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序章
覚醒は突然だった。
漆黒の空に浮かぶ白い月と、それをとりまく金の星々。そして、どこまでもどこまでも続く冷たい銀色の砂。それが彼の瞳に映る世界の全てだった。
横たえられた体を持ち上げる。立ちあがろうと力を入れると、左足に鋭い痛みが走った。覚えのある感覚に、少年は自分の足の骨が折れていることを悟る。なぜそのような事態になったのかは覚えがなかった。というよりも、自分がいったいどこにいるのかさえ分からない。
ただ、肌に感じる砂の冷たさが心地よい。まぶたが重い。自分がとても疲れているのを自覚する。何も考えたくない。そうして彼はふたたび体を投げ出して、思考をじょじょに放棄した。
そのとき世界は彼を受け入れた。