そして…
教会の鐘がなり、人々にその時を知らせる。人々は手に花を持って城に集まった。城の庭では既に花びらが散らされた花道ができあがっていた。
これから皆が待ちに待った国王と王妃の結婚式である。
王妃のクリスティーナはほんの少し前まで評判が悪いことで有名であったが、その噂は今やどこにも残っていない。
披露宴の前、美しい国王夫妻が寄り添う姿など国の誇りと言われたほどだ。
「――と、おまえ、さっきは大人しく隣で立っていたが、何か企んでいるだろう」
衣装換えを済ませたクリスティーナにガーウィンはこっそり言った。二人が進む絨毯の先はテラスに繋がっている。そこから最後に結婚の宣誓を行う。
「何で分かるの?」
クリスティーナの驚いた顔にガーウィンはため息を付いた。
「慣れている。おまえは何もしていないときほど危険というのは百も承知だ。で、何しようとしている」
「ちょっと、ね。恋のキューピットとなるだけよ」
「他人に迷惑はかけてないだろうな」
「もちろんよ!」
カーテンが開けられ、白い光が二人を照らす。甘い匂いと花吹雪がこちらまで飛んでくる。ガーウィ
ンはふうと息を吐き、それからあまり見ることのない優しい笑みを浮かべた。
「まあ、いいか。今回は大目に見てやろう」
「国王陛下、王妃様、そろそろご準備を」
外からは割れんばかりの拍手が鳴り響いている。クリスティーナはブーケを握り直した。遠くにいるニケにどう助走をつけたらブーケは届くだろうかとぶつぶつ思案していると、隣でガーウィンは言う。
「けれども、今日の主役は俺達だからな。人を幸せにするのもいいが自分もな」
「分かっているわよ!」
「さあ、それはどうかな」
ガーウィンはため息を付いてふわりと腰に手を添える。聞こえないだろうが、クリスティーナの鼓動はそれだけで激しく波打つのだ。
無愛想で人のことを化け物だと思っていて、チキンで…。駄目なところをあげればきりがない。でも、そのことに嫌になったとき、ふと顔を上げればたまにしか見せない優しさがあるのだ。
「それじゃあ、行くか」
ガーウィンが首で光をさし、クリスティーナは頷いた。
そして、二人は共に歩みだした。
完
最後まで読んでくれた方へ多大なる感謝を捧げます!
ありがとうございました!!
この話もとりあえず番外編なのですが、そのまた番外編として新たにアップするかもしれません。今は完結とします。
あとがきらしきものは活動報告で。




