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獅施額羅


 2階建ての家の居間には2階へ繋がっている登り降りする階段が見え、椅子が四つ、三つと一つが向かい合っている状態で、その間にはガラスの机があった。

 一つだけになっている椅子には人が一人座っていた。


 BJ「皆さんはじめましてBJと申します。ここでは皆さんのお便りでゲストの方とお話をして行きたいと思っております。フリートークをして行きたいと思っております。それでは! 今日のゲストに登場してもらいましょう! やなぎ かいさん! やす 颯太そうたさん! 葉倉はくら けいさんの三名様です!」


 2階へ繋がっている登り降りする螺旋らせん階段から降りて来たのは柳、安、葉倉達。


柳「よっしゃあああ! テンション上がってきたぁーー! 俺ちょっとその辺を全力疾走してくるわ」


 襟よりも少し長い黒髪を揺らし、満面の笑みで叫ぶカイ。


安「落ち着け、カイ。熱い状態でさらに汗をかいてどうする。こういう時は……服を脱いで体を冷やすんだ!」


 バッと上着を脱ぎだす赤茶髪の颯太。


葉倉「ソータ……バカ枠に加えて変態枠にもカテゴライズするけどいいかな?」


 呆れたような顔の、ボサボサ頭の慧。

 三人が並ぶと慧が一人小柄なため、凹の字のように身長差が表れる。

 人前だというのに彼らはいつも通り駄弁りながら、それぞれ椅子を引いて座った。真ん中に慧、その右側に颯太、そして左にカイという配置だ。カイと颯太がケンカを始めないよう、慧は無意識的にその位置を選んだのだろう。


BJ「はい。いきなり個性的でよろしいですね。ただ、服は脱がない様にお願いしますね? ……警察さんに捕まりますから」


 BJは歩いて近づいてくる三河(警官の服を着て、両手を手錠で縛っている)を軽蔑の眼差しで見ながら呟いた。


三河「お、お飲み、ものは何に、しますか? あ、暑いの、でしたら、クーラーの、温度、上げま、しょうか?」


 三河は鼻息を荒くしながら柳・安・葉倉の三人に尋ねた。


BJ「上げてどうするんですか? あと、何興奮してるんですか? この……変態枠にカテゴライズした奴めっ!」


安「の、飲み物だとォッ!? ……いや、叫んだことに特に意味はない」


葉倉「ソータうるさい」


 不意に風切り音が鳴り、直後、鈍い音と共に安が机に突っ伏した。


柳「バカめ。あ、俺は飲み物持って来てるから……。それと室温はこのままでいいぞ」


葉倉「おしるこ。あっついヤツね」


 二人は手を挙げて、それぞれ注文を口にする。


安「俺は……カレーだ!」


 机を叩いて立ち上がり、大声で言った。


三河「……どうぞ。石焼おしるこです♪」


 注文を聞いた三河は、BJ達から見えない所にある台所に向かった。少しして、三河が戻って来て、皿に乗せたお椀型の石を葉倉の前に置いた。

 熱々に熱した石の中にはおしるこがぶくぶくとマグマの様に沸騰している。


BJ「………………」


三河「……颯太さんはこちらでしたよね?」


 三河が何かにニヤつきながら、安の前に……なんという事でしょう。三河が安の前に置いたのはカレー……ではなく、なんて古典的なボケ……カレイを置いた。


BJ「………………さて! それではプロフィールに参りましょう!」




やなぎ かい

 所属:私立破天高校一年四組

 部活:書道部

 身長:百七十三センチメートル

 趣味:書道 料理

 特徴:「炸裂のバカ」の通り名を持つ、学年トップレベルのバカ。

    書道の腕はかなりのもの。



やす 颯太そうた

 所属:私立破天高校一年四組

 部活:弓道部

 身長:百七十三センチメートル

 趣味:騒ぐこと

 特徴:通り名こそないが、カイに次ぐ生粋のバカ。

    弓道は初心者。



葉倉はくら けい

 所属:私立破天高校一年四組

 部活:剣道部

 身長:百五十二センチメートル

 趣味:なし

 特徴:剣道の腕は全国レベルで、特に努力せずとも勉強ができる天才型。

    「ダーク慧」と呼ばれる状態に陥ると狂暴化する。


葉倉「うん、やっぱり熱いおしるこは美味しいよね」


 煮えたぎるおしるこをものともせずに、葉倉はそれを口に運んでいる。


安「あ? 何だコレ、ヒラメ……? まぁいい、出されたものを残すようじゃ、漢じゃねぇよな。飲んでやるぜぇ!」


 安はカレイを掴むと、豪快に口に放り込んだ。


安「うおぉぉおおおおお! 骨がぁぁぁああああ!」


 そして喉を押さえて地面にのたうち回った。


柳「バカが、無茶しやがって……」


安「テメェ、誰がバカだコラァ! テメェの方がバカだろうが!」


柳「バカっていう方がバカなんだよ、バーカ」


 柳は懐から魔法瓶を取り出し、ゴクゴクと飲み物を飲み始めた。

 持ち上げられたその底を、安が更に上げる。


柳「ゴフッ……! バカソータ……テメェ!」


安「ざまぁみやがれ!」

 二人の間に火花が散る。二人は拳を固く握っており、今にも戦いが始まりそうな雰囲気だ。


葉倉「二人とも、はい着席」


 慣れたように二人を力ずくで座らせ、何事もなかったかのように振る舞う葉倉。


葉倉「それじゃ、どうぞ続けて下さい」


BJ「こうして見てますと、葉倉さんが頭みたいですね」


三河「出された物は全て食べる。颯太さんこそ、漢を名乗るに相応しい方です! ……という事で、颯太さん。これをググッと一気でお願いします!」


 安の前に置かれたのは一升瓶のビール。


(俺、ナレーション中岡は見てしまった。三河がビールの中に市販されているわさびのチューブを五本程入れていた所を……)


BJ「三河さん。未成年にお酒を飲ませないでください」


三河「一気! 一気! 一気! 一気! 一気!」


BJ「あの……三河さん?」


三河「飲んでェ! 飲んでェ! 飲み干して! ヘイ!」


 柳はそっと立ち上がり、ふらふらと退室した。


安「HAHAHA、よしてくれよ。漢たるもの、ルールは守るべきだと思わないかい?」


葉倉「うん、よかったよ、この手を鮮血に染めないで済んで。飲んでいたら殴らなくちゃいけないところだった」


柳「じゃ、これ一気で」


 戻ってきた柳は、机の上にドン、とコーラのペットボトルを置いた。


安「あん? 炭酸だと? 楽勝だぜ!」


 安はキャップを捻り、一気に口に流し込んだ。すんなりと捻られるキャップには違和感を抱かなかったのだろうか。


安「辛ぇぇぇええ! ちょっ……ええっ!? 何だコレ!」


柳「タバスコがたっぷり入ったコーラだ。辛いのが飲みたいだろうと思って……」


安「ふざけんなコラァ!」


柳「さーて。バカは放置して、話を先に進めようぜ」


三河「……やられました。完敗です。私は……海さんに……海さんに負けました!」

 泣き崩れる三河を無視したBJは、先に進む事にした。

BJ「はいはい。それでは……ここで新コーナー! 『宣伝夜呂死久!!』 ここでは何でもいいですので、宣伝をしていただきたいと思います! ただし! 100文字でお願いします! 100文字になりましたら強制終了ですので、悪しからず。では、お願いします!!」


柳「それじゃ、俺から。素敵な人生は素敵な一日の積み重ね。素敵な一日は素敵な朝から。素敵な朝は……一杯の紅茶から! みんなも紅茶で素晴らしい人生を歩もう! 以上!」


三河「………という事で皆さん。紅茶です。どうぞ」


 にこやかに微笑む三河が全員分の紅茶を出した。


BJ「どうも~……あっ! ……っ! ………熱いわ!! でも飲む私です」


 紅茶を少しずつ口に運ぶBJ……と、ここで俺も一杯。ずずず……うん、甘いな。でも美味い。


柳「ん? だから飲み物あるってば」


葉倉「おしるこ残ってるし」


 二人は容赦なく拒絶の色を示す。


安「お前ら……! 正直俺もこの短い間隔で再び飲み物を出されるとは思わなかったが……。人の好意を無下にするなよ! 俺は飲むぜ、お前らの分まで! ……この、タバスコーラの後でな!」


 なんとも誇らしそうな表情で紅茶三杯を引きよせた後、ペットボトルを掴み、喉を鳴らして中身を飲みだした。


安「カーーーッ! 効くぜぇ! 慣れればこの辛さも悪くないな」


BJ「おもてなし精神がある三河さんですから許してあげて下さい」


 三河の代わりにBJが頭を下げて謝る。


三河「……あれ? なんか私嫌な人みたいな立場になってませんか!? まるで私が悪い事したのに謝らない人みたいじゃないですか!!」


BJ「ではでは、そろそろお別れの時間がやってまいりました。ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


三河「ありがとうございました! 後でお仕置きしてあげますから楽しみに待っててくださいね♪」


 何可愛く『ね♪』とか言ってんの? キモッ プフ~


三河「逮捕したるワァ~!!!」


BJ「……さて、走り去った三河さんはほって置きましょう。では最後に皆さん一人一人から一言頂けますか?」


 その言葉を受けて、最初に葉倉が話し始めた。


葉倉「何かトークっていうほど話してない気がするけど、それなりに楽しかったよ。それとバカ二人が騒がしくてゴメンね。人選間違ったかな」


 続いて安が口を開く。


安「俺は現在、彼女募集中だ。外見と性格が美しい女の子は、いつでも連絡してくれ、待ってるぜ。それとツインバカが迷惑かけて悪かったな」


 安の言葉が途切れると同時に、柳が立ち上がって話しだした。


柳「へっへっへ。そう簡単に一言貰えると思……おっと、慧、その振り上げた拳は収めたまえ。……まぁアレだ、みんな健康に気をつけて楽しく頑張って行こうぜ。あとバカソータとケイがうるさくて済まなかったな」


 三人はお互いにバカ呼ばわりし合ったことで、睨み合っている。


 安は立ち上がり、貴族の様な気取った、美しいお辞儀をした。


安「さ~て、ここらで一旦お別れだ。おおっと、そんなに悲しまないで。またすぐに会えるから。再会は今夜、アナタの夢の中で……。グッナイ、キティ。次、ケイ」


 次に、指名された葉倉が立ち上がり、全力で愛想笑いをしながら話し始める。


葉倉「そうきたか……。ええっと……君の笑顔は太陽よりも輝いているよ。だからどんな時も笑っていてね。その光はみんなに届くから……。それじゃ、チャオ。そんでもってトリ、カイ」


 最後に柳が起立し、場を閉めにかかった。


柳「何だこのノリ! あ~、え~、今日のこの出会いによって、皆のポテンシャルが少しでもエクステン…………ムリ。さらばだBJ、三河!」


 柳は脱兎のごとくその場から逃げ去り、残り二人もその後を追った。


BJ「いえいえ。私にも迷惑ばかりかけるバカが居て申し訳ありません。皆さんにもご迷惑をおかけしました」


三河「……BJさん。それはどういう意味なのでしょうかねェ? ……あれ? もしかして今のフリだったんですか!?」


BJ「さあー? どうなんでしょうね」


三河「……ウチのバカがすみませんでした」


 両者睨み合う……という所まではなかったみたいだ。残念!!


BJ「ありがとうございました! また今度もよろしくお願いします!!」


三河「またのご来店お待ちしております!」




三河「……」


BJ「三河さん? どうかしたんですか?」


 短時間に飲み物を二つも出した事を今さら恥ずかしがってるだけだ。


BJ「……ぷっ」


三河「笑わないでください!」


BJ「ぅけけけけけけ!!」


 ぐへへへへへへへ!!


三河「……」




 三河、強く生きろよ。と、いう訳で以上! 中岡だ!!




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