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啓翁桜6




(クシュン)

また風邪引いたかなぁ


12月になるとかなり寒さも増してノアの鼻も忙しくなり始めていた



キー坊と大樹

二人の男の狭間で揺れていた


キー坊にはっきり言おう

ノアは心に決めてた言葉を何度も呟いていた



キー坊にメールをしてあの公園を待ち合わせ場所にした


何もかもが始まった公園

終わりも始まりと同じ公園でとノアは思った



ノアは自転車に乗り公園に向かった

頭の中ではキー坊との出会いから今までがグルグルとまわっていた



もしあの時ミーマイの誘いを断りきれていたなら今こうしてる事もないんだろうと思いながら自転車を走らせる



公園に着くとキー坊は来ていた



おぅ

久しぶり

全然連絡つかねぇーしなんでメール返さないんだよ



キー坊はちょっとイライラした態度をとっている


ノアが何度も練習した言葉を言おうとしたが



まぁ連絡してきたしいいか

今日は俺行きたい所あるから一緒来てよ

ちょっと遠いからバイクで行くぞ


タバコの煙りを吹き上げながらキー坊はヘルメットを投げた



ノアは慌ててヘルメットを取ろうと手を出すがヘルメットは転がった



…無理

今日は絶対引かない

このままじゃ何も変わらない


ノアは時間ないからここで話をしよう言ったがキー坊はあの鳥肌がたつようなバイクのエンジンをかけた



大事な話があるから聞いて

そんなノアの言葉を掻き消すようなバイクの騒音



キー坊は俺の用事はすぐ終わるからそれだけ付き合えと引かない




…まただぁ

ノアはあれだけイメージしてきた言葉を口に出せない自分に嫌気がさす


唇を噛み締め

ため息をはく


…最後だから

自分を納得させるように心の中で呟く


どこに行くんだろう…

早く時間がたたないかなと思っているがバイクの爆音だけが無情にも響く



ふと正面に目を向けると大きな建物が見える



…病院?



キー坊は慣れた感じでバイクをとめた



何も言わないキー坊の後ろをノアはついていく



病室の前でとまるとキー坊が口をひらいた




ノア…この部屋に他人を入れるのは初めてだからな



全てを俺に任せてくれ



…何を任せる?


ノアは意味がわからなかった



キー坊がドアを開けるとベットに人が見える



…誰?



キー坊は当たり前のようにベットの隅に座った



どう?調子?

今日は紹介したい子連れてきたよ



ノアは全く状況がつかめない



ベットには横になった女性がいる



今付き合ってる彼女のノアいつも話してる子だよ



ベットの上で女性は笑顔でキー坊の話を聞いている



初めましてノアさん

いつも瑞樹がお世話になってます


ごめんなさい

こんな姿で挨拶して

ちょっと体調が悪くてね



ノアは慌てて首を横にふる

えっ?

お母さん?


キー坊が行きたいとこって入院してるお母さんのところだったの?

とてもキー坊からは想像できない感じの母親


どーして入院してるか気になるが笑顔で会話している

しかし顔は妙にやつれていた



何か病気なんだろう

ノアは二人の会話に入る事もなく静かに話を聞いていた




病室を出る時に母親に呼び止められた



ノアさん

瑞樹をよろしくね


バカな事ばっかりしてるけど根は優しい子だから

あなたみたいな素敵な子だったら私も安心できます



…何も言えない

別れ話をするつもりがお願いされるとわ…



母親は手を伸ばしてきた


ノアは握手をしたがその細さにびっくりした


しかし握る手には力がしっかりと入っており母親の瞳はノアを真っすぐと見ていた



どうしよう…

ノアは言葉がでてこない



病室から出た二人だが沈黙が続いている



母さん癌なんだ

末期のね…



キー坊が切り出した



…そっかぁ

声にならないノア




どーしても会わせたかったんだ

先週先生が余命あと三ヶ月だって言ってた


少しでも安心させたかったのとノアにも知ってもらいたかったんだよねこの状況


…うん

どう答えていいのかわからないノア



俺もヤンチャばっかりしてたから最後くらい安心させてやりたいんだよ


毎日とは言わないけど一緒に見舞い来てくれない?


キー坊の口調はいつもと違い優しかった



なんて言えば…

別れ話をするつもりがこんな事になるなんて…



わかった…

ノアはそう言うしか言葉が見つからなかった


あんなお母さんの姿見たら行けないなんて言えないよ

キー坊は何も悩みなんてないと思ってたのにあったんだ…



帰ろうか


そー言ってキー坊はバイクに乗った



あっ

ノア話あるって言ってたけど何?

急ぎだった?



このタイミングでキー坊に言える話はないよ

どうなるんだろう私この先…



ノアはなんでもないよと言ってバイクに乗った



帰り道バイクに乗っていると不思議とキー坊の腰に回す手に力が入った


妙に寂しさと切なさが込み上げてくる


ノアは溢れる涙をキー坊の背中で抑えていた

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