第2話 後編
次に目が覚めた時、俺はロボットの中で寝転がっていた。
俺は上体を起こして周囲を見回す。
「うっ、ここは……」
『動かないでください。治療中です』
音声の警告があったので大人しく従う。
よく見ると、金属のチューブが俺の背中と繋がっていた。
察するに背中の傷を治しているようだ。
「お前が、助けてくれたのか」
『はい。竜の細胞から抽出した再生遺伝子を注入しました。肉体の微細な変異は起きましたが、命に別状はありません』
「変異って……」
俺はぎょっとして自分の手を見る。
指や手の甲の一部が鱗に覆われていた。
爪も心なしか尖っている。
確かにドラゴンの細胞の影響が出ている。
鏡で顔を確認するのが途端に不安になってきた。
「これ、元に戻るのかな……」
『変異は一時的な現象です。恒常的なものではなく、時間経過で竜の機能は失われます。短期間で何度も再生遺伝子を打てば不可逆の変異も可能ですが、どうしますか?』
「えっ……まあ、考えとくよ」
『承知しました。希望の際はいつでもご命令ください』
俺は最弱のFランクハンターだ。
さっさと強くなれるなら、手段なんて選んでいられない立場である。
しかし、自分が人間ではなくなっていくのはちょっと怖い。
負傷したらまた頼ることになるだろうが、率先して使うのは控えようと思う。
自分の状態を知ったところで、俺は周囲を見回す。
そこは遺跡のような暗い部屋であった。
まだダンジョンの内部にいるらしい。
ロボットは室内をライトで照らしながら、瓦礫やガラクタを掴んで機体に押し込んでいる。
「さっきから何をしてるんだ?」
『付近のアーティファクトや、機体の材料および燃料になる素材を回収しています。いずれも亜空間に保管してあります。リストを作成したのでご覧ください』
操縦席からタブレットがせり出してきた。
液晶画面には膨大な量のアイテムが羅列されている。
試しにスクロールしてみると、まったく終わりが見えてこない。
すべて確認するのは相当な時間がかかりそうだった。
「こ、これを全部集めたのか!?」
『はい。今後の活動を考えると、資金や強化素材が必須です。ダンジョンの撲滅に向けて合理的な行動かと』
「確かにそうだな。ありがとう」
『いえ、当然のことをしているだけですので。ところでマスター、改めて自己紹介をしたいのですが、許可をいただけますでしょうか』
「え? ああ……じゃあ、頼む」
俺は特に何も考えずに頷く。
次の瞬間、ロボットが白煙を噴き出した。
機体の前部が大きく展開し、そこから青い髪の女が飛び出す。
真顔の女は、俺の前に着地して名乗る。
「――対異界機装兵KG-80A試作型、通称ハチです。以後お見知りおきを」




