこの手のレーティングが高いゲーム以外は何事も“デフォルメ”されているそれは“死に方”もだ低年齢物のゲームや学校などで体験するVRは基本的に何が起こっても“綺麗に死ねる”だけどレーティングが上がると死に方が現実的になって来る。但しこのゲームは死に方は比較的多彩だけれど痛みもなく血が出たりはしないからゲームをやり慣れてる俺達的にはまだ現実とかけ離れていて所詮ゲームと簡単に割り切れる、だけど“死に方が現実的なゲームでゲーム初心者が初めて敵に切られたら”もうそれは現実で切られているのとの違いは血が出てないのと痛みが無いだけだ、何だそれじゃあ大丈夫じゃん、と思う奴は怖い夢を見てもきっと平気なんだろう羨ましい限りだ――
「[わた、わたしのじゃないよ、ほら、わたしのうではここに…あれ?…おきれない…なん…で…いや、いや…たすけてたすけて…]」
「[おい返事しろっ! リリィっ! それはポリゴンだ! お前の腕じゃない! おいっ! くそっ!]」
叫ぶ俺に残り数体のゴブリンが襲い掛かる、が。
「うるせぇえええええええええええっ!〈メテオスマッシャー!〉」
習得している最強最速発動のスキルを躊躇なく発動する呼んで字のごとく隕石がぶつかったような爆風を辺りに撒き散らすその攻撃の爆風すらも初期加速に加え俺は跳んだ。一瞬で数十メートルの距離を飛び今にもリリィにとどめの一撃を与えんとするゴブリンをタゲる、そして吠える。
Lv88〈ソニッククラッシュ!〉
この技は敵に向かって風の障壁をまとって突進する技だ。発動と同時にシステムアシストが入り空中を蹴飛ばし弾丸の様に空を翔る。
ゴシャアアアアアアッ! という爆音と砂煙を上げながらワザとコケてスキル後の硬直をキャンセルしてすかさず起き上がった俺の目には光の粒となり消えていくゴブリンと俺が起こした爆風と突風によって転がるリリィの姿だった……おかしいな緊急事態なのに後が怖そうだぞ?
慌てて駆け寄りリリィを抱え起こす。
「おい起きろ! くそっ! おい! リリィ! リリィっ!」
名前を叫び状態を確認するステータス的には両腕欠損それにHPが残り一割他に状態異常はない、つまり後はコイツの思考次第のはずだ。
「…だれ…」
弱々しい声が答える、よし意識が戻ったなら大丈夫。
「俺だアックスだっ! 気をしっかり持てっ!」
「わたしの…うで…どこかいっちゃった…」
「腕の一本や二本大丈夫だすぐに治るっ!」
「そんな…むり…だよ…もどらないよ…」
くそっやっぱりゲームとの境界線が曖昧になってる。
「大丈夫だ! コレはゲームだから直ぐに元通りだ! リアルの腕はなんともない! 胸は減るけど!」
「……あ゛?」
お? 何やら反応があったぞ流石俺の魂の叫び!
「おぉ気がついたか? 大丈夫か? 俺のことわかるか?」
やばいなここで私の好きな人とか言われちゃったらどうしよう…しょうがないにゃぁ。
「なんかまだぼーとするけど…私どうなったの?」
おおう華麗にスルーされた。しくしくと悲しみつつ簡単に憶測を含めて説明する。何となくは覚えているようで大体の状況は理解したらしい…だがあることに彼女は気づいてしまった。
「何かにふっとばされたようなぁ…」
思い出そうとする彼女を見つめ優しく囁く。
「あぁアレは俺がゴブリンごとふっ飛ばした」
「ほう…そうかそうか」
ふ、やはり選択肢をミスったようだなコレはあとが怖いなぁと思っていると。
「…ありがと」
おぉぅ? コレはなんとかギリギリ怒ってない、のかな? まあそれは置いといて腕を戻さないとなっと、ゴソゴソと正式名称忘れちゃったアイテム収納バック通称『四次元ポケット』の中から明らかにそのバッグに入らなさそうなサイズの白い液体の入った瓶を取り出すとおもむろに。
「取り敢えずコレを~ん~もう頭からかぶっちゃえ、おりゃあ」
勢い良くぶっかけた、白い液体を美少女にぶっかけた、大事なことなので二回言いました。
するとどうでしょう彼女は感謝のジト目で。
「ねぇ、いきなり本人確認もせずに何をかけてるのかな? かな?」
何故か怒られる俺…おっかしいなぁコレ高いんだよ? あぁそっか説明してなかったな。
「あー回復剤だよテッテレー【ホワイトポーション】」
「ぶん殴るわよ?」
おかしい更に怒られた。
とそこで腕が治ったことに気づく“リリィさん白濁液まみれ”に効能を説明し、飲んでもいいけどそれよりぶっかけたほうが手っ取り早いことを説明する、それに腕ないし飲めないだろお前。
「あんたが飲ませなさいよ!」
おれが美少女に白濁した液体を飲ませるだと! なんだそのやばい状況! 想像しただけで死ねる! 心残りは胸がもう少しアレば!
「俺がお前に白い液体を飲ませるの?…いやんセクハラよ」
その言葉を聞いた“リリィさん白濁液コーティング”――なんかカッコいいなマグネットコーティングみたいで――は。
「……あんたは一体何を言ってるの?」
と一瞬考え込み。
「……ってこの変態ぶち殺すわよ!」
顔を一瞬で紅く染めシステムアシストの力により湯気まで出しながら怒り出す…あれ? 意外と耳年増? まあ腐っても今時の女子高生だしなぁ楽しそうだしもうちょっと遊んでみよう。
「えー俺はただぁお前を抱きかかえるのが恥ずかしいなぁって思っただけなんだけどぉリリィさんはぁ何を想像したんですかぁ? おじさんわかんなーい」
と言うLv1〈リリィさん白濁液仕様専用ハウリング〉を唱える。
「お前はヌッコロス!」
それにまんまと引っかかり、うきーっ!! と白濁液を飛び散らかしながら追ってくるリリィを肩越しに振り返り見つつ、少しは元気が出たかなっと思ったり思わなかったり。俺ってこんなに優しいのに何で彼女できないんだろう?