1匹の獣
獣が獣を喰らい喰われる。
弱肉強食の世界が広がっている。
そして私はそれを眺める。
一匹なんとなく目についた獣がいた。
簡単にいわせて貰えばそれは弱者だった。
親は死にこの獣は生き残った。
獣は軟弱ながらに逃げる。
逃げて逃げて逃げて。
それが生きる意味か...。
不意に思ってしまう。
なんのために生きるのか。
私がそれを解くのはおかしい。
けれどどうしても思わずにはいられない。
逃げて何になるんだ...。
そんなことを思っていればその獣は喰われた。
これが普通でありいつも通りであり世界の常識だ。
弱者は死ぬ。
当たり前のこと。
はっとした。
見下ろせばそこには2匹の死体が転がっていた。
それに群がる貪る獣。
その時私は初めて個を認識した。
あの獣を可愛そうだと思うことはない。
けれど珍しくもないあの獣は私に大きな影響を与えたのだろう。
急速に世界は変わっていく。
世界は変わった。
獣はさまよう。
帰る場所などない。
だが変える場所を求める。
恐怖?そんなもの存在してはいなかった。
ただ無に。
君たちが残酷だというのならそうなのかもしれない。
けど獣にとって君たちは不要な存在だ。
獣はさまよう。
ずっといつか帰る場所ができるまで。
いくつもの数えることなど不可能なほどの獣がそさまよい続けた。
いつの間にかそれは消えていた。