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エンディング:それぞれの未来へ

(質問コーナーが終わり、穏やかな、しかしどこか知的な興奮の余韻を残すようなBGMが流れ始める。あすかが、感慨深げな表情でゲストたちを見渡し、そしてカメラに向き直る。)


あすか:「歴史に名を刻む偉大な哲学者たちによる、時空を超えた魂の対論、『歴史バトルロワイヤル~その言葉、誤解ですから!~』、いかがでしたでしょうか?

名残惜しいですが、残念ながら、そろそろお開きの時間が近づいてまいりました…。」


(あすか、少し寂しそうに微笑む。)


あすか:「今夜は、『誤解されし哲学者たち』というテーマで、エピクロスさん、マキャヴェッリさん、マルクスさん、そしてニーチェさんという、錚々(そうそう)たる皆さんにお集まりいただき、ご自身の思想に対する世間の『誤解』について、存分に語っていただきました。」


(あすか、議論を振り返るように続ける。)


あすか:「エピクロスさんが説いた『快楽』が、実は心の平静と苦痛のなさ、質素な生活と友情にあったこと。

マキャヴェッリさんの冷徹に見える言葉の裏に、混乱した祖国を憂い、現実的な国家運営を模索する苦悩があったこと。

マルクスさんが夢見た社会が、後の独裁体制とは全く異なり、人間の『疎外』からの解放を目指す、壮大な理想に基づいていたこと。

そして、ニーチェさんの『神は死んだ』という言葉が、ニヒリズムへの警鐘であり、人間が自ら価値を創造すべきという、未来への挑戦状であったこと…。

正直、それぞれの弁明、そして皆さん同士の激しい議論には、何度も鳥肌が立ちましたし、頭の中がぐらぐらするような感覚も覚えました。(笑)

もちろん、今夜の対話だけで、全ての誤解が完全に解けたわけではないかもしれません。皆さん同士の意見の対立も、最後まで解消されることはありませんでした。

でも、それでいいんですよね。大切なのは、私たちが、彼らの言葉や思想を、紋切り型のイメージや、誰かの解釈だけで分かった気にならず、ご本人の声に耳を傾け、そして、私たち自身の頭で考え続けること…。今夜は、そのための、本当に貴重な機会になったのではないでしょうか。」


(あすか、ゲスト一人ひとりに感謝の視線を送る。)


あすか:「エピクロスさん、マキャヴェッリさん、マルクスさん、ニーチェさん、本日は、時空を超えてこの場にお越しいただき、そして、勇気をもってご自身の言葉を語っていただき、本当に、本当にありがとうございました!」


(ゲスト一同、それぞれの仕方で頷いたり、会釈したりする。)


あすか:「さて、それでは最後に、ゲストの皆さんから、この番組をご覧の、未来を生きる私たちに向けて、一言ずつメッセージをいただけますでしょうか?まずは、エピクロスさんからお願いします。」


エピクロス:「(穏やかに、未来の視聴者に向けて語りかけるように)…未来の友よ。世の喧騒や、移ろいやすい評判に心を惑わされぬように。富や名声といった、外なるものを追い求めるのではなく、自らの内なる声に耳を澄ませなさい。足るを知り、自然に従い、そして、かけがえのない友との交わりを大切にすること。そこにこそ、揺らぐことのない、真の心の平静アタラクシアがあるのですから。健やかにあれ。」


あすか:「エピクロスさん、温かいメッセージ、ありがとうございます。

…続いて、マキャヴェッリさん、お願いします。」


マキャヴェッリ:「(厳しくも、どこか憂いを帯びた目で)…未来の者たちよ。理想を持つことは結構だ。しかし、現実から目を背けてはならん。人間とは、社会とは、そして権力とは、君たちが思うほど綺麗事では動いていない。状況を冷静に見極め、時に厳しい決断を下す勇気と知恵を持たねば、大切なものを守ることはできん。甘美な言葉に惑わされず、物事の本質を見抜く力を養うことだ。…そして願わくば、儂の名が、単なる悪罵あくばとしてではなく、政治の現実を語る言葉として、正当に記憶されることを祈る。」


あすか:「マキャヴェッリさん、厳しいけれど、重みのあるお言葉、ありがとうございます。

…では、マルクスさん、お願いします。」


マルクス:「(未来への希望を込めて、力強く)…未来の世代の諸君!君たちが生きる社会が、いかに自由で豊かに見えようとも、決して思考を停止してはならない!その豊かさは、誰の犠牲の上に成り立っているのか?その自由は、本当に万人のものなのか?常に問い続けよ!疑い続けよ!そして、より公正で、より人間的な社会を築くための闘いを、決して諦めてはならない!たとえ、我々の時代の試みが挫折したとしても、人類が自らを解放する可能性は、決して失われてはいないのだから!前進せよ!」


あすか:「マルクスさん、未来への力強いエール、ありがとうございます!

…それでは、最後に、ニーチェさん、お願いします。」


ニーチェ:「(強い眼差しで、視聴者一人ひとりに語りかけるように)…君よ!他人の価値観を生きるな!時代の流行に流されるな!『群れ』の中に安住するな!君自身の心に雷鳴を轟かせよ!深淵を覗くことを恐れるな!苦悩から逃げるな!それら全てを糧として、君自身の価値を、君自身の意志で、この大地に刻みつけよ!…そうだ、踊る星を生むためには、混沌を内に持たねばならぬ!さあ、行け!そして、君自身であれ!君自身を超えてゆけ!」


あすか:「(感銘を受けた表情で、深呼吸し)…踊る星を生むためには、混沌を内に…。

エピクロスさん、マキャヴェッリさん、マルクスさん、ニーチェさん、それぞれの生き様、そして哲学の核心が凝縮されたような、最後のメッセージ、私たちの心に深く刻まれました。本当に、ありがとうございました!」


(あすか、改めてカメラに向き直り、優しい笑顔で語りかける。)


あすか:「そして、時空を超えてこの熱い議論を見守ってくださった、全ての視聴者の皆さん、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

歴史上の人物の言葉は、時に難解で、時に誤解されやすいものです。でも、彼らが格闘した問いは、きっと、今の私たちが抱える悩みや疑問と、どこかで繋がっているはず。

この番組が、皆さんの知的好奇心を刺激し、彼らの著作を手に取ってみる、そんなきっかけになれたなら、案内人として、これ以上の喜びはありません。」


(あすか、名残惜しそうに、しかし明るく締めくくる。)


あすか:「さあ、今宵の時空を超えた旅も、これにて終点です。

次回の『歴史バトルロワイヤル』で、また新たな魂の声と出会えることを楽しみに…。

皆さん、どうぞ、良い夜を。ごきげんよう!」


(あすかが深くお辞儀をする。穏やかで壮大なエンディングテーマ曲が流れ始め、哲学者たちの印象的な表情がモンタージュのように映し出され、番組は静かに幕を閉じる。)

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