番外編短編・修道女の栗のケーキと日常
修道女・アメリーはエッバの家に向かっていた。今日は秋祭りが終わって数日たち、広場もすっかり日常を取り戻していた。
村人のエッバの家は川沿いの道を上り、住宅が集まる地域にあった。
「ここがエッバの家ね」
小さな可愛らしい家だ。夫婦二人で暮らすのにはちょうどいい大きさだろう。
秋祭り以来、エッバの事は気掛かりだった。木苺を嫌う事情を知ってしまうと、ちょっとしたフォローも必要だと思い、エッバの家を訪ねた。
手ぶらで行くのも違うと思い、栗のケーキを焼いた。これは麦を使わず、木の実を挽いた粉で作る。おかげで香りだかく、軽い食感のケーキだ。見た目は茶色で地味だったが、味は自信作。かえって派手なデコレーションするより味の良さが引き立つとも考えていた。
「アメリー、こんにちは。何かいい匂いがするけど?」
「ええ。今日は栗のケーキを焼いたの」
エッバは快く家に招いてくれた。食卓で二人で栗のケーキを食べる事に。
「あら、このケーキ、とても美味しい!」
栗のケーキはエッバはとても気に入ってくれたよう。パクパクと食べていた。
「うちの修道女のリーゼによると、栗は健康にもちても良いんですって。気に入ってくれると嬉しいわ」
アメリーの笑顔に、エッバもつられて笑顔を見せていた。秋祭りの態度とは全く違い、アメリーはホッとした。
「ええ。本当に美味しい。今まででは木苺が好きだったけど……。栗のほうが美味しいかも?」
「そう言ってくれると嬉しいわ。栗はうちの修道院の庭で収穫できますしね」
「何だか悪い思い出が上書きされた気分よ。やっぱりお菓子はいいね」
二人で美味しい栗のケーキを食べていると、時間がたちのはあっという間だ。
「じゃあ、エッバ。またね」
「ええ。来てくれてありがとう」
こうしてメアリーは修道院へ向かって歩き始めた。
これから夕食の準備、洗濯ものの管理、風呂の清掃など仕事も山積みだ。忙しい日常の中、栗のケーキをエッバと食べた事は、アメリーにとっても憩いだったのかもしれない。
「さあ、帰って仕事も頑張るぞ!」
アメリーは笑いながら、修道院の門をくぐっていた。




