d2.私の居場所を探す日
まだ何も決めていないところから、とりあえず絶望してる女の子書こうと思って書き始めました。
設定も何もなかったペラッペラな彼女がどんなキャラクターに育つのか、見当もつきません。
見ず知らずの場所で一晩を過ごした。正確には2晩だけど、初日は酔っぱらってて何も覚えてないのでノーカン。
枕が違うからとかじゃなくて、状況に緊張してあまり寝られなかった。男の人とひとつ屋根の下2人きりだから、なんて可愛いこと言うつもりはない。ただ、ここが山の中で、私に逃げ場はないのだと思うと少し緊張しただけの事で…。
龍崎さんは多分良い人だけど、盲目に人を信じられるほど私はピュアではないという事か。自身の見る目のなさは痛い程分かっているし、それよりも頭によぎったのは「ミザリー」という映画だ。小さい頃に1度見たきりだったが、それ以来スティーブン・キングは小説も映画も敬遠している。怖いのは苦手だ。
今まで忘れてたのに、よりにもよってこんな日に思い出すなんて!
記憶の海に沈んでいた物が、何かのきっかけで急に浮かんでくる。
私の脳内ではタイプライターを持った龍崎さんが深海から登ってきた。
昨日の朝自己紹介をしてからというもの、龍崎さんと話す機会はほとんど無かった。と言うのも龍崎さんは「好きにしてくれ。夜まで山行ってくる」とキッチンやお風呂等案内して、そのまま車で何処かに行ってしまったからだ。帰ってきたのは20時頃。日も暮れて、車のヘッドライトが眩しい時間になってからだ。
帰ってきた龍崎さんは、私が一応作っておいたオムライスを3分ほどで平らげてシャワーを浴びてしまった。
ご飯にしても洗い物にしても「ありがとう」としっかりと感謝の言葉をくれるけれど、それ以外に会話はなかった。言葉の少ない人なのか、私を厄介に思っているのか。両方なのかなと、今は思う。
さて、私が目を覚ましたのは龍崎さんの呼び声でだった。
「朝食が出来てる。今日は予約の家族がいるから早いとこ朝の支度をすましてくれ」
私は飛び起きてリビングに出た。
「お客さんですか! あとどれくらいで!」
龍崎さんは私の食いつきに驚いていた。
「分からんが、10時チェックインだからあと3時間が目安だな。人によって1〜2時間早く来ることもあるし、そんなに当てにならないが」
ほんとに営業してるんだ、と言う言葉は胸に仕舞う。平日とはいえ、いくらなんでもこの夏休みシーズンに客がゼロというのはおかしいだろう。と思っていた。それで龍崎さんが営んでるというキャンプ場の実態を疑ってしまっていた。
とは言え、来るというなら来るのだろう。私は張り切って龍崎さんに聞いた。
「私、手伝います。何かできることはありませんか」
「いや、何もしなくて良い。休んでいてくれ」
邪魔になるだけだから、というのは私の妄想。でも、タダで匿われている嘘吐きには、ここは少々居心地が悪い。
「ちょっとだけでもお願いします。私、龍崎さんに恩返しをしないと気が済みません」
大きく頭を下げると龍崎さんは、「参ったな」とだけ言って顎を触った。
「1人でやってきたから人手には困ってなかったんだが、何か探しておこう。取り敢えず朝の支度が終わったら声かけてくれ」
龍崎さんは自分の食べ終わった食器を持って調理場へ消えていった。
私は龍崎さんの生活に必要のない存在だ。でも、私はここにしがみつくしか無い。自分が生きるために。
とても利己的で、自己中で、嘘吐きでーーー
私は自己嫌悪と戦いながら、それでも生きる為に、自分の為に恩返しをするんだ。
日常回。平和な時間が始まりますね。描くエネルギーが必要で、苦手なんですが頑張ります。恋愛物も苦手なんですが、魅力的な人物がつくれるように思案中です。