くえすと1.5 なんか面白くなりそうだな。
ようっ! 俺はアックス・フォレスト。アックスって呼んでくれ!
ドラゴン退治からキノコ集めまでなんでもござれだ、だけど女だけは簡便な!
ハハハ何故かって?
聞かないで……
そんな俺のはずなのだが。
「どうしてこうなった?」
そう俺の視界の端にはPTを組んでいることを示す自分ともう一人の女の子の名前が表示されている、そして友達リストにも同じ名前が、今は彼女がログアウトしてることを示すマーカーとともに記されている。
――おやすみアックス――
と元気に去っていった彼女の顔を思い出しながら。
「どうしてこうなった?」
同じ疑問が湧いてくる。そう、どうしてこうなったかを少し整理しよう。
時は遡ること数時間前。
最近の俺は この世界【Aret】のジパング、更に詳しく言うと最南の村の近くの森の中に借りた山小屋で暮らしつつ採取クエストをやっているわけだが。え? 何故そんなところでやってるかって? 初期狩場はもう人が減って人がいないからに決まってるじゃないか!
それに居たとしても一、二時間もモンスター狩っていたらここの適正レベルを簡単に超えてしまうからすぐに隣の町に行ってしまうのだ。なんでそんなに人のいないところを選ぶのかって? まあ色々と人付き合いにつかれたというかなんというか。
「もうあんな思いは嫌なんだァ!」
っは! 俺は何を叫んでいるんだ。
まあ、そんな感じでこの辺りで採取クエストを黙々とこなしていた時にあいつに出会った。
最初はイベントNPCかと思った、それくらいに唐突で、それ以上に可愛かった。
だから俺は警戒した、世間知らずのお嬢様ちっくな喋り方にも裏がありそうだったし実際にあった。
だけどあいつ、リリィは。
「ただの残念な人見知り美少女だったな」
思い出すだけで残念になってくる。このナイスにカスタマイズされたキャラを山賊とか中年オヤジとかいいやがるしな!
「……かっこいいよな?」
不安になり洗面台まで歩いて行き鏡を覗きこむ。
「うむ、ナイスミドル」
っは! 自分でおっさんと認めちゃダメだろ、しかし。
――ひと回り違う私からすれば十分中年オヤジですよ~だ――
「16かぁ、確かにその年齢からすると俺はおっさんかもなぁ。というかヘタしたらお父さんだもんな」
などと思いを巡らせてみたが思い出すのは八つ下の最近会っていない妹のこと。あいつの四つしたかぁ。
「よくわからんな」
という結論に達した。
色々と考えながら寝室についた俺はベットにもそもそと潜りこみながら。
「まあ何にせよまた楽しくなりそうだな」
と、この世界で久々にワクワクしている自分に気づいた。なぜなら俺のレベルは今の上限値の少だけ下、と言うより正式稼動により上限が六〇に引き上げられるまではレベルをカンスト(カウンターストップ)していた。
確かにレベルが上がれば強敵とも戦えるしどこにでも行ける。だけど上位グループのソレは既に楽しむというより、どれだけ効率を上げレベルを上げ他のプレイヤーを出し抜けるか、というなんとも楽しくない事になっていた。
「はじめは皆あいつみたいに何にでも興味持ってたのにな」
まあ人のこと言えないかぁ。少し前の自分を思い出し暗くなりかけたところで。
「う~ん、とりあえずこの後ろ向きな性格をどうにかしないとな」
そう気持ちを切り替え。
「よし寝よう」
眠りにつくことにした。
――私のお友達第一号と認めてあげる――
「お友達ねぇ…」
改めて友達リストに載っている一回り歳の離れた貧乳残念美少女を思い出し苦笑した。