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啓翁桜4



店先で合流した二人は軽く頭を下げ店へと続いた



ノアはまともに顔を見る事が出来ず下を向いたままゆっこの後をついていく




ゆっこは積極的に話をするがノアはもちろん話し掛けられない



店に入るとノアは驚いた

今まで入った事がないくらいお洒落な店である



あぁ

大人の人っていつもこんなところで食事しているんだぁ



ファミレスしか知らないノアにしてみればお酒を飲む店は新鮮であり興味の固まりであった




席に座り目の前には知らない男の人が座っている



ノアは落ち着かずそわそわしていた



するとゆっこがとりあえず飲み物頼んで自己紹介しようか


と言った



みんなビールを頼むと言うがノアは飲んだ事もない


ノア

何飲む?

お酒大丈夫?



…飲める訳ないじゃん

てかいつから高校生がお酒飲めるようになったの…



ゆっこのためらいのない当たり前のような行動にびっくりする


ゆっこはもう大人なんだなぁ

私の知らない事いっぱい知ってるし何より経験してるしなぁ



そんな事を考えながらノアはオレンジジュースを頼んだ



まずはゆっこが切り出し自己紹介を始めた


さすがゆっこ

照れる事もなく慣れた口調で話す



ゆっこが話が終わるとノアに振ってきた



ノアです



…精一杯だった

一言だけで言葉はもう出てこなかった



男の人達が自己紹介する


初めまして

俺達也っていいます

年はハタチで普段は大学行ってるよ



…えっ

ゆっこの元カレと同じ名前じゃん

懐かしいなぁ

たつ


ゆっこと四年付き合って高校に入って別れた元カレ


ゆっこの初めての彼であり初めての相手である



なんかどことなくたつに似てるなぁと思っているともう一人が喋り始めた



初めまして

名前は大樹っていいます

年は19でたつと同じ大学行ってるよ



ノアの目の前で自分の事を話す大樹にノアは好感を持っていた



こういう人が大人っていうんだよなぁ

雰囲気も言葉遣いもしっかりしてるし


脳裏にキー坊がよぎった


ため息が出る

なんでこうも違うんだろう…


初めからこういう人と出会えればよかったのに…



時間が経つにつれて緊張もほぐれコンパの雰囲気に慣れてきた



ノアちゃんさぁ

彼氏いるの?



大樹が聞いてきた



…えっ

どーしよう

何て答えればいいのか悩む

キー坊と付き合ってるといえるだろうか

一方的な話で私の気持ちは無視されてるし、だいたいなんでこんなに私が考えなきゃいけないんだろぅ



ねぇ?ノアちゃん?



ノアはいないよと答えると大樹は笑顔になった



少し悪いような気もしたが今日だけだしキー坊の対策は後から考えようとノアは思った




その後も話は盛り上がり、いつの間にかゆっこは達也とノアは大樹とペアーになっていた



時間も経ち店を出る事になったが会計の際ノアはびっくりした



お金はいいよと二人はいう


ノアは自分も食べたし飲んだんだから払うのは当たり前と言うが気にしなくていいと言われる



ゆっこが耳元で気にしなくていいよ普通だよ


という



…これが普通?

男の人が払うものなの?

ゆっこは平然としているが私には理解できない



ノアはまた違う世界に足を踏み入れたような気がした


店を出ると街は人でいっぱいだった


ゆっこがノアに呟いた



ノア

私、達也に家呼ばれちゃったんだけど抜けて大丈夫?



えっ

ノアは一瞬意味がわからなかったが確実に店を出た時点で二組になっている位置に立っていた



うそ…

無理だし

二人っきりじゃ話せないよ


ノアは必死にとめたがゆっこは聞いていない



話が進まずにいると大樹が二人で話そうとノアの手をとった



すると流れに乗りゆっこ達も手を振り人込みの中に吸い込まれていった




…あぁ

なんでこんな風になっちゃうんだろう

来た事に後悔しながらも、すでに二人っきり



大樹はブラブラしようかといい歩き始めた

ノアも歩くぐらいならと後ろをついて行った



街を抜け小さな公園が見えるとあそこで話そうかとベンチをさした



ノアは頷き

二人並んで座った



座るなり大樹が喋り始めた


ノアちゃん彼氏いないって言ってたけど好きな人いるの?


…好きな人はいない

付き合ってる人はいるようないないような…

なんて説明すればいいだろう


今日だけと言う気持ちでいないと言ったが二人きりになるとまた別の話だ



しかし大樹の真っすぐな視線を感じるといないというしかなかった



…また嘘ついた

散々ゆっこの行動を有り得ないと言っていたが私がしてる事も最低じゃん


何で言えないんだろう


ノアは大樹が少し気になっていた

周りにいない大人の雰囲気何より優しさが伝わってくるからだ



ならさぁ

ノアちゃんの彼氏に立候補しちゃおうかな



えっ?

どう答えていいのかわからない

さっき会ったばっかりなのにいきなり言われても…


キー坊と一緒じゃん…



すぐにとは言わないけど少しずつ俺を見ていってほしい

ノアちゃんに俺が相応しいかどうか時間をかけて決めてくれないかな?



ノアは悩んだ

単純な糸が、ぐちゃぐちゃにほつれかかっている

今引き返さないと取り返しがつかなくなると…



だからメールからでもよろしく

どうかな?



…嫌じゃない

しかしここでキー坊の問題も解決しないまま進んでいいのか?

更に悩む


爆音が響き始める

だんだん近くに聞こえてくる



…まさか

ノアはとっさに大樹に抱きついた


肩に顔を埋めて横目で道路を見る



…あぁ

あのバカ


しっかり先頭を走りながら車も歩行者もお構いなしに走っている



何をしてるかと思えば迷惑そうなバイク数台で自分の道路のように走っている


最後尾には

…ミーマイの彼氏じゃん


横目で見ながらため息が出る

一気に現実を突き付けられた気分になった



ノアは無性にいらいらした付き合ってるとは思ってないが彼氏と周りに公言しといてこの大迷惑行為…




ノアちゃん?いきなりどうした?



あっ

ノアはまさかと思い条件反射で大樹に抱きついてしまったのだ



ノアは恥ずかしさで顔が真っ赤になる



ゴメンなさい

私帰るね


ノアはもうどうしていいかわからず早足で街の方へ向かった


しかし自分の気持ちの変化には少し気付きながらも…

季節はもうクリスマスまで一ヶ月をきっていた

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