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工場長の恋

クリスが倉庫にやってきて半年が過ぎた。

最近クリスが気になって仕方がない。

ついついクリスを目で追ってしまう。

危ないことしてないか。

栄養は足りてるか。

プロテイン量は。

女性だし鉄分を増やしたほうが良いか。

繊維質はどうか。

すべてが気になる。

これは保護者のような気持ちなのか。

たしかに猫の毛並みは気になる。

猫の毛並みと栄養状態はイコールだからな。

それと同じなのだろうか。


あと最近体調がすこし悪いのも気になっている。

時々、動悸がするんだ。

急に心拍数が高くなる。

塩分は5g以下だし、高血圧とか心臓病系ではないと思うんだが。

一応念のために会社の社医に相談してみた。

血液検査をしてみて、心電図も撮ってみて。

軽い精密検査をしたけども。

どこも異常がない。

社医に聞かれたよ。

その動悸がする時の特徴はと。

俺は答えた。

「甲南が近くにいる時になる」

と、

すると社医は。

「甲南は苦手なのか?ストレスがかかるのか?」

と言った。

俺は、

「そんな事はない。むしろ楽しいんだ」

と答えた。

社医は言った。

「それならなんの問題もない。ほっておけばいい」

と答えた。

俺は言ったよ。

「薬はないのか」

と。

社医は言った。

「薬はない。自分の気持ちに素直になるだけだ」

とそう答えた。


そして

「人生は短い。好きなものは好きと言える奴が、本当の強者なんだ。

お前さんはどっちだね」

そう言い残し帰っていった。


……

先日クリスが実家に帰った。

大好きな小説の一節がどうしても気になり、それを読むためなんだが、

電話がかかってきた。

迷子になったと。

俺はすぐに現場に直行する。

場所はクリスの実家のところ。

しかし風景がまるで違う、

ナビを見てもクリスの実家。

でも実家がない。

困惑するクリスを横目に、俺は近所の人に声をかける。

「ここに家はありませんでした?」

と、

近所の人は

「5か月ほど前に売りに出されて、すぐに更地にされましたよ」

と言った。

「住んでいた人は?」

と聞くと、

「あまり近所づきあいのない人でしたからね。ただ売りに出される少し前に、リサイクルショップのトラックが3台ほど止まってて荷物を運んでいたので、家財道具全部売ったんじゃないですか?」

と言った。

俺はそのリサイクルショップの名前を聞き出し、クリスと見に行く。

するとそこには、クリスの家にあった荷物が売られていた。


俺は

「この荷物を売った人は?」

と店主に聞く。

「個人情報だからね」

と言ったので、

すこし顔をしかめた。

「これは独り言だけど、引越しするって言ってたよ。だから全部荷物を売るんだって」

と店主は言った。


クリスの顔が明らかに強ばっている。

「なんか必要な荷物はねぇか?俺が買い戻してやる」

というと、クリスはあれこれ見だした。


そして一本の日本刀を見つけ。

「コレ」

と言った。値段は35万円。


俺が店主に

「これは?」

と尋ねると、

「これはうちの先代が30年前名家から買い取ったもので……」

と説明を始めた。


「おい。クリス。お前の荷物じゃねぇじゃねぇか」

と言ったら、

「ちっ」

と舌打ちをした。


とりあえず、欲しい荷物はないということで、俺らは倉庫に帰る。


……

俺たちが倉庫につくと、そこには黒塗りの高級外車五台が停まっていた。


なんだ。


俺らに気が付き、近くに寄って来る黒服。


「お嬢さん探しやしたぜ」

と黒服が言った。


「お前達は何もんだ」

と俺は言った。


「だまれチンピラ」

と黒服は言った。


「あなた達はなにもの」

とクリスは言った。


「安達甚五郎の手下でございやす」

と黒服は言った。


「安達甚五郎?誰だ」

と俺は言った。


「黙れって言ってるのがわかんねぇのかチンピラ」

と黒服は言った。


「安達甚五郎って誰なの?」

とクリスは言った。


「お嬢さんは裏社会の重鎮 安達甚五郎の娘さんでして。

あなたの母親は、足立甚五郎の元マブ。つまり愛人なんですぁ」

と黒服は言った。


なに?クリスが安達甚五郎の娘……

知らんけど。


「私の両親はいるの?」

とクリスは言った。


「いますぜ、ここに。オイ連れてこい。こいつらコソコソ18年も逃げ続けて」

と黒服は言った。


「やっぱりあなたは疫病神。あなたなんて産まなければよかった」

とクリスの母親は言った。


「じゃあなんで産んだ」

とクリスは言った。


「時期的に彼の子かもしれないと思ったのよ。出産してからDNA鑑定で気が付いた。あなたは安達の娘だと」

とクリスの母親は言った。


「お嬢さん……、こいつら始末しましょうか?」

と黒服は言った。


「そうね。始末して」

とクリスはそう言った。


黒服たちは一斉にクリスの両親に銃口を向ける


「へぇ?

ちょっとまてクリス。

そこはクソみたいな奴でも、母親だし育ての親よ。

開放しなさい。とかじゃねぇか。めっちゃ裏社会の人間になってるぞ」

と俺は言った。


「あっしまった。ついつい裏社会に染まりそうだった。これも工場長の影響ね。

ちょっとタンマ。えっと工場長なんだっけ」

とクリスは言った。


黒服たちは拳銃を降ろした。


「そこはクソみたいな奴でも、母親だし育ての親よ。

開放しなさい。だよ」

と俺は言った。


「クソみたいな奴でも、母親だし育ての親よ。開放しなさい。(棒読み)」

とクリスは言った。


「おい。お前ら開放しろ」

と黒服は言った。


クリスの両親は解放された。


「覚えてろよ」

とクリスの両親はそういい逃げて行った。


「おい。黒服の兄さん。あの状況で覚えてろよっておかしくねぇか」

と俺は言った。


「気があうな。俺もそう思ったぜ。ところでお前。不戦の明王じゃねぇか」

と黒服は言った。


「そうよ。不戦の明王よ」

とクリスは言った。


「そうか。不戦の明王か。お嬢さんもいいの捕まえましたね」

と黒服は言った。


「そうなの。いいのなの?」

とクリスは言った。


「えぇ不戦の明王なら、親分も文句をいわねぇでしょう。

では行きましょう」

と黒服は言った。


「えぇわかったわ。じゃあ行くわよモリヒト」

とクリスは言った。


「おぉう」

と俺は言った。


一体俺はどうなってしまうのか。

あと……クリスは何をわかったのか。

まさか、クリスが裏社会の人間だとは思ってもいなかった。


まぁいい。クリスを守ると決めたのだから


END

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