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退魔の郷〜神と人間の間の者たち〜  作者: 朝顔


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“神霊降臨の儀”とは?

「……え?」

 その場にいるジャン以外、皆一様に目を丸くする。

「……現在(いま)の退魔師には隠されている事柄?」

 ファビアンがボソリと呟く。もしそれが本当なら、学問の最高峰たるインディオール学院学長として由々しき事である。

「なあ。そもそも何故俺たち退魔師が市井の奴らに迫害されたんだと思う?」

 ジェスがそう言うと

「……」

 皆は答えられなかった。



人間(ひと)というのは……己とは異なるもの、理解が及ばないものに恐怖を抱き忌み嫌うものだ」

「……」

 全員、頷く。

「元から退魔師はその力によって市井から恐れられていた。しかし、自分たちの暮らしを脅かす化け物を討伐してくれる“便利な”存在として“黙認”されていた訳だ」

 一同黙ってジェスの話に耳を傾ける。



「しかし、ある時市井に退魔師に関わるまことしやかな噂が広まった。それは一体何か?」

 ジェスはぐるりと周りの顔を見回す。

「……確か、退魔師が化け物を生み出している……とかいうものだったと思う」

 ファビアンが答える。

「その通り。正確には退魔師は生み出した化け物の親玉、即ち退魔師自身が化け物だというものさ」

「……」

 皆、開いた口が塞がらない。



「そして何故市井にそんな噂が広まったのか? そこには、とある根拠があった」

「……とある根拠?」

 イアンは渋面で問う。

「ああ。即ちそれが“神霊降臨の儀”という訳だ」

 ジェスがそう告げると皆は絶句する。

 


「まあ。元から“神霊降臨の儀”は一部の退魔師にしか明かされてはいなかったから、お前らが知らないのは当然だ」

「一部の退魔師?」

 イアンが問う。

「ああ。具体的には当時の5家の当主のみが知っていた事だ」

「……」



「しかし……それならば何故その事を我々現当主は知らされていない?」

 ファビアンが不服げに問う。

「それについては俺もはっきりとは言えないが……恐らく前当主は貴方たちがそれを知るに足る器かどうか見定めていたんじゃないか?……どうしても知りたいなら、後で聞いてみたら良い」

 ここには配下衆も来ているんだし。とジェスは微笑う。



「そ、それで。“神霊降臨の儀”とは一体どういうものなんだ?」

 イアンが尋ねる。

「言葉そのままの儀式だよ。つまり神の御霊を退魔師に降ろして人神一体となる儀式。これによって退魔師は真の力を得て、いわば“現世の神”になるって訳だ」

「……!」

 いきなりのとんでもない話に皆は絶句する。



「因みに俺もその儀式を受けている。俺だけじゃないぜ?父さんと母さん。ジャン,クロード,シンも然り。ジョーはその準備中って所だな」

「は? ジャン??」

 ファビアンは弟もその儀式を受けたと聞き目を剥く。対するジャンは真顔でコクリと頷く。

「……」

 ファビアンは実にあっさりした弟の様子に呆然となる。



「んで、“神霊降臨の儀”を行うには条件がある。条件を満たしていない退魔師が儀式を行っても絶対に成功しない。まず神が応じてくれないし、仮に降りてきたとしても退魔師自身が耐えられず、最悪発狂死する」

「……」

「その様子を何処かで漏れ聞いた退魔師の妄想・捏造・歪曲が入りまくった“物語”を、うっかり市井の奴に溢したのが、あの悲劇の発端だったらしい」

「…‥」

 それを聞いて、皆はやるせない気持ちに襲われた。



「そんな恐ろしい儀式をジュエンに受けさせるのか?

まだ幼いあの子に?」

 イアンは低い声音で問う。

「言っただろう? 儀式を行うには条件があると。条件を満たしさえすれば年齢は関係無い。現に俺も儀式を受けたのはジュエンくらいの頃だったぞ?」

「……」

 そう言われれば何も言えない。



「という事は、ジュエンは条件を満たしているという事か。それで、その条件とは?」

 ファビアンが冷静に問う。

「まず退魔師として一定以上の実力と実績、それから退魔師として相応しい志を持つか。条件としてはそれだけだ」

「……」

 それは正に言うは易く……である。




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