第1話 前編
その日、俺はFランクダンジョンの二階層にいた。
金属バットを担ぎ、廃墟のようなエリアを進んでいく。
この辺りは強いモンスターが出てこないが、代わりに金になるものも皆無だ。
ガラクタばかりで収穫はほとんどなかった。
「はあ、なんもねえじゃん……」
ため息を吐いていると、前方からプチスライムが接近してくる。
ぽよんぽよんと跳ねるプチスライムは、とにかく弱いのが特徴だった。
あまりに弱いのでFランクの俺でも苦戦することはない。
「はいはい、かかってこいよ」
俺は金属バットでプチスライムを叩き潰す。
死骸から転がり出てきた魔石を拾ってポーチの中に放り込む。
ポーチ内には同じようなサイズの魔石が何個か入っていた。
どれもプチスライムのものである。
「これっぽっち……またしばらくはカップ麺生活だな……」
本音を言えばもっと稼ぎたい。
そのためには高ランクのダンジョンに挑戦する必要がある。
しかし俺はどうしようもなく弱い。
それこそプチスライムみたいな実力なのだ。
ハンターになれたこと自体が奇跡とまで言われるほどで、否定できないのが悔しい。
とにかく自他ともに認める最弱のハンター、それが俺だった。
(せめて他のパーティに入れてもらえば……って、俺なんかと雇う人はいないんだよなぁ。せめてハンターとして特技の一つや二つあればいいんだけど……)
悩みながら歩いていたその時、突如として床が崩落した。
俺は土煙と一緒に闇の中へ滑り落ちていく。
「うわああああああああああぁぁっ!?」
数秒後、俺はゴミ山の上に落ちた。
身体はあまり痛くない。
ゴミが上手くクッションになってくれたらしい。
俺は土煙にせき込みつつ、周囲に視線を巡らせる。
懐中電灯を使って照らすと、そこは石造りの遺跡のような空間だった。
すぐそばには閉ざされた扉がある。
(知らない場所……ひょっとして未探索エリアか!?)
誰も知らない場所なら、お宝が眠っているかもしれない。
つまり大儲けのチャンスだ。
ゴミ山から下りた俺は一気にテンションを上げる。
一方で理性は、この状況が危険であると訴えていた。
ここが本当に未探索エリアの場合、未知の敵が襲ってくる恐れがある。
Fランクの俺ではほとんど対処不可能だろう。
俺は閉じた扉を前に迷う。
しばらく葛藤した末、自分に言い聞かせるように結論付ける。
(ちょっとだけ調べよう。危なかったらすぐ逃げればいいし……)
そうして俺はゆっくりと扉を開ける。
懐中電灯を差し込んで室内を照らし上げる。
まず最初に気付いたのは、赤い鱗に覆われた巨体だった。
次に爬虫類のような大きな目だ。
その目はじっとりと俺を見下ろしている。
「え……?」
扉の先に待ち構えていたのは巨大なドラゴンだった。




