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神様、拾いました。  作者: 久悟
第二部 陰謀と深淵
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第14話:二つの世界の連携

「――詩織……?」


 朦朧とする俺の意識の中。その声は幻聴ではなかった。遠く、そして途切れ途切れではあるが、確かに詩織の魂の叫びが、俺の脳内に直接響いてきている。

 彼女も無事だったのだ。そして、俺と繋がろうとしてくれている。その事実が、消えかけていた俺の心の炎を、再び燃え上がらせた。


 ――俺は、まだ戦える!


「神座! 今の声の発信源を特定できるか!?」

『――困難ですが、試みます。霊的接続の逆探知を開始』


 神座が、俺の魂をアンテナのようにして、詩織の声の座標を探り始める。

 その間にも、双子の猛攻は止まない。


「――まだ立っていたのか。しぶといな」

「いい加減諦めなよ、お兄ちゃん」


 風の刃と音の衝撃波が、容赦なく俺を襲う。

 俺はからかさ様を必死に構え、耐え続けた。

 一人じゃない。詩織が俺を呼んでいる。

 その想いが、俺の盾をより強固なものにしていた。


『――特定、完了。詩織殿は、我々がいるこの迷宮と表裏一体をなす、別の鏡面次元に存在します』


 鏡面次元。

 つまり、俺たちがいるこの場所と、ほぼ同じ座標の別世界に彼女はいるのだ。


 ――詩織! 聞こえるか!


 俺も、ありったけの想いを込めて、心の中で叫んだ。今度は、俺から彼女へと魂の声を届ける。


 ――聞こえたら返事をしろ! 俺は無事だ!


 数秒の沈黙。

 そして。


 ――宗佑! よかった……!


 彼女の安堵に満ちた声が、はっきりと返ってきた。

 繋がった。

 たとえ世界が分かたれていても、俺たちの絆は、それを超えたのだ。


「……何してるの? 一人でぶつぶつと」

「気味が悪いね。いよいよ、頭がおかしくなったか」


 双子が、訝しげにこちらを見ている。

 俺は、にやりと笑い返してやった。


「――お前たちの負けだ」

「……は?」


 俺は詩織に、心の中で語りかける。


 ――詩織、よく聞け。この迷宮は、奴らの神域だ。その力の源となっている『核』が、どこかにあるはずだ。内側から俺がその場所を特定する。お前は外側からそこを叩け。


 ――わかったわ!


 詩織の力強い返事。

 俺は、神座に最後の命令を下す。


「神座! この迷宮で、一番霊的な歪みが大きい場所はどこだ!」

『――座標、特定。北東三十メートル先。ひときわ大きな鳥居です』


 ――詩織! 一番でかい鳥居だ!


 俺はその場所へと、最後の力を振り絞り、駆け出した。

 もちろん、双子がそれを見逃すはずがない。


「逃がすか!」


 風の刃と音の衝撃波が、俺の背後から迫る。

 だが、もう俺は振り返らない。俺の背中は、俺が守る必要はない。

 なぜなら。


 ――桜華一閃(おうかいっせん)


 俺のすぐ横の空間が、突如裂けた。

 そして、その次元の裂け目から桜色の炎の斬撃が迸り、俺に迫っていた風と音の攻撃を、全て薙ぎ払ったのだ。

 詩織の剣。

 彼女は俺と魂が繋がったことで、俺がいるこの次元に、限定的ながら干渉できるようになったのだ。


「なっ……!?」

「ありえない……!」


 双子の驚愕の声が響く。俺は走りながら笑った。

 これこそが、俺たちの本当の連携。


 ――二つの世界の、コンビネーションだ。


 俺はついに、目的である巨大な鳥居の目の前に辿り着いた。

 そして、詩織に最後の合図を送る。


「――今だ! 詩織! やれえぇぇぇっ!」


 俺の魂の叫びに呼応して、別次元にいる詩織が、ありったけの神気を込めた最大級の一撃を放った。

 彼女の炎の剣が次元の壁を貫き、俺の目の前の巨大な鳥居を、内側と外側から同時に粉砕した。


 ゴゴゴゴゴゴッ!


 迷宮の「核」を破壊され、空間が悲鳴を上げる。赤い鳥居がガラスのように砕け散り、世界が白い光に包まれていく。

 

 双子の悔しそうな捨て台詞を最後に、俺の意識は、その光の中に呑み込まれていった。

【作者からのお願い】


読んで頂きありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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