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第1話:初めての出会いと一目惚れの夏


中学3年生の夏休み。私、清原飛香きよはら あすかは、歴史や戦国武将が好きで、戦国時代のことを調べたり御朱印巡りをするのが趣味の内気な女子だ。

そんな私が、まさか人生で一番の「運命の瞬間」に出会うなんて、その時は思いもしなかった。


その日、親友の悠依ゆいに誘われて、とあるライブに足を運ぶことになった。

正直、アイドルのライブなんて初めてで、正直緊張していた。普段は歴史の本を読んだり、神社巡りをしたりして過ごす私にとって、煌びやかなステージは異世界のようだった。


ライブ会場に入ると、ざわめく観客たちの熱気が肌を包んだ。ライトの明かりがキラキラと瞬き、心臓の鼓動が自然と早くなる。

「飛香、大丈夫?」悠依が隣で笑いかける。私は小さく頷いた。


やがて、ステージが暗転し、一人の男性が現れた。彼の名前は高瀬大翔たかせ ひろと。慶應義塾大学三年生で、俳優兼モデルとしても活動しているという。


彼は軽やかなステップで舞台中央に立つと、透き通った声で歌い始めた。

「うわ……かっこいい」私は胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。


彼の目は真剣で、一つ一つの動きに魂がこもっている。舞い踊る彼の姿は、まるで現代の戦国武将のように凛々しくて、決して揺らぐことのない強い意志を感じさせた。


「これは、一目惚れだ……」

ライブの照明の中で彼が放つ輝きに、私は瞬く間に心を奪われた。


終演後、興奮冷めやらぬまま悠依と話した。

「ねえ、あの人って大学生で俳優もやってるんだって!」悠依は目を輝かせて言った。

「大学生……?」私は不意に現実に引き戻され、胸のときめきと同時に遠い存在だと感じた。


それからというもの、彼のことが頭から離れなかった。

家に帰っても、歴史の本よりも彼の笑顔が浮かぶ日々。


そんなある日、高校1年生になった私の家に一人の青年が家庭教師として訪れる。

その人こそ、あの高瀬大翔だった。


母親同士が中学高校の同級生だったことがわかり、私たちはさらに近い存在になる。

偶然の連続が、まるで運命の糸で結ばれているようで、私は胸を高鳴らせた。


「これから、どんな未来が待っているんだろう……」


その夏、私の青春は彼に恋する秘密の音色で満たされ始めたのだった。




ライブの熱気がようやく冷めた帰り道、街のネオンがゆらゆら揺れていた。

私の胸はまだ高鳴っていて、言葉にできない感情がこみ上げていた。


「飛香、どうだった? やっぱりすごかったよね!」悠依は弾むような声で話しかけてきた。

「うん……あの人、なんだかすごく特別だった」私はぽつりと答えた。


彼の名前は高瀬大翔。ステージで歌う姿は、まるで輝く光そのものだった。

でも、彼は私よりずっと年上の大学生。しかも俳優にモデルだなんて、夢みたいだ。


「ねえ、飛香。もしかして……好きになっちゃった?」悠依はふざけてニヤリと笑った。

「え……そ、そんなことないよ!」慌てて否定したけど、自分でもわかっていた。心の奥では、もう彼のことが気になって仕方なかったのだ。


家に帰っても、部屋の隅に飾った戦国武将の絵の横で、彼の姿を思い出す。

その夜はなかなか眠れず、何度も彼の歌声が頭の中で繰り返された。


「大翔くんみたいな人、本当にいるんだ……」


そう思うと、なんだか胸がじんわり温かくなった。


それからの数日間、私は彼のことを調べてみた。

大学や出演作、雑誌のモデルとしての写真。どれも彼の魅力を伝えていたが、なにより彼の「誠実そうな瞳」が心に残った。


「私も、もっと強くなりたいな」


歴史の英雄たちのように、自分の信念を持って輝く人になりたい。

そんな思いが私の胸に静かに芽生えた。


その夏休みの終わりが近づくころ、母から「家庭教師の方をお願いしたの」と告げられた時は驚いた。

なんと、その家庭教師は大翔だった。


「これも、運命なのかな……」そう思いながら、私の青春は新たな一歩を踏み出したのだった。




夏休みが終わり、高校1年生になったある日の夕方。

私は家のリビングで歴史の教科書を開いていた。母が少し緊張した様子で部屋に入ってきて、

「今日から家庭教師の方が来るわよ」

と伝えた。


その日の夕方、チャイムが鳴る。

玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは、あのライブで一目惚れした高瀬大翔だった。


「初めまして。高瀬です。よろしくお願いします」

彼は穏やかな笑顔で挨拶した。私の心は一気に跳ね上がり、声が震えそうになった。


「よろしくお願いします……」私は小さな声で答えた。


母から聞いた話では、実は大翔のお母さんも私の母と同じ中学高校の同級生で、昔からの友人だったらしい。

だから、こうして彼が家庭教師に来ることになったのだと後で知った。


リビングのテーブルを囲んで勉強を始めると、彼の優しい教え方に驚いた。

難しい問題も根気よく説明してくれて、時折、戦国時代の話を私が好きだと知ると、歴史の話題も交えてくれた。


「戦国時代、好きなんだって? 俺も歴史は結構好きなんだ。特に戦国武将の中では誰が好き?」


彼が話しかけてくれた瞬間、私は驚きと嬉しさで胸がいっぱいになった。


「織田信長と真田幸村です。強くて賢くて、戦い方も独特で…」

私は思わず熱心に話し始めた。


大翔は真剣に聞いてくれて、「面白いね」と笑った。


勉強だけじゃなく、こうして趣味の話もできる彼に、私は少しずつ心を開いていった。


「これからよろしくね、飛香」

そう言われて、私の胸はまた高鳴った。


高校1年生の夏の終わり、私の青春の扉は静かに、しかし確実に開かれていったのだった。



大翔が家庭教師として来てから、私の日常は少しずつ変わっていった。

毎週の勉強時間は、ただの勉強だけではなく、少しずつ彼との会話の時間にもなっていた。


「飛香は、そんなに歴史が好きなんだね」

「うん。特に戦国時代が好きで、武将たちの生き様に憧れてる」


彼は目を輝かせて聞いてくれた。

「俺も、戦国時代のドラマで役をやったことがあって、その時に少し勉強したんだ」


その言葉に、私は驚きと喜びが入り混じった感情を抱いた。


でも、彼はアイドルでもあり、大学生としての忙しい日々もある。

そんな彼のスケジュールに合わせて、勉強もできるだけ効率的にしようと努力した。


そして、ある日のこと。

私が母の手作りのお弁当を大翔に差し出したとき、彼がはにかみながら言った。


「ありがとう、飛香。こんなに美味しいお弁当は久しぶりだよ」


そんな何気ない一言が、私の胸を強く打った。


彼と過ごす時間は、まるで宝物のように感じられた。

でも、この秘密の時間は誰にも言えなかった。


「大翔くんは、いつもみんなの憧れの存在だから……」


私は心の奥で彼を守りたいと思った。


そして、ある日、母から驚くべき話を聞く。

「大翔のお母さんと私、同じ中学高校の同級生だったの。だから、こうして家庭教師として来てもらえるのよ」


運命の糸が繋がっていることを知り、私は改めて彼との関係が特別なものだと実感した。


その後も、私の歴史好きは深まり、土日には一人で県外のお城巡りをするようになった。

彼のライブがある日は、親友の悠依と一緒に応援に行き、彼の輝く姿を見ることで元気をもらった。


高校2年生になった頃、私は自分の気持ちに正直になろうと決心した。


「大翔くんに、好きだって伝えたい」


けれど、まだ言葉にできない秘密の恋。

それでも、私の青春は彼の音色に包まれて、静かに、しかし確実に輝き始めていたのだった。


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