バイト始めました。
最近、「コンビニ」と「異世界」という言葉をランキングで見かけたのでそこから連想した話。ちょっとある方の作品に似すぎてしまった気がしますが、ただのネタだと流していただけるとありがたいです。
俺は今年の春に大学生になったばかりの1年生だ。
まぁ、この年になると一年生という言葉に感じる感動は薄くなるが、やたらと不安にさいなまれながら勉強漬けの日々を送る大学受験という難関を無事抜けた解放感はあったな。
あ、自己紹介してないか。俺は斉藤忠志。最近ようやくバイトを始めることにしたんだ。
大学はなれるのが大変だった。
高校までとは違うというが、授業を自分で選んで時間割組むのとか、サークルと部活が多くある中から選んだりとか、学科の先輩と仲良くなって伝手を作ったりとか、やることが多い。そして自由になる時間も多い。なれない自炊で結局弁当や外食で済ませたり、飲み会に誘われたり、二次会にのカラオケが盛り上がったりと散財する機会が多いのはたまに傷だが、まぁいいか。
だが、本当にお金が出ていく機会も多いので、バイトを始めることにしたんだ。
学科の先輩に相談したら、自給の高いコンビニのバイトを紹介してもらえた。
店長との面接では、柔道の経験があると言えばかなり喜ばれた。
最近万引きだけでなく、変な客が入ってくることも多いらしく、特に夜勤の店員には自衛手段がある方が
ありがたいんだそうだ。
そんな話を俺はどこか他人事のように聞いていた。物騒だなとは思うが、ここは日本だ、テレビで見たアメリカのコンビニ強盗みたいな銃で脅す様な奴は早々来ないだろうと思っていたんだ。
* * * *
それは、初めて夜勤のシフトに入った日のことだった。
深夜も過ぎて、時刻は4:30という朝が近い時間帯に店内には客が一人しかいなかった。その客も適当なパンを買って出て行ったとき、客が出ていく時に開いたドアから強い風が吹き込んできた。
外は強風が吹き荒れてるなんて帰りが面倒だ。
強風に目をつぶりながらのんきにそんなことを考えてたら、ガシャガシャという音まで聞こえてきた。
金属がなるような音で、強風の被害を受けた入り口付近の棚が揺れているのかと俺は思った。
が、現実は違った。
「おい、そこのもの!」
やけに野太い声だった。風も止んだので目を開ければ、そこには不審者が立っていた。
やべぇ、こいつ馬鹿なのか!?
「おい、聞いているのか!返事くらいしろ!無礼者!」
「・・・い、いらっしゃいませ~」
威圧感ハンパないが、馬鹿なんだな。と俺は残念なその男をまじまじと見た。
「ふん、私はベルセイユ騎士団三番隊隊長、レイモンド・クライスト。現在ある重要な任務の途中だが、食料が切れたのでな、ただちに食料を差し出せ!これは命令だ!」
なんということか!これが店長が言ってた変な客か!
都会ではコスプレした客もはいってくるのか。としみじみ思った。
しかし、食料差し出せって。どういうことだ?
「何をしている!早くしろ!」
「何をお探しでしょうか?」
とりあえず、聞いてみた。店内には食い物がたくさんあるというのに、なんでこのコスプレしたおっさんは俺に差し出せとかいうんだ。自分で適当に探してこいよ。大体さっきの強風とおっさんの汚ねぇ鎧のコスプレの所為で店内が砂やら落ち葉やらで汚れてるから掃除しなきゃなんねぇってのに。
「馬鹿者が!食料を差し出せと言っているだろうが!さっさとしろ!命令に逆らう気か!」
こいつコンビニ使ったことないんだろうか。大体命令って(笑)
「ですから、食料品の何をお求めですか。」
「ん?何って、今すぐ食べれるものか、保存食の類に決まっているだろう!」
つまり、弁当かカップ麺すすめればいいのか?まぁ、此処はカップ麺にしよう。お湯を注げばすぐ食べられるし、賞味期限も長いから保存食としてもばっちりだしな。
「でしたらあちらの商品がよろしいかと」
カップ麺のある棚を示すとおっさんがまた偉そうに言ってきた。
「何をしている。さっさととってこい。あぁ、あるだけ全部だからな!」
まったく、このコスプレしてなりきった感じのおっさんはいい年して自分の恰好が恥ずかしくないんだろうか。しかも、何様のつもりだろうか。お客様は神様なんて言葉があるがだからって尊大に非常識な振る舞いしてもいいってことじゃないっつーの!
俺はしぶしぶ、カゴをとり、その中にカップ麺を放り込んでいった。あるだけと言われたが、そんなに持てないのでとりあえずカゴ二つだ。それを持ってレジに行き、とりあえず置くとおっさんが勝手にカゴを持ち上げた。
「ふん。とりあえずこれは持っていくぞ。」
そういって、そのまま店を出て行こうとするので、俺はあわてて止めに入る。
「お客さま!会計も済ませてない商品を持ち出されては困ります!警察を呼びますよ!」
随分と堂々とした万引き野郎だ。コスプレなんて派手な格好して堂々と万引きしようとは驚きだ。
「ちっ、報酬なら後で国から来る。平民ごときが私を煩わせるな!」
国がお前の代わりに払うとか、んなわけねぇだろうが!このおっさんマジでバカだな。
「代金を国が払うわけないでしょう!ちゃんとお会計済ましてください!本当に警察呼びますよ!」
「ちっ、これでいいだろう。これ以上邪魔をするな!」
そういうと男は金色の何かを放り投げてきた。
とっさに受け取りつつも店からおっさんをこのまま出すわけにもいかず止めようと追いかけると、再び強風が吹き込んできた。
自然を味方につけるとはなんと運のいい万引き野郎だ!
目もあけていられぬほどの強風だったが俺はとっさにおっさんが来た時にさりげなくポケットに忍ばせていた秘密兵器を投げつけた。
ゴウゴウガシャガシャという音の中に小さくパシャッという音が聞こえて、俺は成功を確信した。
風が止んだ頃にはすでにおっさんの姿は見えなくなっていたが、俺は警察に連絡した。
* * * *
俺は警察にコスプレして何とか騎士団とか名乗るイタいおっさんの特徴と、逃げられる前に投げつけたカラーボールのことを話した。そして、おっさんの姿の写った防犯カメラのフィルムを押収した警察は帰って行った。
この話を聞いた店長はまたか!と悔しそうにしていた。
どういうことか?と聞くと店長がよく夜のほかの客がいない時間に計ったように妙なコスプレをした連中が来るらしい。ドレスを着た女、鎧を着た男、マントのようなものをはおった男など様々で、顔を隠したコスプレをしている人間は問答無用で追い出しにかかるらしい。おかげでこのコンビニ、レジカウンター内に不審者を追い出すためのY字っぽい棒が置かれている。で、それ以外の客はさまざまらしい。何も買わずに出ていく客もいれば、今回のように店員を脅したりして堂々と万引きしていく者もいるんだとか。
へ~。都会の流行はコスプレ強盗か。と妙な関心をしたが、しかしあれだけ目立つし証拠映像残すのだからすぐ捕まっているだろうと思えば、そうでもないらしく、犯人どもは一度も捕まっていないらしい。
お気の毒な話だ。このまま万引き被害でつぶれるかもしれない。とポケットに手を突っ込んだら何かが指先に当たり、思い出した。
「あ、店長。今回のコスプレ強盗会計しろって言ったらこんなもん投げて来たんですけど。」
そういって差し出した俺の手のひらには金色に輝く丸い粒が乗っていた。
あえて、いろいろ抜けて書かれているので、後はご想像するなり、詳細求めて活動報告覗くなりしてくださいませ。ただし、この後、コンビニ店長は店じまいします。これだけは決定事項。




