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 翌日、早朝を狙って先輩の下駄箱に傘を返した。上履きの隣に折畳み傘を置き、茶色い紙袋を奥に押し込む。紙袋の中に借りたタオルと、プレゼント包装したタオルを入れた。

 昨日、混乱から立ち直ったあと考えた。何故先輩は受け取ってくれなかったんだろう。いくら学校の期待がかかっているからといって、サッカー部が厳しいという話は聞いたことがない。

 だとしたら不機嫌だったとか、何か気に入らないことがあったのだろうかと思い至った。お礼の品の一つも持たなかったのがいけなかったかと、駅前まで行って似たようなふかふかのタオルを買ってきた。借りていたタオルも洗いはしたけれど、それを素手で、しかも傘とかさねて持っていたから不潔に思われたのかもしれない。もう一度洗い、仕上げの柔軟材を倍量使った。下手にかわいらしい袋に入れると悪目立ちしてしまうかもしれないからと、わざとそっけない袋に詰めた。

 考えられるだけの手を尽くした、と郁は下駄箱にむかって満足顔でうなづいた。

 最初からこうすればよかったのだ。朝美に言われて下駄箱という手があることに気付いた。うんざりしながらも一緒になって考えてくれた朝美に感謝した。


 始業まであと十五分というころになると昇降口は途切れない程度に人が行き交うようになる。十分後には人にぶつからずにはいられないほどごったがえすとは思えないくらいゆったりしている。

 そんな中で国立智弘は一人険しい顔をして佇んでいた。手にしているのは桜色のカード、腕には口を開けた紙袋をかかえていた。

「何それ? ラブレター?」

 クラスメートで友人の克史かつしが声をかけた。智弘は克史の目線からカードを取り上げ、学ランの胸ポケットに落とし込んだ。

「ちょっと用事」

 智弘は紙袋の口を巻いて、しかめ面のまま早足で立ち去った。

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