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勝負下着

三人と分かれた後、千夏はアパートに帰宅した。早速パソコンを開き、ECモールへアクセスした。


何を調べよう。美穂には勝負下着をと言われたが、正秋にドン引きされないか不安だ。だったらもう少し刺激が少ない方が、下品にも見えなくていいんじゃないか。だが、もう少し刺激が少ないもの、というのが自分でもよく分からない。

千夏は悩んだあげく、何気なく室内を見回す。壁にはまだ吉高由里香のポスターを貼ったままにしてある。千夏が痩せるイメージを持ち、ダイエットに励むために大活躍したものだ。その吉高由里香と、目が合った。

「水着か」

千夏は独り言をいい、大きく頷く。季節は夏真っ盛りだ。検索欄に何も文字を打たなくとも、ページのトップに「レディース水着セール中」の大見出しがある。千夏はそのページにアクセスし、さまざまな水着を閲覧し始めた。


閲覧すること三十分、千夏は気に入った一着をポチった。シンプルな白いビキニで、素直に着てみたいと思ったのだ。だが、ポチった後で悩み始めた。


自分が着たい水着と、男が喜ぶ水着は違うのではないか。だけど、男が喜ぶというと絶対「こういう路線」ではない。だけど「こういう路線」は正秋以外に見られたくはない。二人しかいない場所で見せるものだったら…。


千夏はドキドキしながら、サイトの検索欄に「勝負下着」と打ち込む。すると、出るわ出るわ、ありとあらゆるセクシーなブラやパンティ、パンスト類がヒットした。


千夏はこれまでの人生でこういったジャンルの下着を買ったことはなかった。百貨店や量販店で、下着売り場にギリギリ置けるラインのものは何度か手に取ったことはあるものの、それすら恐れ多いと思っていた。スケスケ素材や総レース、Tバックなどは別次元の女達が所有するものであって、自分には一生縁がないもの、買う側になるなど思ったこともなかった。だからこそ、このとき目にするものの過激さ、その思いきりの良さに目を見張った。


「こんなの着てたら、男はドン引きするんじゃない…?」

千夏は画面越しに、局部丸見えのパンティを凝視しながらひとりごちる。だめだ。あまりにもエロすぎる。こんなのを着ていたらスキモノに思われてしまう。エロ女認定されて、何をしても許されると認知されたらおしまいだ。ただでさえ、正秋からはドMだとバレている。それは否定しないが、実際、冬馬とのセックスはいつもノーマルだった。アブノーマルは忌避したい。第一、自分の名誉に関わる。でも。でも。


同時に、千夏はめくるめくランジェリーの世界、強烈なエロの暴力に理性を破壊されつつあった。どうやらカラーバリエーションも豊富らしく、黒だの深紅だの純白だの、際限がない。素材もシルクやらサテンやらありとあらゆる艶やかさ、その魔性ぶりを惜しみなく曝け出し、購買欲を掻き立ててくる。下着のスタンスはちょいエロから激エロまで幅が広く、もうセックスするために着ろと言われているようなものだ。実際、そのようにデザインされているのだろう。


これだけラインナップが充実しているということは、そのように自分を演出したい女、そういう女に興奮する男、そういった展開を期待するカップルが少なからずいる証でもある。千夏や美穂に限った話ではない。もしかしたら隣人も下の部屋の住人も、こういうのを一着や二着、持っているのかもしれない。テレビの向こうで済ましている女子アナも、お笑い芸人も、政治家だって、みんなみんな、この恩恵を受けているのかもしれない。


千夏はそれぞれの商品についているコメント欄にも注目してみる。「彼とのマンネリ防止に最適」だの「これを着たら年々減ってる旦那との営みが増えた」だの「家内につけさせて毎回興奮している」だの、スキモノどもが言いたい放題コメントしにきている。実に平和な世界線だ。人類皆兄弟という言葉が急にしっくりきて、千夏は妙に勇気づけられた。


誰に迷惑をかけるわけでもない。ひどかったら処分すればいい。そうだ。正秋も変態を自認し、変態女が好きだと堂々告白していた。だからきっと大丈夫だ。千夏は勇気を出してそう結論づけ、試しにブラとパンティの上下セットを一つ、ポチることにする。何やら人気商品らしく、届くまで少し時間がかかるらしい。千夏はドキドキしながら、それに見合う体に磨きをかけるべく、トレーニングしながら待つことにした。

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