森の見回り 6日目
「さあ、今日もやるぞ~!」
漲るやる気そのままに、元気に拳を掲げるケント。
その傍らでリンガとエドワードは静かに闘志を燃やす。
特にリンガは昨日の失態を挽回するべく気合を入れる。
『やる気があるのは素晴らしいけれど……余り気負い過ぎないようにね』
そんな3人組に苦笑を漏らすアスル。
本日の同行者はルオとアスル。3人組にとって中々緊張する組み合わせだ。というのも
『お前たち。今日はジュエンを煩わすような真似はするなよ?』
『そうだよ。あの子の折角の休息を邪魔しないようにね』
殊の外ジュエンを可愛がっているルオとアスルの威圧がとにかく凄まじい。
……3人はガクブルしながらコクコクと頷く。
「何か……大分慣れたな」
今日は少し靄がかかっていて見通しが余り良くない。が、気配感知が上達してそこまで恐怖心は湧いて来ない。
「初日もこんな感じだったよなぁ……」
ケントがしみじみと呟く。あの時は右も左も分からない状態だった事もあり、とにかく恐ろしかった。あれからほんの数日しか経っていない筈なのに、もう何年も前の事のような気がして、何だか不思議な気分だ。
「し! ……いるぞ!!」
不意にリンガが立ち止まり、2人に注意を促す。
3人は神経を集中して辺りの気配を探る。
「……」
化け物の気配はおよそ10体ほど。割りと小さめの個体のようだ。
「これ、多分犬の奴らだよな……」
ケントはボソリと呟きちょっとゲンナリする。
犬の化け物とは初日から何度もぶち当たっているが……こいつらは何気に厄介な連中だ。
身体は小さく一体一体ははっきり言って強くはないが……こいつらは基本的に集団で襲いかかって来るのだ。
数の暴力は中々厄介で、3人もこれまで何度もピンチに陥った。その都度ジュエンや配下衆の援護で何とか凌いで来ていた。
そして、その度に1人であっさりこの数を瞬殺するジュエンの凄さを思い知るのだった。
「来るぞ! 気をつけろ!!」
リンガはそう叫ぶと、襲いかかって来た2体の化け物に剣を一閃。その化け物たちは一気に霧散した。
「おお! リンガ、凄げーー! 俺も負けねえぞーー!!」
ケントも奮起して剣を振るう。ケントも危なげ無く化け物を屠っていく。
「は!」
エドワードも負けじと剣を振る。エドワードも次々と化け物を屠っていく。
「ふう。何とか討伐出来ましたね」
エドワードが息を吐く。ジュエンのように一瞬で殲滅という訳にはいかないが、この犬の化け物も10体ほどならば特に苦戦せずに狩れるようになったのは素直に嬉しい。
『3人とも。良くやったね。この後もこの調子で行こう』
『そうだな。今のは特に問題は無かった。この後もしっかり気を引き締めてかかれ』
珍しくアスルとルオに褒められ、3人は
「「「はい!!」」」
と力強く返事をする。
それから先に進む事、およそ10分。早くもこの日の大一番の相手が現れた。
「うはぁ……、デケェ……」
半ば呆然としてケントが呟く。それは体長2メートルほどありそうな、熊の化け物だった。
「気を抜くな! 行くぞ!!」
化け物がこちらに猛然と襲いかかって来るのと同時に3人は地を蹴った。
「グアアアーーーー!」
3人目掛けて猛然と化け物は突進してくる。
3人は散開して化け物を躱すと、まずはケントが攻撃を仕掛ける。
「はあ!」
ケントが化け物を斬りつける。が、直前に気づかれケントは弾かれた。
「ケント!」
すかさずエドワードが援護に入るが、皮膚が固いらしく剣が通らない。
「お前ら、下がれ!」
リンガが叫ぶ。その直後、矢が化け物目掛けて数本放たれた。
「グゥァアアアーーー!!」
リンガの射た矢は化け物の目や関節を射抜き、化け物は怯んだ。その隙にケントとエドワードも化け物に猛攻を仕掛ける。
「グァ、グアアアーーー!!」
2人の決死の攻撃に化け物は堪らず咆哮を上げる。
そこにリンガも加わり、久通で暴れ回る化け物を3人で代わる代わる斬りつける。
どれくらい斬りつけたか。徐々に化け物は弱っていき、遂にその身体は霧散した。
「はあ、はあ……」
3人は肩で息をして、霧散した化け物がいた場所を見つめている。
「や、やった、な……」
ケントは息も絶え絶えに呟く。
『お見事。よくやったね』
アスルに笑顔でそう褒められた。
『ああ。正直、ここまでやるとは思わなかったな』
実に珍しくルオにも笑顔で褒められた。
意外過ぎた2人の言葉に3人はポカンとした後、ジワジワとあの熊の化け物を倒したのだと実感が湧いて来た。
この後は特に苦戦するような化け物と出会す事無く、6日目の見回りは終了した。




